現役ドラフト活躍期待のリリーフ候補。指標最強クラスの巨人・菊地大稀を紹介

移籍

2025年シーズン、「指標だけ見たらリーグ屈指」と言っていい右腕が、巨人の菊地大稀投手です。
2023年には一軍で50試合登板、K/9(9回あたり奪三振)10超・FIP 2.52とセイバー的にはエリート級の数値を記録。 さらに2024年は二軍で防御率1.00・奪三振率11.25・K-BB%24.8%と、これはもはや「二軍ではやることない」レベルでした。

一方で、投手ゴロ処理などでの送球イップス(と言われるような症状)がたびたび話題になり、これが出場機会を制限してきた側面もあります。 ここでは、菊地大稀の経歴と成績、指標から見た強み、そして直近の送球問題までをまとめて整理していきます。

※2025年12月9日時点で、現役ドラフトにより巨人から日本ハムへの移籍が正式発表されていますが、本稿では主に「巨人時代の成績と指標」をベースに解説します。


プロフィールと経歴

  • 名前:菊地 大稀(きくち・たいき)
  • 生年月日:1999年6月2日(26歳)
  • 出身:新潟県佐渡市
  • 身長/体重:186cm/89kg
  • 投打:右投左打
  • 経歴:佐渡高 → 桐蔭横浜大 → 巨人(2021年育成ドラフト6位入団)→ 日本ハム(2025年現役ドラフト)

高校時代はドラフト指名がなく、「佐渡からプロへ」の夢を一度は断たれた存在。桐蔭横浜大で球速・安定感ともに向上し、2021年育成ドラフト6位で巨人入り。 離島甲子園ゆかりの村田兆治さんからフォークの指導を受けたエピソードでも知られ、「離島出身の星」として期待されてきました。


これまでの成績の流れ

2022年:支配下即デビュー、三振は取れるが粗い一年目

2022年はシーズン途中に支配下登録され、その日に一軍デビュー。最終的には16試合登板、防御率5.60と数字だけ見ると苦戦しましたが、17回2/3で21奪三振(K/9=約10.7)と三振を取る能力は既に片鱗あり。 一方で四球13と制球面の課題も見え、典型的な「荒削りなパワータイプ」というスタートでした。

ただし二軍では39試合、防御率2.20、44回2/3で66奪三振(K/9=13.3)とリーグ有数のドクターKぶりを発揮し、イースタン優秀選手賞も受賞しています。

2023年:50試合登板&“カーブ最強”指標を叩き出したブレイクイヤー

2023年は一軍で50試合登板、4勝4敗1セーブ11ホールド、防御率3.40、47回2/3。巨人リリーフ陣が崩れかける中で、中継ぎの柱の一人としてフル回転しました。 セイバー系サイトの集計では、

  • K/9:10.38
  • BB/9:3.02
  • WHIP:1.17
  • FIP:2.52(実際の防御率3.40より良好)

と、「三振が取れて、本塁打もあまり打たれないリリーフ」であることがはっきり数字に出ています。

さらにDELTA社の球種別指標では、カーブの価値を示す「wCB/C」が6.37で12球団トップ
「カーブ100球あたり6点以上失点を減らしている」というレベルで、NPB全体でも屈指のカーブ使いと評価されました。

2024年:一軍登板ゼロでも、二軍指標は“ほぼバグ”

2024年は一軍登板がゼロに終わった一方、イースタンでは36試合登板、6勝2敗1セーブ、防御率1.00。36イニングで45奪三振・9四球と、奪三振率11.25・K-BB%24.8%はリーグ2位という圧倒的な内容でした。 「球だけ見れば、すぐ一軍でセットアッパーを任せられるレベル」と評価する記事やファンの声も多く、自由契約→育成再契約になった際には「まだ全然いける」という反応が目立ちました。

2025年:育成→再支配下で一軍復帰、10回16奪三振

2025年は育成スタートから再び7月に支配下復帰。復帰後、一軍では7試合、10回、防御率1.80、16奪三振と、「さすがの奪三振マシン」という数字を残しました。 セイバー指標を見ると、

  • 被打率:.194
  • WHIP:1.10
  • FIP:2.12
  • K/9:14.4前後(10回で16奪三振)

と、サンプルは少ないながら「内容的には一軍の中でもトップクラス」と言える水準。 note記事では、10イニングで16奪三振・K-BB%29.3%と紹介されており、制球も含めてかなり状態が上がっていたことが分かります。


なぜ「指標最強クラスのリリーフ」なのか

① 奪三振能力がエリート級

2023年の一軍ではK/9=10.38、2024年二軍ではK/9=11.25、2025年一軍ではK/9=14.4と、
どのレベルでも「とにかく空振りが取れる投手」であり続けているのが最大の強みです。 これは150km前後のストレートに加え、打者のタイミングを外すカーブとスライダーのコンビネーションが機能しているからだと考えられます。

② FIPが常に防御率を上回る「DIPS型」

2023年のFIPは2.52で、防御率3.40よりもかなり良好。2025年もFIP2.12と優秀で、
守備や運の要素を取り除いた本来の投球内容は、見た目以上に良い」タイプです。 リリーフとしては、

  • 被本塁打が少ない
  • 四球は多すぎず、三振はかなり多い

というプロフィールなので、クローザー候補になり得るセイバー的プロファイルを持っています。

③ カーブの球種価値が12球団トップクラス

DELTAの球種別指標では、2023年のカーブが「wCB/C=6.37」で12球団トップ。 これは「カーブ100球投げるごとに平均6.37点ぶん失点を減らしている」という意味で、 同じサンプル条件の他投手(DeNA石川達也、ヤクルト石川雅規ら)を大きく上回る数字です。

