2016年7月8日の“161球”登板(対・広島)を境目に、四球(BB)とデッドボール(HBP)がどう推移したかを、2016年内の「前後」と2017年以降で整理しました。年次データはNPB公式/MLBの公表値を基に、レート指標(BB/9、HBP/9)で比較しています。(基準試合の概要はMLB.comの選手ページに明記:“2016年7月8日、広島戦で161球、8失点、与四球5、奪三振13”)。最近では藤浪投手のコントロールについて語られることが多いですが、管理人の私見としてはやはりこの161球のいわゆる晒し投げが気になってしまったので調べてみました。
結論(要点)
・2016年内は、BB/9 3.62 → 3.88、HBP/9 0.41 → 0.44と小幅な上振れに留まり、恒常的悪化の決定的な跳ね上がりは観測しにくい。
・むしろ翌年以降(2017・2018・2021)にBB/9が6–7台へ上昇するコマンドの波が生じ、2022で再改善。
・MLB 2023はBB/9 5.13、HBP/9 0.80で「空振りは取れるが四球も出る」型。
① 2016年内:「あの日」前後の近似比較(3–6月 vs 7–9月)
月別集計(NPF非公式の集計サイトだがNPB公式と整合)から、3–6月と7–9月で分割。投球回をNPB表記(.1=1/3、.2=2/3)としてレート換算しています。
期間 | 投球回 | BB | HBP | BB/9 | HBP/9 |
---|---|---|---|---|---|
3–6月(基準試合より前) | 87回1/3 | 35 | 4 | 3.62 | 0.41 |
7–9月(基準試合の後) | 81回2/3 | 35 | 4 | 3.88 | 0.44 |
出典:月別ライン(3–6月=35BB/4HBP、7–9月=35BB/4HBP)。
※基準試合:2016/7/8 広島戦(161球、8失点、与四球5)。
解釈:2016年内に限れば、前後で大勢は横ばい。7–9月はわずかにBB/9が高いが、恒常的悪化と断じるほどの差ではない。むしろ2016年は通年でもBB/9=3.73、HBP/9=0.43のレンジに収まる。
② 2017–2022(NPB)+ 2023(MLB):以降の「四球・死球」推移
年度別の四球・死球・投球回からBB/9、HBP/9を算出。NPBの投球回は1/3回刻み(.1, .2)を換算しています。
年 | リーグ | 投球回 | BB | HBP | BB/9 | HBP/9 |
---|---|---|---|---|---|---|
2016 | NPB | 169.0 | 70 | 8 | 3.73 | 0.43 |
2017 | NPB | 59.0 | 45 | 8 | 6.86 | 1.22 |
2018 | NPB | 71.0 | 47 | 4 | 5.96 | 0.51 |
2019 | NPB | 4回1/3 | 6 | 2 | 12.46 | 4.15 |
2020 | NPB | 76回1/3 | 40 | 2 | 4.72 | 0.24 |
2021 | NPB | 48回1/3 | 40 | 4 | 7.45 | 0.74 |
2022 | NPB | 66回2/3 | 21 | 3 | 2.83 | 0.40 |
2023 | MLB | 79.0 | 45 | 7 | 5.13 | 0.80 |
NPB年次=NPB公式の年度別表より。MLB 2023=合算(OAK+BAL)。
読みどころ:2017・2018・2021でBB/9が6–7台へ上昇=コマンドの波が大きい時期。2022はBB/9が2.83まで改善。MLB 2023はBB/9 5.13/HBP/9 0.80で、空振りを取りつつも与四球・与死球が一定残る構図。
③ どう解釈するか
- “161球の夜”直後に恒常悪化した、という単純因果は裏付けに乏しい。2016年内は前後で概ね横ばい。
- ただし翌年以降にBB/9高騰の局面(2017・2018・2021)が現れ、2022で再改善。起用法、球種配分、メカニクス、捕手・配球、対戦環境など複合要因で説明するのが妥当。
- MLB 2023は平均98mph級の速球+分離の大きいスプリット/カッターという球威寄りの武器に対し、リリースのブレ→アームサイドに抜けるリスクからBB/HBPが残る——という“プロファイル”の問題が示唆される(Statcastの球種構成参照)。
編集メモ:本文では上の表を要約し、「2016年内は横ばい、’17–’21に山、’22で谷(改善)、’23MLBはBB/HBPが再び高め」という折れ線の起伏を言葉で描写すると読みやすいです。
出典・参照
- NPB公式「個人年度別成績(藤浪 晋太郎)」:年別の四球・死球・投球回(2013–2025掲載)。
※本文の年次表はこの行から算出。
URL省略(NPB公式):“2016:BB 70/HBP 8/169.0回、2017:BB 45/HBP 8/59.0回 … 2022:BB 21/HBP 3/66回2/3”(ページ下部の投手成績表)。 :contentReference[oaicite:0]{index=0} - 2016年の月別集計(四球・死球を月別に記載):3–6月=35BB/4HBP、7–9月=35BB/4HBP(投球回:87回1/3と81回2/3)。本文の前後比較に使用。 :contentReference[oaicite:1]{index=1}
- MLB.com 選手ページ(Bio欄):“2016/7/8 広島戦で161球、8失点、与四球5、奪三振13”の記述。本文の基準試合の説明に使用。 :contentReference[oaicite:2]{index=2}
- FanGraphs Game Log(合算トータル行):2023 合計 79.0回/BB 45/HBP 7/ERA 7.18。本文のMLB 2023行に使用。 :contentReference[oaicite:3]{index=3}
- Baseball Savant(Statcast):球種構成(FF・SPL・CT等の比率)に関する補足。本文③の解釈に言及。 :contentReference[oaicite:4]{index=4}
注)NPBの投球回は.1=1/3、.2=2/3を意味します。BB/9・HBP/9はこの換算で算出しました。
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