送りバントは「確実に1つ進める」ための選択だが、失敗の“その瞬間”がどれほど勝敗に響くかは直感どおりとは限らない。なんとなくNPBだと、嫌な流れを感じてしまうところですが、実際はどうなのでしょう。
本稿は、MLB 2024の全試合PBPを用い、失敗が起きた打席の直前点差が ±1 の“接戦”に限定して、勝率への影響を検証する。はじめに限界点として語っておくが、MLB自体がバントの文化がそも少ないのでサンプル数の限界はある前提は理解してほしい(MLBのデータは無料ですy得できたので(´;ω;`))。
要約(ひと目で)
- 対象:MLB 2024 の全試合(チーム×試合単位)
- 定義:
- 送りバント失敗=バント企図かつ犠打ではないプレーでアウト確定
- 接戦=失敗が発生した打席の直前点差が ±1
- 主結果:
- 接戦で失敗≥1の敗戦率=【接戦失敗・敗戦率】(参考:終局±1近似 0.5333)
- 接戦だが失敗なしの敗戦率=【接戦無失敗・敗戦率】(参考:0.4996)
- 終盤(7回以降)×接戦で初回失敗の敗戦率=【接戦・終盤失敗・敗戦率】(参考:0.4444)
- ~6回×接戦で初回失敗の敗戦率=【接戦・~6回失敗・敗戦率】(参考:0.6667)
データと方法(正確版)
- データ:MLB Stats API(キー不要)。
/schedule
でgamePk
を取得し、/api/v1.1/game/{gamePk}/feed/live
のallPlays
を使用。 - ユニット:チーム×試合(1試合=ホーム/ビジターで2件)。
- 送りバント失敗の判定:
eventType
/description
に bunt 系が出現(企図)- 犠打(Sacrifice Bunt)ではない
- アウトが発生(ポップ、ゴロ、ダブルプレー、三振のbuntなど)
- 接戦の判定:
result.homeScore
/result.awayScore
から打席前スコアを復元し、初めて失敗が起きた打席の|打席前点差| ≤ 1
を満たす試合のみを「接戦の失敗」と定義。 - 主要指標:(1)接戦で失敗≥1の敗戦率、(2)接戦だが失敗なしの敗戦率、(3)初回失敗イニング(7回以降/~6回)で層別。
結果(接戦限定)
指標 | 値(差し替え) | 参考:終局±1 近似 |
---|---|---|
対象(チーム×試合) | 【総件数】 | 4,858 |
接戦で失敗≥1(件数 / 敗戦率) | 【接戦失敗・件数】 / 【接戦失敗・敗戦率】 | 15 / 0.5333 |
接戦だが失敗なし(件数 / 敗戦率) | 【接戦無失敗・件数】 / 【接戦無失敗・敗戦率】 | 1,335 / 0.4996 |
終盤(7回以降)×接戦:初回失敗(件数 / 敗戦率) | 【接戦・終盤失敗・件数】 / 【接戦・終盤失敗・敗戦率】 | 9 / 0.4444 |
~6回×接戦:初回失敗(件数 / 敗戦率) | 【接戦・~6回失敗・件数】 / 【接戦・~6回失敗・敗戦率】 | 6 / 0.6667 |
注:MLBでは送りバント自体が少なく、「失敗≥1」を記録する試合は極めて希少です。したがって、推定値には不確実性が残ります。
解釈と限界
- MLBではバント自体が稀
- 2024年は「送りバント失敗≥1の試合」が**全体の約0.4%**しか出ていません。つまり“失敗の効果”を平均的なゲーム結果にまで響かせるほどの頻度ではない——というのがまず前提です。
- 全体では“失敗=明確な敗因”とは言い切れない
- 全体の敗戦率0.500に対し、失敗≥1の側は0.450(むしろわずかに低い)。集計の粗い粒度では「失敗が出たから負ける」とは読み取りにくい構図です(失敗自体が稀で、他の要因に埋もれる)。
- 同じ“接戦”の土俵で比べると弱い上振れ
- 近似の接戦(終局±1)では、失敗≥1の敗戦率が0.533、失敗なしが0.500前後。差は小さいものの、「接戦での失敗はやや不利に傾く可能性」は示唆されます。
- ただし件数が15試合と極小で、偶然の揺らぎを強く受けます。
- タイミングの示唆:序盤失敗>終盤失敗
- 接戦×初回失敗イニングの近似では、~6回の失敗で敗戦率が高め(約0.67)、7回以降の失敗は低め(約0.44)。
- 直感に反するようで、実務的には「序盤のバントは“点を確実に”のためにやる=失敗時は機会損失が長く尾を引く」「終盤はバント選択がより限定的(走者質・打順・相手投手)で、その分“失敗しても致命傷になりにくい局面が混ざる」などの選択バイアスが考えられます(サンプル極小なので断言不可)。
- 定義と状況の“薄まり”が差を小さく見せる
- 「失敗」はポップ、ゴロ、併殺、三振バントなど質の異なる失敗が混在。さらに走者・アウトカウント・打順の差も未固定。コストの重い失敗(例:無死一塁の併殺)と軽い失敗(例:二死走者なしの試み)が平均化され、効果が薄まって見えます。
- 戦術文化の違い(DH制・得点環境)
- MLBはユニバーサルDHと高い長打環境で、バントの期待値が低くなりがち。結果として試み自体が少なく、失敗も観測しづらいため、ゲームレベルの差としては表れにくい、という構造的事情があります。
本稿の集計は機械判定(bunt系イベント+アウト確定)に基づいており、記述揺れ等による誤判定の可能性があります。必要に応じて検算・修正を随時反映します。
そもそも送りバントここまでMLBで少ないのは何となくわかってはいましたが、ここまですくないとは。。。NPBとの文化がそもそも違いますね。もしくは過去にはあったが、流れを悪くするから廃れたとか。いろいろ考えられます。NPBのデータでも見てみたいものです。
コメント