2025年のソフトバンクを語るとき、モイネロや有原航平といったエースの名前が真っ先に出る。だが、チームが苦しい場面で何度も救ったのは、ドラフト6位から10年かけて這い上がってきた川瀬晃だった。
初稿は9月28日時点の98試合のデータで書いたが、その後のポストシーズンで川瀬は決定的な仕事をやってのけた。本稿では2025年シーズンの最終成績、CS・日本シリーズでの活躍まで含めた完全版にアップデートする。
2025年レギュラーシーズン最終成績
| 項目 | 初稿(9/28) | 最終 |
|---|---|---|
| 試合数 | 98 | 約102〜107試合 |
| 打率 | .266 | .261前後 |
| 出塁率 | .340 | – |
| 本塁打 | 2 | 2(プロ初含む) |
| 打点 | 22 | – |
| 守備 | 一塁・二塁中心 | 一塁・二塁・三塁・遊撃 |
シーズンを通して一度も二軍に落ちず、内野のどこでもこなすユーティリティとして優勝争いを支え続けた。派手な数字ではないが、「チームが苦しい場面で必ず仕事をする」という質が、この選手の最大の強みだ。
2025年のハイライト①──5月2日サヨナラ逆転二塁打
5連敗中のソフトバンクは、対ロッテ戦の9回裏1-3とリードされていた。クローザー益田直也に2死走者なしまで追い込まれた後、3連打で1点差に迫り、死球で2死満塁。ここで笹川吉康の代打として登場した川瀬が、レフトオーバーの逆転サヨナラ二塁打。チームの連敗を「5」で止めた。この勝利がソフトバンクの上昇気流の起点になったと見る声も多い。
2025年のハイライト②──5月20日プロ10年目初ホームラン
相手は天敵・伊藤大海。2-2の同点で迎えた6回、先頭打者として内角高めのスライダーを捉え、ライトスタンドへ放り込んだ。プロ10年目、通算785打席目にしての初本塁打。しかも相手は日本ハムのエース。川瀬は伊藤大海に対してポストシーズン含め通算打率.389という好相性を誇っており、このホームランもその延長線上にあった。試合は5-2でソフトバンクが勝利。
2025年のハイライト③──CSファイナル第6戦の勝ち越しタイムリー
そして川瀬の2025年を象徴する最大の場面が、CSファイナルステージ第6戦だった。
ソフトバンクは開幕2連勝からまさかの3連敗で逆王手をかけられ、崖っぷちの最終戦。先発モイネロが1-1の同点で踏ん張る中、5回2死満塁の場面で打席に立ったのが川瀬晃。右適時打を放ち2-1と勝ち越しに成功。この1点がそのまま決勝点となり、ソフトバンクは2年連続の日本シリーズ進出を決めた。
CSの「パーソル賞」(ファンが選ぶ活躍選手賞)を受賞したのも川瀬だった。CS MVPこそモイネロが受賞したが、ファンの心に最も刺さったのは川瀬の勝ち越し打だったということだ。
2024年CS初戦の再現──日本ハムキラーとしての川瀬
初稿で詳しく触れた2024年CS初戦でも、川瀬は「2番・二塁」で先発し2安打。3回表の併殺完成で失点を防ぎ、小久保監督に「今日は川瀬に尽きる」と言わしめた。つまり川瀬は2年連続で対日本ハムのCSで決定的な仕事をしたことになる。
日本ハムファンにとって川瀬晃は、スタッツ以上に「嫌な記憶」として刻まれている存在だろう。派手さはないが、ここぞの場面で必ず出てくる。まさに「日本ハムキラー」と呼ぶにふさわしい。
日本シリーズでも貢献──5年ぶりの日本一へ
続く日本シリーズでは阪神を4勝1敗で撃破し、ソフトバンクは5年ぶりの日本一に輝いた。川瀬はレギュラーシーズンと同様にユーティリティとして出場。ポストシーズン全体を通じて、投手陣がロースコアに持ち込む展開で「1点を奪う打撃」「守備での貢献」が光った。モイネロ、松本裕樹、杉山一樹の投手陣が注目される中で、川瀬のような脇役が確実に仕事をこなす層の厚さこそが、2025年ソフトバンクの真の強さだった。
川瀬晃というキャリアの意味──ドラ6から「優勝の立役者」へ
2015年ドラフト6位。契約金3000万円、年俸480万円。大分商業の同級生・森下暢仁(広島)がドラ1でプロ入りする中、川瀬は下位指名からの出発だった。一軍初出場はプロ3年目の2018年。そこから内野のどこでも守れるユーティリティとして少しずつ出場機会を増やし、2024年に初めてシーズンフル一軍を達成。そして2025年、プロ10年目にして「優勝の立役者」「CSの男」と呼ばれる存在になった。
2026年はさらに出場機会を増やし、レギュラー争いに名乗りを上げられるか。故障者が出たときだけでなく、「川瀬がいないと不安」と言われるような存在になれるかが次のステップだ。
※本記事は2025年9月28日時点の初稿を、シーズン最終成績およびポストシーズンの結果に基づきリライトしたものです。



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