先頭打者四球はどれだけ失点につながるのか――データでの検証と懐かしい四球場面

野球

要点(GPT-5 Thinking調べ)

  • 先頭を四球で出す=「無死一塁」。このときその回に1点以上が入る確率はMLB基準で41.6%、平均失点(RE)は0.859点。四球でも単打でも「無死一塁」なので失点のなり方はほぼ同じです。[1]
  • NPBの得点期待値でも無死一塁=0.804点(2014–2018)。概ね「無死一塁は“4割前後で失点”」のレンジと考えられます。[2][3]
  • 「先頭四球は必ず点になる」「ヒットより四球のほうが失点しやすい」とまでは言えません。大規模研究は、四球と単打で“その回の得点分布”にほぼ差がないと結論しています。[4]
  • ただしバントで一死二塁にすると、得点確率・期待値は下がりやすい(例:41.6%→39.7%、0.859→0.664)。[1]

なぜ「先頭四球=失点しやすい」と感じるのか

中継で耳にする定説の多くは、実は“感覚”と“指標の定義”の混線に由来します。先頭四球は投手の制球難のシグナルで心理的な重みが大きい一方、データ上は「無死一塁」というベース/アウト状態そのものが回の失点確率を押し上げます。四球か単打かは、その後の回の推移に与える平均的影響がほぼ同じ、というのが実測値です。[1][4]

MLBの基準値(2010–2015)

状況(ベース/アウト)得点確率(1点以上)得点期待値(RE)
無死走者なし26.8%0.481
無死一塁41.6%0.859
一死二塁(=送りバント想定後)39.7%0.664
二死一塁12.7%0.224

出典:TangoTiger「Run Expectancy Matrix, 1950–2015」より2010–2015列。[1]

解釈:「無死走者なし→無死一塁」になるだけで、回の失点確率は約1.5倍(26.8%→41.6%)、平均失点も0.481→0.859へ大きく跳ね上がる。先頭を“出した”こと自体が痛い、というのがポイント。

「四球は本当に“特別に”危険か?」

  • 答え:いいえ。1974–2002年の6万試合超を解析したSABR研究は、先頭四球と先頭単打で、その回の点の入り方(0点/1点/2点…)がほぼ同じと報告。[4]
  • 混同に注意:「先頭四球の走者本人が生還する割合」はシーズンで22〜34%程度(例:2012年は22.33%)。これは回の得点確率(約42%)とは別指標です。[5]

NPBの基準値(2014–2018)

状況RE
無死走者なし0.450
無死一塁0.804
一死二塁0.674
満塁(無死)2.103

出典:慶應義塾大学・杉浦(2014–2018 NPB集計)。[2]

また、NPB向けの公開ダッシュボードでは、アウト・塁状況別の得点確率REを同時に確認できます(シーズンにより変動)。「無死一塁でおおむね4割前後」という肌感と整合的です。[3]

実務的な示唆(配球・作戦・指導)

  1. 「四球だから特別に点になりやすい」わけではない。先頭を出した瞬間に状況は無死一塁。四球でも単打でも、回としては約4割で失点ゾーンに入る。[1][4]
  2. 安易な送りバントは非推奨。MLB基準では41.6%→39.7%0.859→0.664得点確率・REとも低下(状況依存はあり)。[1]
  3. 指標の使い分けを徹底。「その回に点が入る確率」(得点確率)と「先頭四球の走者本人が生還する割合」は別物。議論や解説では指標名を明示して誤解を避ける。[1][5]

参考文献・データ出典

  1. TangoTiger, Run Expectancy Matrix, 1950–2015(2010–2015列:得点確率/RE/頻度)。URL: tangotiger.net/re24.html[1]
  2. 慶應義塾大学・杉浦 渉, 2014–2018 NPBのRE表(卒業論文PDF:無死一塁0.804ほか)。[2]
  3. プロ野球データパーク, アウト・塁状況別の得点期待値(得点確率併記)(最新シーズン随時更新)。[3]
  4. David W. Smith(SABR), Does Walking the Leadoff Batter Lead to Big Innings?(先頭四球と先頭単打の比較)。[4]
  5. MLB.com, The Leadoff Walk(「先頭四球の走者本人が生還」22–34%/2012年22.33%の例)。[5]

おまけ:四球の印象のある投手

通称「俺達」

椎野アナの伝説の実況:那須野投手

椎野アナの伝説の実況その2:高宮投手

いわゆる暗黒期横浜とライオンズの中継ぎがすごいことになっていた時代を思い出しました(笑)。

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