2025年シーズン終了後に行われた「現役ドラフト」。4年目を迎えた今年も、出場機会に恵まれていない選手たちに新天地でのチャンスが与えられました。
今年は12球団が1巡目で1人ずつを指名し、計12選手が移籍。第2巡目は実施されず、1巡目のみで終了となりました。
2025年現役ドラフト・1巡目の全体像
まずは今回の指名結果を、獲得球団ごとに整理しておきます。
- 読売ジャイアンツ:松浦 慶斗(投手/北海道日本ハム → 巨人)
- 東京ヤクルトスワローズ:大道 温貴(投手/広島 → ヤクルト)
- 横浜DeNAベイスターズ:濱 将乃介(外野手/中日 → DeNA)
- 中日ドラゴンズ:知野 直人(内野手/DeNA → 中日)
- 阪神タイガース:濱田 太貴(外野手/ヤクルト → 阪神)
- 広島東洋カープ:辰見 鴻之介(内野手/楽天 → 広島)
- 北海道日本ハムファイターズ:菊地 大稀(投手/巨人 → 日本ハム)
- 東北楽天ゴールデンイーグルス:佐藤 直樹(外野手/ソフトバンク → 楽天)
- 埼玉西武ライオンズ:茶野 篤政(外野手/オリックス → 西武)
- 千葉ロッテマリーンズ:井上 広大(外野手/阪神 → ロッテ)
- オリックス・バファローズ:平沼 翔太(外野手/西武 → オリックス)
- 福岡ソフトバンクホークス:中村 稔弥(投手/ロッテ → ソフトバンク)
ここからは、各選手のこれまでの成績(2025年シーズン終了時点)と、新天地で期待される役割を1人ずつ見ていきます。
セ・リーグ球団の指名選手
読売ジャイアンツ:松浦 慶斗(投手/北海道日本ハム → 巨人)
長身左腕の松浦は、大阪桐蔭高出身のプロ4年目投手。日本ハムでは一軍登板が2022年と2024年にとどまり、通算6試合登板・0勝1敗、防御率5点台と数字の面ではこれからという段階です。2024年は5試合・4イニングで防御率2.25と、短いイニングながら安定した投球も見せました。
巨人としては、貴重な左のパワーピッチャー候補として、まずは中継ぎでの戦力化を狙いたいところ。育成色の強い指名でありつつも、球団の投手育成力次第ではブレイク候補になり得る素材型の移籍と言えます。
東京ヤクルトスワローズ:大道 温貴(投手/広島 → ヤクルト)
大道は2021年に24試合登板・4勝4敗・防御率4.75、2023年には50試合近くに登板し、3勝1敗10ホールド・防御率2点台とリリーフで結果を残した右腕です。近年は故障や不調もあって登板機会が減り、2025年はわずか1試合にとどまりました。
中継ぎ再建が急務のヤクルトにとって、実績のあるブルペン投手の獲得はニーズに合致。コンディションさえ戻れば、7回前後のビハインド/接戦で起用できる「便利屋リリーフ」として、投手陣の底上げが期待されます。
横浜DeNAベイスターズ:濱 将乃介(外野手/中日 → DeNA)
独立リーグ経由でプロ入りした右投げ左打ちの外野手。2025年に一軍デビューし、5試合出場で打率.250(4打数1安打)とまだサンプルは少ないものの、コンタクト力と脚力が武器の選手です。
DeNAは外野のレギュラー争いが激しい一方で、左打ちの控え層にやや薄さもありました。左の代打や守備・代走要員としてベンチに置きつつ、打撃が伸びればスタメン争いに絡んでいく可能性もあります。
中日ドラゴンズ:知野 直人(内野手/DeNA → 中日)
知野は一軍通算123試合に出場し、2023年には39試合で2本塁打を記録するなど、長打も持っている右の内野手です。打率は通算.161と数字こそ高くありませんが、二塁・三塁・遊撃をこなせるユーティリティ性が魅力。
内野の層を厚くしたい中日にとって、複数ポジションを守れる右打者の加入は大きいポイント。代打や守備固めからスタートしつつ、打撃がハマればレギュラー争いに食い込んでくるタイプの選手と言えます。
阪神タイガース:濱田 太貴(外野手/ヤクルト → 阪神)
濱田は通算18本塁打を放っている右の長距離砲タイプの外野手。2023年には103試合出場で打率.234、5本塁打、22打点とレギュラーに近い形で起用されましたが、2024年はわずか10試合、2025年も打率.221(34試合)と、ここ2年は伸び悩んでいました。
右の大砲候補が少ない阪神にとっては、ハマれば大きなリターンが見込める補強。甲子園という本拠地を考えると一発狙いだけでなく、右中間方向への長打を増やせるかが鍵になりそうです。
広島東洋カープ:辰見 鴻之介(内野手/楽天 → 広島)
辰見は育成出身の内野手で、一軍経験は2024年の2試合のみ。打席数も3と、ごく限られた出場にとどまっていますが、大学時代から守備力と走塁を評価されてきたタイプです。
