2025年シーズン終盤、「リチャードのファーストフレーミング」というフレーズが野球ファン界隈を席巻しました。
読売ジャイアンツの内野手・リチャード(砂川リチャード)が、一塁守備で“捕手のフレーミング”のような動きをした結果、走者と派手に激突――このプレーがフジテレビ系「プロ野球珍プレー好プレー大賞2025」で大賞に選ばれ、一気にお茶の間レベルの話題になります。
この記事では、
- そもそも「フレーミング」とは何か
- なぜ一塁手リチャードが「フレーミング」と呼ばれているのか
- ルール的・技術的に何が起きていたのか
- この珍プレーから学べる“本当のフレーミング”の話
をまとめて解説していきます。
まず前提:本来の「フレーミング」とは捕手の技術
野球におけるフレーミング(catcher framing)は、本来は捕手の捕球技術を指す言葉です。
代表的な定義としては、
- ストライクゾーンぎりぎり、ボールかストライクか際どい球を、ミットの出し方・動かし方でストライクに見せる技術
- ボーダーラインの投球を、審判にストライク判定させやすくする「見せ方」の技術
といった説明がされています。
簡単に言えば、
「ボーダー球を“きれいなストライク”に見せるキャッチャーのテクニック」
というのが、本来のフレーミングです。
当然ながら、ボールを投げる投手・打つ打者・守る内野手とは関係なく、本来は捕手専用の概念になります。
なので、一塁手に対して「フレーミング」という言葉が付くこと自体、本来はありえない状況です。ここが今回の「リチャードのフレーミング」が話題になった最大のポイントでもあります。
リチャードってどんな選手?ポジションは完全に内野手
まず主役のリチャードについて整理しておきましょう。
- 登録名:リチャード(本名:砂川リチャード)
- 出身:沖縄県
- ポジション:内野手(主に一塁・三塁)
- 投打:右投右打
- 身長189cm、体重123kgの大型スラッガー
- ソフトバンクで育成から支配下→ファーム本塁打王の常連
- 2025年シーズン途中にソフトバンクから巨人へトレード移籍
経歴を見てわかる通り、リチャードは「捕手経験のある選手」ではなく、基本的にコーナー内野手(主に一塁・三塁)です。 だからこそ「ファーストなのにフレーミング」というワードがすでにツッコミどころ満載、というわけですね。
問題のプレー:「一塁でキャッチャーのフレーミングの形で捕球」
話題になったのは、2025年シーズンの巨人対ヤクルト戦。
内野ゴロの処理で一塁への送球を受ける場面でした。 THE ANSWERの記事では、このプレーを次のように説明しています。
- ヤクルト打者の内野ゴロで、一塁へ送球
- 一塁手のリチャードが、その送球に対してなぜかキャッチャーのフレーミングのような形でミットを構えた
- アウトにはなったが、ベースへ駆け込んできたヤクルト・増田珠の腰〜お尻あたりとリチャードが接触し、増田が派手に吹っ飛ぶ
- 幸い両選手とも大きなケガはなし
この「一塁でまさかのフレーミング → 走者と激突」という画があまりにもシュールで、X(旧Twitter)などでは
- 「1塁でフレーミングしてて草」
- 「リチャードのファーストフレーミング、今年1笑った」
- 「キャッチャーの真似してフレーミング→ランナー吹っ飛ぶのコンボ」
といったポストが大量発生。その後、このプレーはフジテレビ系「プロ野球珍プレー好プレー大賞2025」で珍プレー大賞に選ばれ、公式に“その年のNo.1珍プレー”として表彰されることになります。
さらに番組内では、ゲストの中田翔氏がこのプレーについて、
「あれはリチャードがアホなだけです」
と笑い混じりにバッサリ。スタジオは爆笑に包まれたと報じられています。
そもそも一塁手にフレーミングは必要ないのでは?
