― NPB日本人/KBO韓国人/CPBL台湾人の剛速球まとめ
かつて「160km/h」は、テレビで“怪物”とテロップが出るための特別な数字だった。
いまは違う。NPB・KBO・CPBLの3リーグでも、自国育ちの投手たちが160km/h前後を叩き出し始め、「アジア発速球カルチャー」は新しいフェーズに入っている。
本記事では、
- NPB:日本人投手のみ
- KBO:韓国人投手中心
- CPBL:台湾人投手のみ(160km/hに迫る存在を含む)
という縛りで、「160km/hの壁」をどう押し広げているかを整理する。
対象・基準
- 対象リーグ:NPB(日本)、KBO(韓国)、CPBL(台湾)
- 基準:
- 各リーグ1軍公式戦(レギュラー+ポストシーズン)で
- 160km/h以上、または
- 客観的に「160km/h目前」と評価される球速を記録した自国出身投手
- スタジアム表示や公式トラッキング、信頼性ある報道をベースとする
- 各リーグ1軍公式戦(レギュラー+ポストシーズン)で
- 本稿の方針:
- NPB:外国人投手は扱わず、日本人のみ
- CPBL:外国人助っ人は背景情報にとどめ、台湾人投手にフォーカス
- 数値・所属は2025年シーズン終了時点の公表情報ベース(実際の公開時は必ず公式記録で再確認推奨)。
1. NPB編:「日本人だけで160km/hクラブ」が成立する国
日本人最速ヒストリー
① 佐藤由規(ヤクルト)
2010年に161km/hを計測し、当時の「日本人最速」。日本人が160km/hを公式戦で出した嚆矢として重要な存在。Efastball+1
② 大谷翔平(日本ハム)
2014〜16年にかけて160km/h超を連発し、2016年に165km/hを計測してNPB最速を更新(日本人最速&リーグ記録)。WBSC+1
「160km/hをゲームの一部にした投手」として、以降の世代に決定的な影響を与える。
③ 佐々木朗希(ロッテ)
2023年に165km/hを計測し、大谷の日本人最速記録に並ぶ。「令和の怪物」が160km/hを“日常速度”として扱うことで、日本人160km/hのイメージをさらに更新。ウィキペディア+1
日本人160km/hクラブ(代表例)
※日本人のみ/公式戦・公的記録ベース/抜粋
- 大谷翔平:最速165km/hクラス
- 佐々木朗希:最速165km/h
- 佐藤由規:161km/h
- 藤浪晋太郎:162km/h(阪神時代に計測報道)ウィキペディア+1
- 千賀滉大:161km/h(ソフトバンク時代、フォークとのコンボで象徴的存在)
- 今井達也、高橋宏斗 ほか:150後半〜160km/hに到達、もしくは接近する世代
- 羽田慎之介(西武):2025年に日本人初の左腕160km/h到達と報じられ、日本人速球マップをさらに拡張。japanball.com
ポイント:なぜNPBだけ「日本人160km/h」が厚いのか
- 高校〜独立リーグ〜NPBまで160km/h候補が連続的に存在する育成ライン
- トレーニング科学(ウェイト、回転効率、モーション解析)の一般化
- 「160km/hを出せる日本人」がドラフト上位&スターとして明確に評価される市場構造
→ 結論:NPBは“日本人限定”でも160km/hクラブが成立する、アジア随一の速球リーグ。
2. KBO編:文東ジュが開けた「韓国人160km/h時代」
KBOは長く「韓国人最速=150後半」のイメージだったが、その均衡を破ったのが若き右腕・文東ジュ。
韓国人160km/hの象徴
文東ジュ(Moon Dong-ju/Hanwha Eagles)
- 2023年4月12日、公式戦で160.1km/hを計測し、
「KBOで初めて160km/hに到達した韓国人投手」として公式記録に刻まれる。경향신문+1 - 2025年ポストシーズンには**161.6km/h(表示162km/h)**をマークし、KBO記録をさらに更新。조선일보
160km/hに迫る韓国人投手たち
- アン・ウジン(Ahn Woo-jin)
- 平均球速150超、最速は公式記録・報道で160km/h前後に迫る球速。
- 文東ジュ以前から「韓国人速球派の完成形」として高速化トレンドを牽引。コリアタイムズ+1
