台湾野球から林安可はNPBに来るのか?──経歴・スタッツと「西武×台湾」の相性を徹底チェック

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台湾プロ野球(CPBL)を代表する左のスラッガー・林安可(リン・アンカ/Lin An-Ko)。 2025年シーズンも統一ライオンズで打率.318、23本塁打、73打点、OPS約1.000という圧巻の数字を残し、打率ランキング2位に入る活躍を見せました。 その林安可に対し、埼玉西武ライオンズが獲得を目指していると報じられ、一気に日本でも注目度が高まっています。

この記事では、

  • 林安可のプロフィールとこれまでの経歴
  • CPBLでのスタッツと打者としての特徴
  • 国際試合(プレミア12など)でのパフォーマンス
  • NPB、とくに西武に来た場合どれくらい活躍できそうか
  • これまで西武に所属した台湾出身選手の成績

を整理しつつ、「NPBでの成功可能性」を考えてみます。

林安可とはどんな選手?プロフィールと来歴

基本プロフィール

  • 名前:林 安可(リン・アンカ/Lin An-Ko)
  • 生年月日:1997年5月19日(28歳)
  • 出身:台湾・台南市
  • 身長・体重:184cm/90kg
  • 投打:左投左打
  • ポジション:右翼手・指名打者(外野全般と一塁も可能)
  • 所属:統一7-ELEVEnライオンズ(CPBL)

母親がアルゼンチン出身というバックグラウンドを持つ「ハーフ」で、高校時代から投手兼外野手の二刀流として注目されてきた選手です。 大学時代は主に投手としてプレーし、NPB球団からも投手として評価されていたものの、ケガの影響などもあってドラフト指名には至らず、最終的にCPBLドラフト1位で統一ライオンズに入団しました。

プロ入り後の流れ(ざっくり年表)

  • 2019年:統一ライオンズからドラフト1巡目指名で入団。シーズン途中に一軍デビュー。
  • 2020年:打者に専念しブレイク。32本塁打、99打点で本塁打王・打点王の2冠を獲得し、リーグを代表するスラッガーに。
  • 2021〜22年:ケガ(2022年には右手鉤骨骨折)もあり離脱が多いシーズンも経験。
  • 2023〜25年:完全復活。長打と選球眼を兼ね備えた中軸打者として再浮上し、2025年はOPS約1.000のキャリアハイ。
  • 2024年:WBSCプレミア12で台湾代表の主軸として日本と何度も対戦し、東京ドームで特大弾も披露。
  • 2025年オフ:統一ライオンズが海外移籍制度(ポスティング)による移籍を容認。NPB複数球団がリストアップし、特に西武が獲得に前向きと報道される。

CPBLでの成績と打撃スタイル

通算成績と直近3年の推移

まずは、CPBLでの通算成績(2025年シーズン終了時点)は以下の通りです。

  • 打率:.287
  • 安打:586本
  • 本塁打:112本
  • 打点:399点
  • 盗塁:41

キャリア通算で「打率.280台・100本塁打超・400打点目前」という数字は、CPBLの中でも明確に“リーグを代表する中軸打者クラス”と言っていいラインです。

特に直近3年のレギュラーシーズン成績(lottonaviの年別データ)は以下の通り。

試合打率本塁打打点OPS(概算)
2023年76試合.24715本35打点.320+.471 ≒ .791
2024年118試合.25720本93打点.348+.461 ≒ .809
2025年90試合.31823本73打点.396+.603 ≒ .999(ほぼ1.000)

3年合計では、出場284試合・打数997で58本塁打・201打点と、1年あたりに均すと「打率.270台・20本塁打強・70打点前後」のペース。 CPBLは試合数がNPBより少ないことを考えれば、フルシーズン換算で“30本塁打級の中軸打者”と言って良さそうです(ここはあくまでざっくり換算)。

2020年の“二冠王シーズン”

林安可を語るうえで外せないのが、ブレイクイヤーとなった2020年。 この年、彼は

  • 本塁打:32本(リーグ1位)
  • 打点:99打点(リーグ1位)
  • 打率:.300超

と、ホームラン王&打点王の2冠を獲得し、統一のリーグ制覇の原動力となりました。 二冠王+若さ+スケール感のある打球から、「台湾版・中軸スラッガーの完成形」として注目され、MLBやNPBのスカウトレポートにも頻繁に名前が挙がる存在になっています。

