2025年11月26日、楽天が本拠地・楽天モバイルパーク宮城(旧・楽天生命パーク宮城)の 外野フェンス一部改修を発表しました。来季から外野にテラス席が新設され、 フェンスが最大6メートル前方に出てくるレイアウトになります。
これまで「本塁打が出にくい球場」の代表格だった楽天モバイルパークが、 どんな打者にとって「追い風」になるのか──公開されているパークファクターや 飛距離データ、過去のホームランテラス導入例も踏まえて考えてみます。
楽天モバイルパークのテラス新設とは? 改修ポイントを整理
外野フェンスを最大6メートル前進、左右非対称に
楽天の発表によると、来季から楽天モバイルパークの 「中堅、左翼ポール際、右翼ポール際のフェンスまでの距離は据え置き」のまま、 外野フェンスの一部を従来より最大6メートル前方に新設します。 レイアウトは左右非対称で、本塁からの距離は 左中間の方が右中間よりもやや短くなる形です。
中堅の表示距離自体は変わらないものの、 実際の守備位置から見ると「中間〜両翼寄りのゾーン」が 内側に食い込むイメージで、ウォーニングゾーンに落ちていた打球が そのままスタンドインしやすくなります。
新人の宗山塁も 「ホームランで点が入るのは、やっている選手たちも面白いし、 一番は見ている人たちが楽しい。今年より本塁打数は伸びると思う」 とコメントしており、チーム内でも「長打増」の期待はかなり高いと言えます。
もともと楽天モバイルパークは「本塁打PF0.87」の投高球場
データサイト「ヌルデータ置き場」などをもとにした分析では、 2024年シーズンの楽天モバイルパークは パークファクター(PF-本塁打)が およそ0.87前後と算出されています。 (1.00が「リーグ平均的な球場」としたとき、 それを大きく下回る値です)
- PF-ALL(得点全体):約0.98…全体としてやや投高
- PF-本塁打:0.87…本塁打が出にくい
- 同一リーグ球場平均比の本塁打PFも約0.85と顕著な低さ
つまりこれまでは、楽天打者にとって 「打ってもなかなかスタンドまで届かない」環境だったことが数字にも表れています。 そこに最大6メートルの前進が入るので、 球場の性格そのものが変わる可能性があります。
数メートル前に出ると打球はどう変わる?
ウォーニングゾーンのフライがそのままホームランに
中継などで見ていると、楽天モバイルパークでは 外野手がフェンス際まで下がってキャッチする「あとひと伸び」のフライが かなり多い印象があります。
一般的に、外野フェンス際の大飛球は おおよそ110〜115メートル前後と言われます。 今回の改修で最大6メートル前にフェンスが来ると、 これまで 「110mの大飛球 → フェンス手前アウト」 だったボールが、 「同じ110m → スタンドイン」 に化けるイメージです。
パワーはあるが「あと少し届かない」タイプの中距離打者にとっては、 平均飛距離がそのまま変わらなくても 結果として本塁打数だけが上乗せされる構図になります。
他球場のテラス導入では本塁打が“ほぼ倍増”した例も
楽天モバイルパークに限らず、 以前からホームランテラスを設けた球場では 本塁打数が大きく増えた例がいくつもあります。
- 楽天モバイルパークは、2013年に既存フェンスを一部前進させた際、 球場全体の本塁打数が 「68試合で38本 → 67試合で92本」と、 およそ2.4倍に増えたシーズンがありました。
- ソフトバンクのペイペイドーム、ロッテのZOZOマリンでも、 外野テラス設置翌年にホーム球場の本塁打数が 1.5〜2倍近く増えたシーズンが報告されています。
今回の楽天モバイルパークは「最大6メートル」と、 これまでの前進幅よりも思い切った改修です。 球場全体の本塁打数が大幅に増える可能性は十分あります。
平均飛距離と打球タイプから見る「得しそうな楽天打者」
NPBにはMLBのStatcastのような「全打球の飛距離」を公開する公式システムはなく、 平均飛距離も球団や一部の解析サイトが個別に持っているデータが中心です。 ここでは、公開されている本塁打の飛距離情報や 打撃成績・打球傾向から、 「どんなタイプの選手がテラスの恩恵を受けそうか」を整理してみます。
① ギリギリの一発が増えそうな中距離砲
まず恩恵が大きそうなのは、 110〜120m級の大飛球を量産する中距離〜準長距離砲です。 すでにスタンドインする打球も多い一方で、 フェンス手前で失速するフライも少なくない層と言えます。
- 浅村栄斗:2025年は打率.239、9本塁打と 「例年よりやや抑えられた」数字ながら、 過去には楽天モバイルパークで125m級の特大弾も記録している右の中距離砲。 110〜120mゾーンのフライがスタンドインに変わると、 二桁本塁打復活どころか20本台に戻る余地も見えてきます。
