逆Wフォームとは何か?怪我との関係
逆W(インバーテッドW)フォームとは、投球動作で両肘を肩のラインより上に挙げる腕の形を指しますja.wikipedia.org。ちょうど両肘でアルファベットの「W」を逆さにしたような形になることからそう呼ばれます。このフォームは腕が体の動きに比べて遅れて出てくるため、下半身への力の分散が効かず肘に負担が集中しやすいと考えられていますja.wikipedia.org。
実際、整形外科医のジェームズ・アンドリュース医師や元MLB投手コーチのドン・クーパー氏らは「投球フォームの欠陥が靭帯損傷の最大の原因だ」と指摘し、特に逆W字型のフォームが肘へ悪影響を与えると警鐘を鳴らしていますja.wikipedia.orgtan5277.blog.fc2.com。投球時に肘を高く上げるこの形は肩にも肘にも大きなストレスをかけ、肘の靭帯(内側側副靱帯)断裂=トミー・ジョン手術の一因になり得る、と多くの専門家が考えているのですtheatlantic.com。
ただし近年の研究では、逆W肘の有無だけが手術を要する故障リスクに直結する明確な証拠はないとの報告もあり(逆Wあり投手の手術率30%、なし27%で有意差なし)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov、フォームと故障の因果関係については議論が続いています。
NPBにおける逆Wフォームの例と故障歴
田中正義(ソフトバンク→日本ハム)
2016年ドラフトで5球団が競合した右腕、田中正義投手は大学時代から「完全な逆W字」のフォームだと注目されました。当時最速156~157km/hの豪速球で“逸材”と期待されましたが、一部では「あの出力で逆Wでは100%壊れる」とリスクを指摘する声もあったほどです。
事実、プロ入り後の田中投手は肩肘の故障に繰り返し悩まされました。1年目の春季キャンプから右肩違和感で出遅れると、以降毎年のように右肩痛に泣き、右肘の故障歴も抱える状態でしたnote.com。プロ4年目(2020年)には右肘痛で登板なし、翌年まで一軍未勝利と苦闘し、入団から6年間で一軍登板34試合・0勝にとどまっていますnote.com。特に2017年には右肘の内側側副靱帯を損傷しトミー・ジョン手術を受け、その後フォーム修正にも取り組みましたnextcityhiroshima42.com。
田中投手はまさに逆Wフォームと故障の関係を語る上で避けられない存在で、ソフトバンク在籍中にはその「スペ体質」にファンから嘆きの声も上がったほどですnextcityhiroshima42.com。2023年にはFA移籍の人的補償で日本ハムへ移籍し、心機一転リリーフで復活を期していますが、プロ入り後の度重なる故障は彼のフォームにも一因があるのではと囁かれていますnextcityhiroshima42.comnote.com。
安楽智大(楽天)
高校時代に甲子園で計772球を投げ「酷使の象徴」とまで言われた安楽智大投手も、フォームに着目すると逆W型の典型例として挙げられます。済美高校時代から肘を高く引くダイナミックな投球で知られましたが、2年夏に右肩、2年秋に右肘を痛め、ドラフト前には評価が急落しました(それでも楽天とヤクルトの2球団が1位指名)number.bunshun.jpnumber.bunshun.jp。
プロ入り後も安楽投手は故障がちで、毎年どこかしら痛める体質がネックとなり、なかなか殻を破れませんnote.com。特に2019年には右肘のクリーニング手術も受け、肩肘の不安が尽きない状況でしたnote.comnote.com。専門家や球団OBからは「その逆W字型のフォームを修正しない限り怪我の再発がつきまとう」と指摘されておりnote.com、実際安楽投手のフォーム写真を見ると高校時代から全く同じ逆W型であることが確認できますtan5277.blog.fc2.com。肘を故障した経歴を持つ彼にとって、逆Wのまま投げ続けることは「あまりにリスクが高い」とまで言われていますtan5277.blog.fc2.com。事実、プロ初登板から数年は直球の平均球速が伸び悩み、肩肘の不安を抱えながら投げている節もありましたtan5277.blog.fc2.com。2015年にデビューした頃、楽天ファーム戦での投球を見たブログ解説者は「このままでは不可避のトミー・ジョン手術になる」とまで危惧しておりtan5277.blog.fc2.com、フォーム変更を強く促しています。
安楽投手はその後、中継ぎ転向で一時復調し2021年には58試合登板と活躍しましたがja.wikipedia.org、2022年以降は再び故障や不調に苦しみ、2023年オフには戦力外から海外リーグ挑戦という道をたどりました。彼のケースは逆Wフォームと故障リスクを語る上で、育成法や酷使の問題と合わせてしばしば取り上げられていますnote.comtan5277.blog.fc2.com。
その他のNPB事例