広島は内野の世代交代を進めたいタイミングでもあり、守備固めや代走から一軍に食い込んでいくシナリオが現実的。まずはファームで打撃を磨きながら、カープらしい「守り勝つ野球」にどう貢献できるかが注目ポイントです。
パ・リーグ球団の指名選手
北海道日本ハムファイターズ:菊地 大稀(投手/巨人 → 日本ハム)
巨人で育成から支配下を勝ち取った菊地は、2023年に50試合登板・4勝4敗1セーブ11ホールド、防御率3.40とフル回転したリリーフ右腕。2025年も7試合で1勝1敗1ホールド、防御率1.80と結果を残しており、即戦力級の中継ぎです。
若い投手陣が多い日本ハムにとって、経験値のあるブルペン投手の加入は心強いところ。勝ちパターンの一角を争う存在として、終盤のリード時にマウンドを託したいピースになります。
東北楽天ゴールデンイーグルス:佐藤 直樹(外野手/ソフトバンク → 楽天)
佐藤は俊足・強肩の外野手で、2025年には自己最多となる104試合に出場し、打率.239、5本塁打、18打点、10盗塁と攻守に存在感を示しました。年々打席数を伸ばし、四球も増えてきており、ようやく一軍で役割を掴みつつある段階の移籍です。
楽天は外野の守備力と機動力アップが課題の一つ。センターを守れる守備力と走力を活かし、「8番センター」「守備固め&代走」といった形での起用がイメージしやすい補強です。
埼玉西武ライオンズ:茶野 篤政(外野手/オリックス → 西武)
茶野は2023年に91試合出場・打率.237、23打点、7盗塁と、オリックスで主に一番・二番を打った外野手。2024年も16試合で打率.269と、コンタクト力と出塁力を武器にしてきました。
西武はリードオフマン候補が固定できていないシーズンが続いており、茶野のような「つなぎ型リードオフ」はまさに補強ポイント。外野のレギュラー争いに即座に加わる存在となりそうです。
千葉ロッテマリーンズ:井上 広大(外野手/阪神 → ロッテ)
高校時代からスラッガーとして注目されてきた井上は、通算3本塁打ながら長打率.340と、一発の魅力を秘めた右の大砲候補。2024年は23試合で打率.212、3本塁打・8打点と、限られた打席数の中でも長打を見せました。
長打力不足を指摘されることの多いロッテ打線にとって、右の大砲候補の加入は非常に大きいポイント。まずはDHやレフトでの起用が想定され、ゾーン管理がハマれば一気にクリーンアップ候補へと伸びていく可能性があります。
オリックス・バファローズ:平沼 翔太(外野手/西武 → オリックス)
平沼は日本ハム時代から内外野を守れるユーティリティとして重宝されてきた左打者。2024年の西武では45試合に出場し、打率.265、9二塁打と、下位打線で粘りのある打撃を見せました。2025年も60試合に出場しており、通算打率は.233とまずまずの数字です。
内外野をまたいで起用できる器用さは、ケガ人が出やすい長いシーズンで大きな価値を持ちます。オリックスでは主に内野のバックアップと左の代打要員として、ベンチワークの幅を広げる存在になりそうです。
福岡ソフトバンクホークス:中村 稔弥(投手/ロッテ → ソフトバンク)
中村はロッテで先発・中継ぎの両方を経験してきた左腕で、通算99試合登板・7勝9敗、防御率4.03の成績。2023年には17試合登板で防御率2.31と好成績を残し、2025年も15試合・防御率3.15と安定した数字をマークしています。
ソフトバンクは左の中継ぎが手薄になりがちな傾向があり、マッチアップ要員としての役割が見込まれます。先発経験もあるため、ロングリリーフやスポット先発など、フレキシブルに使えるピースとして重宝されるでしょう。
現役ドラフト2025の総括:役割が明確な補強が目立つ一年
今回の現役ドラフトを俯瞰すると、「即戦力リリーフ」と「外野の層の厚み」を意識した指名が目立ちました。菊地や大道、中村のようなリリーフ投手は、いずれも一軍実績があり、移籍先でもすぐにブルペンを支えられる戦力です。
野手では、茶野・佐藤・平沼のような走攻守バランス型と、井上・濱田のような長打型がそれぞれニーズに合わせて動いた印象。出場機会を求める選手と、ポジションごとの穴を埋めたい球団の思惑が、今年も上手くマッチしたドラフトだったと言えるでしょう。
現役ドラフトの真価が問われるのは、ここからの数年でどれだけ「新天地でブレイクした選手」が生まれるか。今回移籍した12選手が、2026年以降にどのようなキャリアを歩んでいくのか、引き続き注目していきたいところです。



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