福岡ソフトバンクホークスの東浜巨(35)が、今オフ国内フリーエージェント(FA)権を行使する意思を固めた。2023年からの3年契約が今季で満了。巨大戦力の中で登板機会が絞られる状況を受け、「まだ投げられる場所」を求めて権利行使に踏み切る。日刊スポーツ
2025年シーズンは一軍で7試合登板、4勝2敗、防御率2.51。登板数こそ多くないものの、与えられたチャンスで結果を残し、「戦力としてはまだ一線級」を証明して市場に出る格好だ。日刊スポーツ+1
球団内年俸順位からBランク相当が有力視されており、推定年俸1億5000万円前後の“高年俸+補償付き”FAとなる見込み。この条件が、移籍先探しを難しくする最大のポイントになる。
プロフィールとこれまでの実績
- 1990年6月20日生まれ、沖縄県出身
- 沖縄尚学高で2008年センバツ優勝
- 亜細亜大で通算35勝・420奪三振(東都リーグ歴代上位)
- 2012年ドラフト1位でソフトバンク入団
- 2017年:16勝5敗、防御率2.64でパ・リーグ最多勝
- 2022年:ノーヒットノーラン達成
NPB.jp 日本野球機構+1
伸びのあるストレートと多彩な変化球、安定した制球で試合を作る本格派。近年はケガや競争激化もありローテ当確とはいかないが、「ローテ3〜5番手を任せられる実績右腕」としての価値は健在だ。
Bランク&高年俸が生む“踏み出しづらさ”
BランクFAを獲得する球団は、以下のいずれかを選ぶ必要がある。SPAIA+1
- 人的補償+旧年俸の40%の金銭
- 人的補償なしの場合:旧年俸の60%の金銭
東浜が推定1.5億円なら、
- 金銭のみ:約9000万円
- 人的+金銭:約6000万円+プロテクト外選手1名
となる計算だ。
「即エース級」なら踏み切りやすい額だが、35歳・ここ数年はフル回転ではない右腕にこのコストを払えるかどうか。
東浜のFAは、「実力評価」と同じくらい「コストをどう捉えるか」の駆け引きになる。
東浜獲得のロジックが立つ球団はどこか
ここからは、先発事情・補償リスク・編成バランスを踏まえた“予想”として挙げていく。
有力候補1:東京ヤクルトスワローズ
ポイントは「先発不足+人的リスクの軽さ」。
- ここ数年、チーム防御率はリーグ下位圏。先発陣も年間を通して計算できる投手が少なく、「ローテ3〜6番手の不安定さ」が課題。
- 村上宗隆や山田哲人ら絶対プロテクト枠はいるが、28人枠を埋めたあとに「出したら大炎上級の若手」が大量に余るタイプではない。
そのため、
- 金銭補償のみでの獲得も選択肢にできる
- 人的補償を選んだとしても、編成崩壊レベルの痛手にはなりにくい
という構図が描ける。
「高年俸でもローテを安定させたい」「守れない分、投手で帳尻を合わせたい」球団事情を踏まえると、東浜獲得の理屈が最も作りやすい球団の一つだと言える。過去の事例でもヤクルトは人的保証ではなく金銭保証が選ばれるケースが多い。
有力候補2:千葉ロッテマリーンズ
「先発の枚数不足」と「人的による大損リスクの相対的低さ」で名前を挙げたい。
- 先発陣は毎年のようにやりくりが続き、ローテの谷間で失点がかさむ傾向がある。
- 本拠地が投手有利球場なことも考えると、「試合を壊さないベテラン先発」は相性が良い。
- プロテクト後に残る選手層を考えても、「絶対に持っていかれたくない選手」が大量にあふれる構造ではない。
金銭のみ(0.6)選択を前提にすれば比較的動きやすく、東浜を「イニングイーター兼精神的支柱」として迎える絵は十分に描ける。
有力候補3:東北楽天ゴールデンイーグルス
「即戦力先発の橋渡し役」としてフィットしやすい。
- エース級と若手の間を埋める層が薄く、年間を通してローテを維持するのに苦労しているシーズンが続く。
- 資金力的に金銭補償のみを選択できる余地があり、プロテクトで守るべき主力も28人に収まりやすい。
編成的には、
- 2年契約+やや抑えめ総額
