“ロボ審判/ABS”で何が変わる?——MLBが2026年に導入する「チャレンジ方式」の仕組みと影響を完全解説

野球

最速要約:MLBは2026年からABS(Automated Ball-Strike)チャレンジ方式をレギュラーシーズンとポストシーズンで実施。判定はまず人間の球審がコールし、投手・捕手・打者のいずれかが即時に帽子/ヘルメットをタップして挑戦→ビデオボードに3D軌跡が表示され、正否を瞬時に確定します。各チーム1試合2回のチャレンジ(成功で回数は減らない)。延長では回ごとに1回分が補充されます。導入決定は競技委員会が承認、技術はホークアイ(複数カメラ)を使用。


1. ルールの全体像(2026年)

  • 基本:主審がボール/ストライクを宣告 → 投手・捕手・打者の誰かが即時チャレンジ(帽子/ヘルメットをタップ)。コーチやベンチからの助言は禁止。
  • チャレンジ回数:各チーム2回/試合成功した場合は回数保持。延長では手持ちがゼロなら各回開始時に1回付与
  • レビュー方法:ホークアイのトラッキングでゾーンとの交差を判定。結果は球場ビジョンと放送に即時表示。平均処理時間は約14秒(25年春のST実測)。
  • ストライクゾーン定義:バッター身長に紐づく上下境界(プレート上の垂直基準)を使用。
  • 完全自動ではない:あくまで人審×機械の併用。フレーミング等の技術は残る(常時機械コールではない)。

この「人審→即時チャレンジ→即結果」方式は、2019年以降のマイナーや2025年のスプリングトレーニング、オールスター前後の実験で運用検証済み。選手サイドには「ゲームのリズムを崩さずに誤審を減らせる」という受け止めが広がっています。


2. チャレンジの“実務フロー”

  1. 主審が宣告(Ball/Strike)。
  2. 投手・捕手・打者のいずれかが即時に帽子/ヘルメットをタップしてチャレンジを表明。
  3. ABSが判定:トラッキング軌跡とゾーンの交差で自動判定し、球場ビジョンに表示。平均約13.8秒
  4. 結果確定:覆ったらコール変更&チャレンジ回数は保持、覆らなければ回数を1つ消費。延長ではゼロなら各回に1回付与。

補足:ST2025の288試合では1試合平均4.1件のチャレンジが発生し、テンポへの影響は軽微という実測が公表されています。


3. 何が変わる?——現場・ファン・戦略への影響

① 誤審の可視化と「1打席の運命」を救う一手

低め/外角ギリギリの“ボーダー”で、打席のカウントが大きく変わる場面の救済が可能に。直近の報道でも、人審の権威を保ちつつ明確な誤りを排除するバランスが評価されています。

② フレーミングは“ゼロにならない”

コールの初動は人審のため、捕手のミットワークは依然として価値がある一方、明白な外れはABSで補正されやすくなります。フレーミング偏重の価値はやや中立化へ。

③ ベンチワーク:チャレンジ配分の最適化

延長補充ルールにより、9回までの配分延長見込みの読みがゲーム理論として重要に。カウント勝負(0-2/3-0)など価値の高い投球にチャレンジを集中させる指針が一般化するはずです。制度詳細はMLBの公式発表・報道で確認できます。

④ 放送体験:ビジョン表示で“納得感”アップ

球場のビジョン&中継に同じアニメーション表示が出るため、ファンの納得度が上がり、抗議や退場は相対的に減る見込み。技術はホークアイのカメラ/演算基盤を使用。


4. よくある疑問(FAQ)

Q1. チャレンジは誰ができる?ベンチ指示はOK?

投手・捕手・打者のみが即時にヘルメット/帽子タップで宣言。ベンチやコーチの援助は禁止です。

Q2. 回数は?成功すれば減らないって本当?

はい。各試合2回/チーム成功した挑戦は回数保持。延長は、手持ちゼロなら各回に1回が追加されます。

Q3. 判定に時間はどれくらい?テンポは落ちない?

ST2025の実測で平均約13.8秒。1試合のチャレンジは平均4.1件で、全体テンポへの影響は限定的とされています。

Q4. ストライクゾーンは“テレビの四角”と同じ?

テレビのガイド枠とは厳密には異なり、プレート上の三次元ゾーンを、打者の身体計測値に基づく上下境界で定義します。

Q5. なぜ2026年から?

マイナー/春季での長期検証を踏まえ、MLB競技委員会が2025年9月に導入を正式承認。技術検証と合意プロセスが整ったためです。


5. 監督・選手・捕手にとっての“戦略メモ”

  • 捕手:フレーミングは依然有効。ただし明確な外れは救済されるため、配球/リードの価値が相対的に上がる。
  • 投手:ボーダー攻めが増える可能性。ゾーン上下の使い分けと、“高め見せ球→低め決め球”のような配球がよりハイリターンに。
  • 打者カウント0-2/3-0など“勝敗に直結する投球”で積極チャレンジ。球種別の傾向把握(審判・配球)をデータで支援。
  • ベンチ:9回までのチャレンジ温存vs使用を可視化。延長補充を見据えた勝率最大化のしきい値をチームで共有。

コーチ向けTip:スカウティング報告に「ボーダー判定が多いコース/球種」のタグを新設し、チャレンジ期待値(覆りやすさ×打席価値)を可視化しておくと運用が安定します。


6. 参考(一次情報)

  • AP(導入決定と概要):競技委員会承認、2チャレンジ、延長での追加、表示方法など。
  • MLB公式(ニュース/プレス):How it works、ST2025の平均処理時間13.8秒・平均4.1件、発動合図など具体運用。
  • ESPN(詳細ルール):延長でのチャレンジ補充の運用。
  • Baseball America(背景解説):マイナーでの発生頻度と誤解の整理。

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