ここで改めて、ルールと役割の観点から整理してみます。
捕手のフレーミングが意味を持つ理由
- ストライク/ボールの判定は本塁後方の球審が行う
- 審判から最も近い位置でボールを捕るのが捕手
- 捕球の「見え方」が判定に影響しうる(境目のボールほど)
だからこそ、捕手のフレーミングは意味があり、近年はMLB/NPBともに数値化されて「フレーミング指標」として評価されています。
一塁手の判定は「ボールを持ったタイミング」なのでフレーミング不要
一方で、一塁でのアウト/セーフの判定は、
- 「打者走者の足がベースに触れる瞬間」と
- 「野手がボールを捕球した瞬間」
のタイミング比較で決まります。 そこには「ストライクゾーン」という概念も「審判にどう見せるか」という要素もほとんど関係ありません。
言ってしまえば、
「ちゃんと捕ってさえいればいいので、わざわざ“見せ方”を工夫する必要がないポジション」
が一塁手です。
むしろ一塁で重要なのは、
- ベースから足を離さないこと
- 多少悪送球でも体を伸ばして捕ること
- 走者と接触しないよう安全にプレーすること
などであって、捕手のようなフレーミングテクニックは本来まったく求められていません。
じゃあ、リチャードは一塁で何をしていたのか?
THE ANSWERや各種動画・ファンの証言を総合すると、プレーのポイントはこんな感じになります。
- 内野からの送球がやや低めのコースに来た
- リチャードは捕手のようにミットを低く出し、そこからすくい上げる形で“ビタ止め”
- まさに「低めのボーダーをストライクに見せる」フレーミングのフォーム
- そのフォームのまま一塁ベース上に体が残り、駆け込んできた増田珠とお尻付近で接触
- 増田が吹っ飛び、リチャードもバランスを崩すというコントのような図に
実際のスロー映像を見ると、ミットの出し方とすくい上げ方が完全に「キャッチャーのフレーミング」そのもので、そこだけ切り取ればかなり綺麗な技術に見える、というのも面白いところです。
X上では、
- 「ビタ止めの砂川リチャード。ちゃんと下から掬ってるの草」
- 「確信フレーミングして満足げなのがさらにシュール」
といった声もあり、「技術としては妙にそれっぽいけど、場所が完全に場違い」というギャップが爆笑ポイントになっています。
また、解説系のポストでは「リトルリーガーは絶対に真似しないように」と安全面の問題も指摘されています。一塁ベース上で体を前に残した状態で捕球すれば、走者と衝突するリスクが高くなるからです。
なぜこんなことが起きた?可能性を整理してみる
もちろん、リチャード本人の頭の中まではわかりませんが、プレーを見たうえで考えられる要因をいくつか挙げてみます。
① 低めの送球に対する“反射的な動き”説
送球がかなり低めだったため、
- 「とにかく後ろへそらしたくない」
- 「しっかり止めたい」
という意識が先行し、捕手のように低めをすくい上げて“ビタ止め”するフォームになってしまった可能性はあります。 たとえばフレーミング解説記事で紹介される「低めのボールは、親指を下から入れて上方向にミットを動かす」という教科書通りの動きにかなり近く見えます。
② 練習や遊びの中で覚えた“キャッチャーごっこ”説
近年はフレーミングが話題になっていることもあり、練習中のキャッチボールや遊びの中で、「捕手の真似をしてフレーミングしてみる」選手も少なくありません。 普段からそうした遊びをしていた結果、ゲーム本番で無意識に出てしまった――という“クセ”説も考えられます。
③ サインプレー的な意図はほぼ皆無
一部で「何か高度な意図があったのでは?」という声も出ましたが、
- アウト/セーフ判定にフレーミングは影響しない
- むしろ走者との衝突リスクが上がる
- チームとしてメリットがないどころかデメリットが大きい
ことを考えると、戦術的な意図があった可能性は極めて低いと考えるのが自然です。 本人のリアクションや周囲の笑いの雰囲気から見ても、「やらかした系の珍プレー」と見るほうが妥当でしょう。
本物のフレーミングとの違い:技術的には“似て非なるもの”
今回のプレーはたしかに「フォームだけ見ればキャッチャーのフレーミングっぽい」動きでしたが、本来の意味でのフレーミングとは決定的に違う点があります。
1. 審判に見せる相手が違う
本物のフレーミング:本塁後方の球審に対して、ボーダーの投球をストライクに見せる技術。リチャードのフレーミング:一塁で送球を受けているので、見せる相手がそもそも違う(一塁塁審はタイミングを見ている)。