- ローテ中位〜下位を任せる前提
であれば、「コスト込みでも取りに行く意味がある」サイドに入ってくる球団だろう。
ボーダー&“名前だけ出す”候補
ここからは「ロジックは作れるが、優先度は高くなさそう」という扱い。
- 中日ドラゴンズ
先発はそこまで壊滅しておらず、補強優先度は打線。人的で痛い若手も少なくないため、「条件が大幅に下がった場合のみ」というトーンが現実的。 - 埼玉西武ライオンズ
先発枚数は常に課題だが、プロテクト外に出したくない若手も多い。東浜にBランク補償を払うなら、Cランク投手や新外国人を優先しそうな構図。 - 読売ジャイアンツ/横浜DeNAベイスターズ
どちらも先発防御率はリーグ上位で、「絶対に東浜が必要」という状況ではない。人的補償で流出する選手の価値を考えると、“優勝特化の贅沢補強”以上の説得力は出しづらい。
このあたりは記事内で「名前を挙げつつも、積極参戦は考えにくい」と整理しておくと読みやすい。
森唯斗のケースが示す「高年俸ベテラン投手」の現実
東浜の去就を語るうえで、同じソフトバンクの守護神だった森唯斗のケースは示唆的だ。
- 全盛期には年俸4億6000万円に到達した絶対的クローザーだったが、成績低下も重なり2023年オフに戦力外。給暦+1
- 一度市場に出ると、かつての実績よりも「直近成績」と「コスト」が厳しく査定され、大幅ダウンでの再出発を強いられた。
この流れは、東浜にも重なる。
- 実績は申し分ないが、「Bランク+1.5億」のパッケージは、各球団にとって決して軽くない投資。
- 「ソフトバンクだからこの額」だった部分もあり、他球団は**“条件次第”で初めて手を伸ばせる**というスタンスになりやすい。
森唯斗の例は、「功労者でも、今の実力とコストが見合わなければ冷静に切られる」時代であることを象徴している。東浜側もそれを理解したうえで、市場に出ているはずだ。
東浜巨の3つのシナリオ
シナリオA:条件見直しでソフトバンク残留(最有力)
- 球団は宣言残留を容認する可能性が高いと見られる。
- 東浜側が複数年や出来高など柔軟な条件を受け入れれば、
- 「年俸ダウン+複数年」
- 「実績評価を残しつつ総額を調整」
といった形でソフトバンク残留に落ち着く筋書きは十分濃厚だ。
シナリオB:ヤクルト・ロッテ・楽天あたりが「コスト込みでも先発補強」と判断
- 先発不足が明確な球団が、
- 金銭補償のみを前提
- もしくはプロテクト外で致命傷にならないと判断
して動くケース。
- 特にヤクルトは「人的での大ダメージが少ない+先発補強が急務」で、記事上も“東浜獲得の理屈が立つ球団”として扱いやすい。
シナリオC:市場を一周→条件を下げてソフトバンク再合流
- Bランク補償と高年俸がネックとなり、他球団のオファーが伸びない。
- 結果的に、**「条件を下げて古巣と再契約」**という落としどころ。
これは高年俸ベテラン投手が抱えがちなパターンであり、森唯斗のケースが各球団の判断をいっそう慎重にさせている点を考えると、現実味のある選択肢だ。
結論:東浜に「需要はある」が、“パッケージとしてのお得感”が問われるFA
東浜巨は今も、
- ローテ中位を任せられる実績
- 大舞台の経験
- 若手の手本になれるプロ意識
を備えた投手だ。戦力としての需要は確かに存在する。
一方で、
- 35歳
- Bランク補償
- 推定1.5億円
という条件は、「エースではないベテラン先発」にとっては重い。
だからこそ、このFAは「東浜を何番手として計算するのか」「どこまで条件を落とせるのか」をめぐる超シビアな値踏みになる。
ヤクルト・ロッテ・楽天といった「先発補強+人的リスク容認」が両立しうる球団が名乗りを上げるのか。
それとも市場を一周した末に、ソフトバンクと“現実的な条件”で再び握手するのか。
東浜巨の決断は、ベテラン投手の価値観が変わりつつある現在のNPB市場を映し出す、一つの試金石になりそうだ。



コメント