NPBには他にも逆W型のフォームで知られた例があります。たとえば、元ソフトバンクの大場翔太投手(2007年ドラフト1位)は、安楽投手のフォームを彷彿とさせる独特なテイクバックから豪速球を投げていましたが、右肩を痛めてしまい僅かな活躍にとどまりましたtan5277.blog.fc2.com。潜在能力は高く評価されながら、フォーム起因とも言われる故障でキャリアが伸び悩んだ典型例です。
また、楽天の藤平尚真投手は両肘を高く使う逆Wタイプと言われ、ボールリリース前に肘が胸より打者方向に突き出す独特の腕の使い方をしますnote.com。藤平投手は幸い大きな故障こそ報じられていませんが、専門家から「肘が頭より前に出るフォームはかなり故障リスクが高い」と指摘されておりnote.com、将来的なケガを不安視する声もあります。
オリックスの榊原翼投手も肘の使い方が話題になりました。彼は腕の角度自体は極端に高くないものの、投球後に腕が身体に巻き付かず真下に振り下ろされる癖があり、蓄えられたエネルギーの逃げ場がなくなって肩甲下筋を痛めた可能性があると分析されていますnote.com。このように、NPBでも逆W型またはそれに近いフォームの投手はしばしばケガに見舞われており、「フォームを直さないと壊れる」といった議論がファンやメディアの間で起こっているのです。
MLBの例:有名投手たちの明暗
21世紀の若手スターだったスティーブン・ストラスバーグ投手(ワシントン・ナショナルズ)も、逆Wフォームの議論では必ず名前が挙がります。ストラスバーグは新人時代から「肘が肩より高い」投球フォームを指摘されtan5277.blog.fc2.com、当時ホワイトソックス投手コーチだったドン・クーパー氏は**「あの投げ方では遅かれ早かれトミー・ジョン手術になる」**と予言していましたtan5277.blog.fc2.com。
実際、ストラスバーグは2010年にデビュー半年で右肘靭帯断裂の重傷を負い、予言通りトミー・ジョン手術を受けています。その後復活して2019年にはワールドシリーズMVPに輝くなど実績を残しましたが、キャリアを通じて度重なる肘・肩の故障に苦しみ、2023年にわずか35歳で現役引退となりました。MLBでも逆W型の腕の位置は肘や肩に極度の負担をかけると認識されており、ヤンキースのジョバ・チェンバレン投手やストラスバーグが相次いで肘を壊した2010年前後には「若手有望株を次々襲う Inverted W の呪い」として米メディアで報じられたほどですtheatlantic.comtheatlantic.com。
大投手グレッグ・マダックスのように「両肘が肩より上がらないフォームが理想」とも言われja.wikipedia.org、逆Wへの警戒感は日米共通の話題となっています。
話題性と現場の見解:故障予防への模索
逆Wフォームと故障の話題性は高く、現役選手や指導者からもしばしば言及があります。MLBで活躍するダルビッシュ有投手も、自身のYouTubeなどで投球フォームの議論に触れ、「逆Wと言われる形でも、上半身だけで無理に作らず重心移動と連動して生まれるなら本来は理想的な形だ」と指摘していますbplosaka.blogspot.com。つまり、無理に肘を高く上げてタイミングを崩すのでなく、自然な動きの中で同様の腕の形になる分には問題ないという見解です。
この言葉が示すように、フォームと故障の関係は一概に「この形だから壊れる」と断定できるものではなく、タイミングの取り方や全身の使い方を含めた総合的なメカニクスの問題と捉えられていますbplosaka.blogspot.com。実際、前述のように学術研究の中には「逆W単独では統計的に有意な故障リスク増加と結びつかない」とする結果もありpubmed.ncbi.nlm.nih.gov、現場でも投球数や休養日程、筋力バランスなど様々な要因と合わせて議論する声が主流です。
とはいえ、一部の投手に逆W型が集中して見られることや、田中正義・安楽智大ら将来を嘱望された才能が相次いで故障に苦しんだ事実は、ファンの間で大きな話題となりました。「フォームのせいで壊れたのか?」という問いに明確な答えは出ていないものの、逆Wフォームは故障と隣り合わせ――少なくともそうしたイメージが定着しているのは間違いありませんnote.comtan5277.blog.fc2.com。今後も投手の故障予防に向けて、フォーム改善やトレーニング手法の模索が続けられていくことでしょう。
参考資料・出典: 投球フォームと故障リスクに関する専門家の指摘ja.wikipedia.orgtan5277.blog.fc2.comtheatlantic.com;NPB投手の故障歴・フォーム分析note.comtan5277.blog.fc2.comtan5277.blog.fc2.com;学術研究による検証結果pubmed.ncbi.nlm.nih.govなど。



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