打撃の特徴:K%とBB%のバランスが良い長距離砲

2025年のスタッツを見ると、90試合で375打席(※四死球などを含む推定)、23本塁打に対して三振65、四死球43と、

  • 三振率:おおよそ17%台
  • 四球率:おおよそ11%台

というバランスで、長距離砲にありがちな「三振まみれ」というタイプではなく、むしろある程度ボールも見られる中長距離砲というイメージです。引っ張り方向への強いフライが持ち味で、外野フライの比率が高い“フライボールヒッター寄り”の打者像が各種分析記事でも指摘されています。

また、2023〜24年はスライダー系に対する対応力の高さが台湾の解析記事で示されており、変化球への対応が極端に弱いタイプではありません。「スイングが大きいパワーヒッター」ではあるものの、単なる豪快さではなく“打席の質”も兼ね備えた打者と言えます。

国際試合でのパフォーマンス:日本相手にも強烈なインパクト

林安可の名前を日本のファンに強く印象づけたのが、2024年のWBSCプレミア12です。

プレミア12・スーパーラウンドでの“東京ドーム弾”

スーパーラウンドの日本戦では、終盤9回にロッテ・横山投手から右翼スタンド最深部への“特大ソロ本塁打”を放ち、日本の投手陣に強烈なインパクトを残しました。 東京ドームというNPBの舞台で、日本の一軍クラス投手のボールをスタンド最深部まで運んでいる点は、NPB適応の可能性を考える上でもかなりポジティブな材料です。

決勝戦でも4番を任される存在感

決勝の日本戦ではノーヒットに終わったものの、台湾代表は彼を4番・DHで起用。 チーム戦略上も「台湾打線の中心」として扱われており、国際舞台でも中軸として計算されるレベルの選手であることがわかります。

西武が狙う理由と、NPB(特にパ・リーグ)での適性

西武が獲得に動く背景

報道ベースでは、西武は

  • 「打球速度が速く、長打力が魅力」(球団本部長のコメント)
  • 左打ちの強打者
  • 外野・一塁を守れる

といったポイントを評価し、獲得に動いているとされています。 近年の西武は投手力重視のチーム作りを進める一方で、打線は山川退団以降、長打力不足が指摘されてきました。その穴を埋める「クリーンナップ候補」として、林安可はかなりハマるプロフィールです。

ベルーナドームとの相性

ベルーナドームは以前のメラド時代ほど「極端な打者有利」ではないものの、

  • 左右中間がそれなりに広い一方、右中間〜右翼は比較的ホームランが出やすい
  • ドーム球場で風の影響が少なく、打球が素直に飛ぶ

という特徴があります。 林安可は左打ちで、引っ張りの強いフライを多く打つタイプなので、ベルーナドームの右翼スタンドとは非常に相性が良いと考えられます。

NPBでの“成績イメージ”

CPBL→NPBの成績換算は単純ではありませんが、

  • 直近3年でOPS .800前後〜1.000と安定して高水準
  • 三振率が極端に高くない(17%前後)
  • 日本投手相手にも東京ドームでスタンド最深部への一発を放っている

といった要素を踏まえると、

  • NPBでも健康なら「打率.260前後・20〜25本塁打」を十分に狙える
  • うまくハマれば「.270〜.280・25〜30本塁打」クラスまで伸びる可能性もある

というイメージが現実的なラインではないかと思われます(もちろん、これはあくまで筆者の推定ベースの話です)。

一方で、NPBは

  • 平均球速がCPBLより速い
  • スライダー、フォーク、カット系の質が総じて高い

ため、「外角変化球を我慢できるか」「インハイ速球への対応」がネックになる可能性もあります。 初年度からいきなり40本級を期待するよりは、“中軸候補として2〜3年かけてフィットしていく”タイプと捉えるのが現実的でしょう。

残留・他球団の可能性

なお、CPBL側では台鋼ホークス(TSG HAWKS)が5年契約を提示しているとの報道もあり、台湾球界に残るシナリオも十分に考えられます。: NPB複数球団が関心を示しているとされており、「西武が本命」とされつつも、最終的な行き先はまだ流動的と言えそうです。

「西武×台湾」の歴史──これまでの台湾出身選手の成績

林安可と西武の組み合わせを考えるうえで、見逃せないのが“西武と台湾”の長い歴史です。 これまでにも数多くの台湾出身選手が西武でプレーし、球団の黄金期を支えてきました。