2. 成功条件が違う
捕手のフレーミング: 「ストライクと判定されるかどうか」が勝負。 ミットの位置・動かし方が審判のイメージに大きく影響します。
一塁の捕球: 重要なのは「確実に捕っているか」「ベースから足が離れていないか」で、ミットの微妙な動きはほとんど関係ありません。
3. 安全面への影響
捕手のフレーミング:ホームベース後方なので、打者や走者との接触は限定的。 一塁のフレーミング(今回のようなフォーム):走者の進路上に体を残す形になるため、衝突リスクが高く危険です。
つまり、
「技術的な動きはフレーミングっぽいが、状況と目的が完全に噛み合っていない」
という意味で、まさに「珍プレーとしてのフレーミング」と言えるでしょう。
この珍プレーから“本当のフレーミング”を学ぶポイント
単なるネタとして楽しむだけでなく、せっかくなので本物のフレーミングの基礎についても、リチャードのプレーをきっかけに整理しておきます。
① フレーミングは「わざとらしく動かすこと」ではない
解説記事や元プロ捕手のコメントでは、しばしば
- 「フレーミング=大げさにミットをずらすこと」ではない
- むしろ“自然にストライクをストライクに見せる”ことが本質
と強調されています。
今回のリチャードのプレーは、「がっつりミットをすくい上げる」「見た目も派手」という意味で、いわゆる“やりすぎフレーミング”のお手本のようにも見えます。 少年野球などでは真似してはいけない例として紹介されてもおかしくありません。
② そのポジションに合った「いい見せ方」を考える
一塁手の場合、本当に大事なのは、
- 多少悪送球でも体を張って止める
- 安全にベースを踏みながら捕る
- 捕ってから素早く次のプレーに移行する
といった、ポジションに合った守備技術です。
リチャードの「一塁フレーミング」は、
「技術そのものは高度なのに、場所と目的が完全にミスマッチだとこうなる」 という意味で、ある意味とてもわかりやすい教材になっているとも言えます。
まとめ:リチャードのフレーミングは「技術+笑い」が生んだ2025年最強の珍プレー
最後にポイントを整理すると――
- 「フレーミング」は本来、捕手が審判にストライクを“良く見せる”ための捕球技術であり、一塁手には基本的に関係ない概念。
- リチャードは一塁守備で、低めの送球に対してキャッチャーのようなフレーミングフォームでミットを出し、そのまま走者と激突する珍プレーをやらかした。
- このプレーは「リチャードのファーストフレーミング」としてバズり、「プロ野球珍プレー好プレー大賞2025」の大賞にも選ばれた。
- 技術的には“フレーミングっぽい”ものの、ポジション・状況・安全性の観点からは完全にNGなプレーであり、「子どもは絶対に真似してはいけない」類のもの。
とはいえ、この一件によって、
- フレーミングという言葉や概念が、これまで以上に一般層にも浸透した
- 捕手の細かい技術に注目が集まるきっかけにもなった
という副次的な効果も生まれました。
2025年のプロ野球を象徴する「笑えるワンシーン」であると同時に、
「そもそもフレーミングって何?」を語るうえで外せない教材になった――それが、リチャードの“伝説のファーストフレーミング”と言えるかもしれません。
参考文献・出典
- THE ANSWER「お茶の間に失態『アホな』珍プレーに笑撃『何回見ても意味不明』309発男はバッサリ指摘」
- Yahoo!リアルタイム検索「リチャード フレーミング」まとめ各種ポスト
- プロ野球公式サイト「リチャード(砂川リチャード)個人年度別成績」
- スポーツナビ「リチャード – 読売ジャイアンツ – プロ野球選手名鑑」
- 高野連系記事「“二軍の帝王”リチャードは巨人移籍で大ブレイクできるか?」
- Wikipedia「フレーミング(野球)」
- spojoba「野球のフレーミングとはどんな意味?効果についても解説!」
- ENSPORTS fan「野球におけるフレーミングの基礎知識と効果を解説」
- Full-Count「最近よく聞く『フレーミング』とは?『正しい認識を…』元捕手が解説」
- first-pitch.jp「“フレーミング”と“ミットずらし”の違い」



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