野球でいうラビットボールとは、一般に反発係数が高く、打球が飛びやすいボールを指す俗称です。公式名称ではありませんが、NPBでは特に2003年〜2004年前後の“打高投低”時代を語るときによく使われます。対照的に、2011年〜2012年の統一球は極端な打低を生み、当時のコミッショナー名から「加藤球」と呼ばれるようになりました。NPB公式でも、2011年から統一球が導入され、2013年にはボールの芯を取り巻くゴム成分の変更があったと公表しています。出典:NPB「統一球の仕様調整について」
ラビットボールとは何か
「ラビット」は、ボールがうさぎのようによく跳ねる、よく飛ぶというイメージから来た呼び方です。要するに、投手有利の“飛ばないボール”の反対側にある概念で、同じ打球でもスタンドまで届きやすくなり、試合全体の得点環境を押し上げやすいボールだと考えるとわかりやすいです。
Full-Countでも、近年の打高投低傾向を論じる中で、2011年の統一球を基準にすると、過去の打高時代との落差が大きかったことに触れています。ラビットボールは、そうした「飛ぶ」「打てる」時代を象徴する言葉として定着しました。出典:Full-Count
ラビットボール時代はどれくらい本塁打が多かったのか
象徴的なのは2003年と2004年です。NPB公式の年度別成績を見ると、2003年セ・リーグは合計987本、パ・リーグは1,000本の本塁打が出ています。さらに2004年はセ・リーグ1,074本、パ・リーグ920本で、両リーグ合計では1,994本。かなり強烈な数字で、当時のNPBが“打てば飛ぶ”環境だったことを物語っています。出典:NPB 2003年セ・リーグ年度別成績/出典:NPB 2004年セ・リーグ年度別成績
特に2004年セ・リーグは、巨人が259本、横浜が194本、広島が187本、ヤクルトが181本と、チーム本塁打数が全体的に高水準でした。ホームランが試合の主役になりやすく、打線の破壊力そのものがチームカラーを決める時代だったと言えます。出典:NPB 2004年セ・リーグ年度別成績
ラビットボールがもたらしたもの
ラビットボール時代がもたらしたもののひとつは、やはり打者成績の華やかさです。2003年セ・リーグでは巨人が205本、横浜が192本、ヤクルトが159本、パ・リーグでも西武191本、近鉄187本、オリックス174本と、複数球団が150本塁打超えを記録していました。打者の数字が伸び、ファンにとっては“派手でわかりやすい試合”が増えた時代でもあります。出典:NPB 2003年セ・リーグ年度別成績
ただし、良いことばかりではありません。ボールが飛びやすければ、少し甘く入った球がそのままスタンドに届きやすくなり、投手成績は悪化しやすくなります。実際、2004年セ・リーグではチーム防御率4点台の球団が複数あり、読売4.50、ヤクルト4.70、広島4.75と、投手にとってはかなり厳しい環境でした。出典:NPB 2004年セ・リーグ年度別成績
つまりラビットボールは、試合のエンタメ性を上げる一方で、投手評価や記録比較を難しくする面も持っていました。ホームランが増えるほど打者は目立ちますが、その分だけ投手の数字は見栄えが悪くなりやすいからです。
加藤球はなぜ“対極”と言われるのか
ラビットボールの対極として語られるのが、いわゆる加藤球です。2011年に統一球が導入されると、NPB全体は一気に投高打低へ振れました。NPB公式の年度別成績では、2011年セ・リーグの本塁打数は合計485本、パ・リーグは454本で、両リーグ合計939本。2004年の1,994本と比べると、半分以下の水準まで落ち込んでいます。2012年もセ・リーグ454本、パ・リーグ427本で、極端な打低傾向は続きました。出典:NPB 2011年セ・リーグ年度別成績/出典:NPB 2012年セ・リーグ年度別成績
2004年セ・リーグでは巨人だけで259本塁打を打っていましたが、2011年セ・リーグではリーグ最多でも巨人の108本。パ・リーグも2004年は西武191本、近鉄187本だったのに対し、2011年は最多の西武でも103本でした。つまりラビットボール時代はチーム単位で150本や180本を狙える環境だったのに、加藤球時代はリーグ最多でも100本前後にまで縮んだわけです。出典:NPB 2004年セ・リーグ年度別成績/出典:NPB 2011年セ・リーグ年度別成績
加藤球が特別に問題視された理由
加藤球がここまで話題になったのは、単に“飛ばない”だけではなく、統一球の仕様調整が十分に透明化されていなかったからでもあります。NPBは2013年6月の会見要旨で、開幕以降「ボールが飛ぶようになった」との指摘がある中、実際にはボールの芯を取り巻くゴム成分に変更があったことが判明したと認めました。しかも、その変更は反発係数を基準内に収めるための調整だったと説明しています。出典:NPB「統一球の仕様調整について」
このため「加藤球」という言葉には、単なる“飛ばないボール”以上に、当時の運用や説明への不信感まで含まれています。ラビットボールが“飛びすぎるボール”の象徴なら、加藤球は“飛ばなすぎる上に不透明だったボール”の象徴と見ることもできます。
ラビットボールは悪だったのか
ここは単純ではありません。ラビットボール時代は、本塁打が増え、試合が派手になり、観客にとってはわかりやすく面白い試合が増えやすい側面がありました。いわゆる“打高投低”は、長打が正義になりやすく、スター打者がより目立つ環境でもあります。
一方で、加藤球のような極端な打低環境では、投手戦の緊張感は増すものの、打者の成績が全体に沈み、リーグ全体の見栄えがかなり地味になります。どちらが良いかは、ファンが何を面白いと感じるかにも左右されます。Full-Countも、近年の投高打低と打高投低の変化を通じて、リーグの見え方自体が大きく変わると論じています。出典:Full-Count
まとめ
ラビットボールとは、一般に反発係数が高く、打球が飛びやすいボールを指す俗称です。NPBでは特に2003年〜2004年の打高投低時代を象徴する言葉として使われ、実際に2004年は両リーグ合計で1,994本塁打が記録されました。これに対して、加藤球と呼ばれた2011年の統一球時代は両リーグ合計939本まで落ち込み、まさに対極の環境でした。出典:NPB 2004年セ・リーグ年度別成績/出典:NPB 2011年セ・リーグ年度別成績
結局、ラビットボールがもたらしたのは、ホームラン増加による試合のエンタメ性の上昇と、投手成績や時代比較の難しさの両方です。加藤球はその真逆の世界を生みました。だからこの2つは、単なる“飛ぶ・飛ばない”の違いではなく、プロ野球という競技の見え方そのものを変えた存在だったと言えます。
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