郭泰源(クォ・タイユアン)──エース級の実績

まず筆頭格が、80〜90年代の西武黄金期を支えた右腕・郭泰源。 NPB通算では、

  • 登板:272試合
  • 勝敗:117勝68敗18セーブ
  • 防御率:3.16

というエース級の数字を残し、西武の複数回の日本一に大きく貢献しました。「西武=台湾出身エース」のイメージを決定づけた存在と言ってもいいでしょう。

許銘傑(ミンチェ)──先発もリリーフもこなした“便利屋エース”

2000年代の西武を支えた右腕・許銘傑も忘れてはいけません。 日本での通算成績は、

  • 登板:301試合
  • 勝敗:49勝49敗
  • セーブ:2
  • 防御率:4.20

と、長きにわたってローテや中継ぎ・抑えを務めた“何でも屋”タイプの投手でした。西武では12年在籍し、その後オリックス→台湾球界と渡り歩くなど、NPBにおける台湾人投手の成功例の一人です。

張誌家(チャン・ジージャ)──短期集中で結果を出した右腕

2002〜04年に活躍した右腕・張誌家もインパクトの大きな存在でした。 NPBでは実働3年と短いながら、

  • 登板:63試合
  • 勝敗:26勝19敗
  • 防御率:3.81

と、高水準の成績を残しています。 松坂大輔の離脱を埋めるかたちでローテに入り、優勝にも貢献した“台湾のエース級右腕”でした。

呉念庭(ウー・ネンティン)──内野ユーティリティとして貢献

そして近年では、内野手の呉念庭が台湾出身の西武選手として活躍しました。 西武での通算成績は、

  • 試合:382試合
  • 打率:.224(981打数220安打)
  • 本塁打:16本
  • 打点:108

と、打撃面では派手な数字ではないものの、内野の複数ポジションを守れるユーティリティとして重宝されました。 退団後はCPBLの台鋼ホークスに加入し、2025年には打率.328で首位打者を獲得しており、「西武で育った台湾選手がCPBLに戻って大活躍」という逆輸入成功例にもなっています。

西武と台湾は“相性の良いパイプライン”

こうして見ると、西武と台湾の関係は

  • 郭泰源・許銘傑・張誌家という投手陣の大黒柱
  • 呉念庭という内野ユーティリティ

と、すでに複数の成功例がある“実績あるパイプライン”と言えます。 林安可が加入すれば、そこに「初の本格派・台湾人スラッガー」が加わる可能性があり、球団としてもファンとしても夢のある補強になりそうです。

まとめ:林安可はNPB、とくに西武で活躍できるのか?

ポジティブ要素

  • CPBL通算で打率.287、112本塁打、399打点と実績十分の中軸打者。
  • 直近3年はOPS .800〜1.000と安定して高水準。
  • 2020年には本塁打王&打点王の2冠王、2025年にはOPSほぼ1.000とピークを迎えている。
  • プレミア12で日本投手から東京ドーム最深部への特大弾を放つなど、国際試合でもパワーは十分に通用。
  • 左打ちのフライボールヒッターで、ベルーナドームの右翼スタンドとは相性が良さそう。

不安材料

  • NPBは球速・変化球の質ともにCPBLより高く、初年度からフルで活躍できるかは未知数。
  • ケガ歴(鉤骨骨折など)があり、年間を通して健康を維持できるかはチェックポイント。
  • 既にCPBL球団からも大型契約が提示されているとされ、そもそも「本当にNPBに来るか」はまだ確定ではない。

最終的な見立て

以上を踏まえると、林安可は

  • NPBでも中軸を打てるポテンシャルを持った「完成度の高いスラッガー」
  • 西武に来れば、打線の長打力不足を一気に解決し得る左の主砲候補
  • 台湾との太いパイプラインをさらに強化できる“象徴的な存在”

となる可能性が高い選手です。

実際にNPBのマウンドとボールに慣れるまで時間はかかるかもしれませんが、キャリアのピークにある28歳という年齢、ここ数年の成績の伸び方、国際試合での実績を総合すると、 「日本でも十分に30本塁打級のスラッガーになり得る」と見ていいでしょう。

あとは――本人と球団の決断次第。 もし西武入りが実現すれば、「郭泰源以来の台湾スター」がベルーナドームに誕生するかもしれません。 今後の続報に注目したいところです。

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