ストレートだけでなく、緩いカーブでカウント・空振りの両方を取れるのは大きな武器。 「三振が欲しい場面」「球数を節約したい場面」のどちらにも対応できるため、勝ちパターンの7〜8回に最適な球種構成と言えます。


送球イップス問題と、今どこまで来ているのか

2022年に話題になった「投手ゴロ処理」の乱れ

菊地と聞いて多くのファンが思い出すのが、2022年の投手ゴロ処理での悪送球連発です。 一塁へのショートスローがワンバウンドしたり大きくそれたりする場面が続き、「イップスでは?」と話題になりました。

それ以降も、ネット上や解説記事では「送球イップス」「ショートスローに課題」といった表現が繰り返し使われています。 実際、2024年二軍での守備成績を見ると、投手として36試合で5刺殺・2失策・守備率.750と、 他の投手がほぼ失策ゼロで並ぶ中では少し目立つ数字になっています。

2024〜2025年:イップスとされる時期と、復調の兆し

2024年以降については、noteや解説記事で「送球イップスに見舞われていた時期がある」とされており、 その影響で一軍登板がなく、オフに自由契約 → 育成再契約という流れになったとされています。 2025年のシーズン前には、ショートスロー克服に向けフォームの工夫やサイドスロー気味の練習も取り組んでいる様子が動画等で紹介されています。

そのうえで、2025年に再支配下→一軍復帰を果たし、投球内容自体は1.80、防御率&K/9=14.4と文句なし。 マイナビニュースなどでも「2年ぶりの一軍復帰・好成績を残しつつも、課題改善のため再度ファームへ」という文脈で語られており、
「ボールの質は一軍クラス、あとは守備・メンタル面を安定させれば一気にブレイク」という評価に落ち着いています。

イップスは医療的には繊細なテーマですが、少なくとも数字上は、 「マウンド上での投球そのものには問題がなく、むしろ指標的にはエリート」であり、 課題が非常に限定的(主に投手ゴロ処理や牽制のショートスロー)であることが見えてきます。


現役ドラフトで評価されたポイントと今後の起用イメージ

2025年現役ドラフトでは、巨人から日本ハムへの移籍が決定。日本ハム側は公式リリースで、 「150キロ超の直球と多彩な変化球を持つリリーフ右腕」としてプロフィールを紹介しており、 その奪三振能力とポテンシャルを高く評価していることがうかがえます。

起用イメージとしては、

  • まずは7〜8回のセットアッパー候補
    ・K/9二桁+低FIPというプロファイルは、勝ちパターンにハマればかなり強力。
  • 将来的にはクローザー候補
    ・四球が劇的に減るタイプではないものの、カーブ含め「決め球」が複数あるため、
    球威と制球のバランスが整えば守護神候補になれるだけの素材。
  • 送球面のケアとセット運用
    ・走者一塁のケースなど、守備負担が大きい場面の使い方を工夫しつつ、 徐々に課題をならしていく運用が現実的。

現役ドラフトのテーマである「環境を変えることで眠っていた才能を開花させる」という点では、 菊地大稀はまさに「指標が先に覚醒しているタイプ」と言えます。 あとは、新天地でそれを結果とポジションに結びつけられるかどうか——という段階です。


まとめ:数字はすでに一流、あとは“投げる以外”を整えるだけ

  • 2023年には50試合登板・防御率3.40・K/9=10.38・FIP 2.52と、セ・リーグでもトップクラスの内容を記録。
  • DELTAの球種指標では、カーブのwCB/Cが12球団トップと評価されるなど、球種価値も非常に高い。
  • 2024年は一軍ゼロながら、二軍で防御率1.00・K-BB%24.8%とほぼ無双。
  • 2025年は再支配下後の一軍で10回16奪三振・防御率1.80・FIP2.12と、やはり内容はエリート級。
  • 一方で、投手ゴロ処理等の送球面で「イップス」と言われる課題を抱えてきたことも事実で、ここをどこまで解消できるかが今後の鍵。

球だけ見れば、「現役ドラフト組の中でもトップクラスの活躍候補」であることは数字が証明しています。 あとは、守備・メンタル面のケアと、新天地での起用法が噛み合うかどうか。 日本ハムに移った菊地大稀が、今度こそ「指標どおりの怪物リリーフ」として脚光を浴びるのか—— 2026年以降の投球に、かなり大きな期待をかけていい存在だと思います。


参考文献・出典

  • NPB公式「菊地 大稀 個人年度別成績」
  • ヌルデータ置き場「巨人 菊地大稀 投手成績(各種指標)」
  • Full-Count「救援防御率ワーストも…巨人に“希望の光” 育成出身24歳が12球団最強カーブ」ほか関連コラム
  • Full-Count「自由契約の巨人25歳は『まだ全然いける』…二軍で防御率1.00の右腕」
  • note「“佐渡の星”から“巨人の星”へ 読売ジャイアンツ・菊地大稀」
  • NPB公式・イースタン成績「2024年度 読売ジャイアンツ 個人投手/守備成績」
  • 読売ジャイアンツ公式サイト「菊地 大稀 選手プロフィール」
  • 北海道日本ハムファイターズ公式「現役ドラフトで松浦慶斗投手が移籍 菊地大稀投手を獲得」
  • パ・リーグ.com 「【現役ドラフト】新庄ハムが巨人から菊地大稀を獲得 23年50登板」
  • J:COMコラム「『離島甲子園』に尽力した村田兆治 巨人のホープ菊地大稀は佐渡島出身」

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