- 辰己涼介:2025年は.240、7本塁打。 2024年にはソフトバンク戦で116mの一発を放つなど、 「ギリギリ届く」タイプの打球が目立つ左打者です。 右翼〜右中間のテラス新設で、同じスイングでも プラス何本かの本塁打上積みが期待できます。
この層は「平均飛距離自体はそこそこあるが、 球場の広さに少し泣いていた」グループ。 テラス導入で、数字以上に打席での感覚も変わってくるはずです。
② ギャップヒッターの若手・中堅組
次に注目したいのが、 長打力はあるものの本塁打数自体は少ない ギャップヒッタータイプの選手たちです。 外野の頭を越えるツーベースが多い打者は、 フェンスが前に出ることで「2塁打→本塁打」が一定数生まれます。
- 村林一輝:2025年は打率.281で144安打、 本塁打は3本ながら51打点と勝負強さを発揮。 強いライナーを中堅〜両翼に打ち分けるタイプで、 テラスができれば「今までフェンス直撃だった当たり」が いくつかスタンドインしてもおかしくありません。
- 宗山塁:ルーキーイヤーの2025年は.260、3本塁打。 アマ時代から広角に長打を飛ばす打者として知られ、 実際にプロでも二塁打・三塁打が多いタイプです。 本人が「本塁打は増えると思う」と語ったように、 平均飛距離110m前後の打球が増えると、 テラスによって一気に二桁本塁打圏内に入ってくる可能性があります。
- 黒川史陽:2025年は.299、4本塁打ながら、 出塁率.372と高いコンタクト能力を見せた左打者。 引っ張り〜中堅方向への強い打球が多く、 左中間が短くなるレイアウトとの相性はかなり良さそうです。 「中距離打者から一段階ステップアップするきっかけ」 になり得る選手と言えます。
このあたりの選手は、 「平均飛距離はそこまで飛ばないが、 打球の質が良いギャップヒッター」という共通点があります。 フェンスが前進すれば、長打の内訳が 『2塁打多め』→『2塁打+本塁打バランス型』 へ変わっていく可能性があります。
③ すでに飛距離十分な長距離砲は“上乗せ”程度
一方、平均飛距離120m級の打球を量産するような 典型的な長距離砲にとっては、 テラスの効果は「絶大」ではなく 「プラスアルファ」程度になると考えられます。
- ボイト:2025年は打率.300で13本塁打と チームトップの本塁打数を記録した新外国人一塁手。 すでにスタンド中段〜上段へ運ぶ一発も多く、 フェンス前進の直接的な恩恵はそこまで大きくはありません。 それでも、やや差し込まれた打球など、 「あと数メートル足りなかった一発」が 年に数本は増えると見ていいでしょう。
- 小郷裕哉:2025年は不振で.173、2本塁打にとどまったものの、 2023年には20本塁打を放った左の大砲候補。 もともとのポテンシャルは十分で、 復調してくればテラス効果込みで再び二桁本塁打に乗せる可能性があります。
このカテゴリーの打者については、 「平均飛距離」自体がすでにフェンスを大きく越えているため、 テラスで一気に本塁打が倍増…というよりは、 +2〜3本の上乗せと考えるのが現実的です。
投手・チーム全体への影響は?
もちろん、本塁打PFが上がるということは 味方だけでなく相手打者の本塁打も増えることを意味します。 これまで楽天モバイルパークに救われていた 「フライボールピッチャー」にとっては逆風になるでしょう。
ただし楽天の投手陣は、もともとゴロ率が高めの投手や 三振で打者をねじ伏せるタイプも多く、 「フライ一辺倒」の投手ばかりではありません。 守備力や配球でカバーしつつ、 打線の長打力アップで総合的な得失点差をプラスにできるかどうかがポイントになります。
まとめ:楽天モバイルパークは“ hitters park 寄り ”に?
- これまで本塁打PF0.87前後と本塁打が出にくい球場だった楽天モバイルパーク
- 来季から外野フェンスの一部が最大6メートル前進し、左右非対称のテラス席が新設
- 110〜115mクラスの「ウォーニングゾーンフライ」が、そのまま本塁打になるケースが増える
- 浅村・辰己・フランコのような中距離砲、 村林・宗山・黒川らギャップヒッターはとくに恩恵大
- ボイトら純粋な長距離砲は上乗せ程度だが、年間数本のプラスは期待できる
かつて2013年のフェンス前進で本塁打数が一気に増えたように、 今回のテラス新設は楽天打線の顔ぶれや戦い方を 大きく変えていく可能性があります。 2026年シーズンの楽天モバイルパークが、 どれだけ「打てる球場」に変貌するのか── 打者の平均飛距離と本塁打数の推移に注目していきたいところです。


コメント