「今年こそ卒業できるのか?」という煽りは、野球ファンの間で“戦力としての卒業(=一軍定着)”を指して使われがちです。
ただ、広島カープのドラフト1位右腕・常廣羽也斗は、その言葉が文字通り“大学卒業”にも重なってしまう珍しい状況が報じられてきました。
本記事では、常廣の状況を整理しつつ、過去に「単位不足」「留年」「プロ入り後に復学」など、学業とプロ生活を並走した事例を振り返りながら、 “今年こそ卒業できるか”を現実的に考える材料をまとめます。
まず前提:NPBドラフトは「卒業見込み」が原則
NPBのドラフト(新人選手選択会議)は、学生に対して原則「翌年3月の卒業見込み」であることを条件に指名できる、という趣旨の条文があります。
つまり、本来は「卒業できる前提」でプロの入口に立つ仕組みです。
第5条(選択選手)では、学校在学選手は「翌年3月卒業見込み」に限る旨が示されています(大学は原則4年間在学の場合も同様に扱う趣旨)。出典: 日本プロ野球選手会(JPBPA)「新人選手選択会議規約(PDF)」
それでも、現実には「単位が足りない」「卒業がずれる」「プロ入り後に取り直す」といった例が、少数ながら出てきます。
常廣のケースは、その“少数例”として注目が集まった形です。
常廣羽也斗の「留年報道」は何がポイントだったのか
報道の要点はシンプルで、「1単位不足で卒業できず、在学が続いている」という話です。さらに球団も「卒業していないのは事実」とコメントした、とされています。
常廣投手が青山学院大学に在学中であること、卒業に届かなかった経緯、球団コメントに関する記述が報じられています。出典: NEWSポストセブン公式X(2025年8月16日投稿)
この話が“ネタ化”しやすかった理由は、単なる単位不足ではなく、ドラ1・即戦力枠として見られる投手が、プロ生活と並行して「学業の決着」も抱えている点にあります。 コンディション、登板準備、移動、リハビリ……その上でレポートや試験が乗ると、どうしても負荷は増えます。
過去の事例:プロ入り後に「卒業」を取りにいった/留年を挟んだ選手
「学業で留年」「単位不足で卒業できず」「プロ入り後に復学」――このあたりは、公に語られることが少ない一方で、報道・本人談が残っているケースもあります。
ここでは、確認できる範囲で代表例をピックアップします。
① 山内壮馬(名城大→中日):“プロ入り後に復学して卒業”
中日ドラゴンズにドラフト1位で入団した山内壮馬は、入団時点で単位を残していたが、プロ入り後に休学・復学を挟みながら卒業まで辿り着いた――という趣旨が報じられています。
「中日入団時、単位を残し大学を卒業できていなかった」「プロ入り後に休学→復学して卒業」という経緯が紹介されています。出典: Full-Count(2020年11月2日)
重要なのは、ここが“美談”というより、「卒業が必要な場面が後から効いてくる」という現実です。
山内は引退後に母校で指導者の道へ進みますが、こうしたキャリア設計では「学歴の形式」も案外バカにできません。
② 松家卓弘(東大→横浜→日本ハム):“入団時は留年中→卒業へ”
東京大学出身の松家卓弘は、入団時に留年中だったが、その後に卒業を決めた、と報じられています。
こちらはメディア記事で「入団時は留年中」「卒業を決めた時期」まで触れられているのがポイントです。
「入団時は留年中だったが、2005年9月に猛勉強で卒業を決めた」とするプロフィール記述があります。出典: 日刊スポーツ(2012年10月2日)
松家のように、学業の“締め”をつけられる人もいます。
ただし東大の場合は、卒業要件・学業負荷の性質がまた別格で、単純比較はできません。 それでも「プロ入り後に卒業を取りにいく」モデルケースとしては分かりやすい例です。
③ 常廣羽也斗(青学→広島):“ドラ1で在学が続くレアケース”
そして常廣は、「1単位不足→在学継続」という形で報じられ、球団コメントも付いたことで注目度が跳ね上がりました。
在学継続と球団コメントに関する報道の要旨が記載されています。出典: NEWSポストセブン公式X(2025年8月16日投稿)
「今年こそ卒業できるか?」を現実的に見る3つの論点
論点①:単位数そのものより「時期」と「手続き」
1単位が足りない、という話は分かりやすい一方で、実務的には「いつ受講できるか」「いつ評価が確定するか」「卒業判定のタイミング」などが絡みます。
春季キャンプ~開幕前後の時期は、投手にとって負荷が最大化するタイミング。ここに学業対応が乗ると、精神的にも削られやすい。
論点②:“卒業を取りにいく”は、投手ほど難度が上がる
野手と比べ、投手は登板間隔・調整ルーティンが繊細で、移動や試合前後の調整も長い。
山内のように「投げない日にレポートを進める」やり方もありますが、先発ローテ期はそれすら難しくなることがあります。
山内が「投げない日は空き時間にレポートをやっていた」という趣旨の記述があります。出典: Full-Count(2020年11月2日/記事内ページ)
論点③:卒業は“野球以外”のキャリアも守る保険
これは根性論ではなく、実利の話です。将来の指導者・解説・企業就職・大学との関係…いずれにしても「卒業している」ことが効いてくる場面があります。
だからこそ常廣が卒業にこだわる(または周囲がこだわらせる)のは、合理性があります。
結論:常廣は今年“卒業”できるのか?――鍵は「一軍の立ち位置」と“締め切り”
最終的には、常廣が2026年シーズンにどのポジションで投げるかが、卒業可否にも影響します。
一軍ローテで回り続けるほど、学業対応の“時間”は消えます。逆に言えば、登板機会が限定的な期間に学業を片付けられるなら、卒業の現実味は増す。
過去例を見ても、「プロ入り後に復学して卒業」は実際に起きています(山内)。また、入団時留年からの卒業もある(松家)。
常廣も不可能ではありません。ただし、投手としての競争と同時進行になる点が、難易度を上げています。
今年の常廣を見るうえでのチェックポイントはこの3つです。
- 登板間隔と役割:先発ローテ固定か、谷間か、リリーフか
- 学業の“締め切り”:受講・提出・評価確定のタイミング
- 球団・大学のサポート体制:手続きや履修面の支援があるか
「卒業=一軍定着」も、「卒業=単位取得」も、どちらも“締め”が必要です。
2026年、常廣がどちらの意味でも“卒業”できるのか。シーズンの見方が少し変わってくるはずです。


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