KBO全体としても、2020年代半ばには「150km/h台中盤」が先発・中継ぎで珍しくなくなりつつあると報じられており、
**“160km/hは特別だが、150後半はスタンダードに近づいている”**段階に入っている。Korea Joongang Daily
ポイント:KBOの文脈
- 文東ジュが「韓国人初の160km/h」という物語性を持ち、分かりやすい象徴に。
- アン・ウジンら既存エースが土台を作り、次世代が160km/hラインを越え始めた構図。
- 今後10年で、「NPB同様に自国160km/h投手が複数名いるリーグ」になる可能性は十分。
→ 結論:KBOは“トップは160超、裾野は150後半”という“急成長中の速球リーグ”。
3. 台湾CPBL編:台湾人投手は「160km/h目前」まで来ている
CPBLそのものの最速記録は、
富邦ガーディアンズのエンダーソン・フランコが2022年に計測した161km/hが公式最速とされる(外国人)。cpblstats.com+1
ただし本稿の主役はあくまで台湾人投手。
「台湾人初の160km/h投手」が見えてきた、という視点で整理する。
「160km/h候補」台湾人投手ピックアップ
徐若熙(Hsu Jo-Hsi/味全〜)
- 150後半(約158km/h=98mph)に到達可能とされる本格派右腕。
- 近年は「台湾No.1先発」「MLB・NPBから注目」とされ、160km/hに最も近い存在の一人。X (formerly Twitter)+1
古林睿煬(Gu Lin Ruei-yang)
- CPBL時代から150中盤を投げる「地元エース格」として台頭し、2024年にはCPBLでMVP級の評価。Focus Taiwan – CNA English News+1
- スタミナと球速を両立し、NPB移籍後も156〜157km/hクラスを記録するなど、「台湾人160km/hへのリアリティ」を示す存在。weitingchen.co+1
このほか、U18代表や大学・社会人世代でも150km/h台中盤の台湾人投手が増加中で、
という構図になりつつある。
ポイント:CPBLの現在地
- 外国人投手が160km/hの基準値を示し、それを追いかける形で台湾人投手の球速も上昇。
- トレーニング、栄養、投球データ分析の導入が進み、
- “台湾人初の160km/h”は近い将来のニュースになり得る
- という期待感が物語として成立している。
→ 結論:CPBLは「まだ未到達だが、160km/h候補が現実的に存在するステージ」。
4. 3リーグ比較:アジア速球地図をどう描くか
① トップスピード(自国投手限定)
- 日本(NPB)
- 大谷翔平&佐々木朗希が165km/hクラス。
- 佐藤由規、藤浪晋太郎、千賀滉大ら160〜161km/h級が続く。
- 韓国(KBO)
- 文東ジュが161.6km/hで韓国人最速。
- アン・ウジンらが150後半〜160km/h近辺で支える。
- 台湾(CPBL)
- 台湾人投手は現時点で150後半クラスまで。
- しかし環境・人材的に160km/hが視界に入りつつある。
② 裾野
- NPB:日本人だけで「160km/h到達者+候補」が層を形成。
- KBO:160km/hはまだ文東ジュら一部エリートだが、150後半は急増。
- CPBL:本土エースの質が向上し、「速球派でNPB・MLB挑戦」が現実路線に。
③ 物語としての結論
アジア野球は、
**「日本=日本人160km/h時代」**を先頭に、
「韓国=160km/h解禁直後」、
「台湾=160km/h目前で扉に手をかけている」
という三層構造になりつつある。
160km/hは依然として「特別な数字」だが、
それはもはや“異世界の怪物”ではなく、
- 科学的トレーニング
- データ活用
- 国ごとの育成哲学
の延長線上にある“到達可能な目標値”になった。
次の10年は、「どの国がどれだけ自国産160km/h投手を生み出せるか」という、アジア内競争の物語が楽しめる時代になる。



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