2019年、ナショナルズの世界一の立役者となった三塁手アンソニー・レンドン。
そのオフにエンゼルスと結んだ7年総額2億4500万ドルの契約は、当時のMLBでもトップクラスの大型ディールでした。
しかし加入後はケガ続きで出場試合は激減。2025年シーズンは左股関節の手術で全休となり、2026年の契約最終年を前にバイアウト(契約買い取り)と引退が見込まれる状況になっています。
この記事では、レンドンのこれまでの経歴とスタッツ、そして「成功と失敗」の両面から、この巨大契約を振り返ってみます。
アンソニー・レンドンのプロフィール
- 名前:アンソニー・マイケル・レンドン(Anthony Michael Rendon)
- 生年月日:1990年6月6日(35歳)
- 出身地:アメリカ・テキサス州ヒューストン
- 投打:右投右打
- ポジション:三塁手
- 身長・体重:185cm前後/約91kg
- ドラフト:2011年ドラフト1巡目(全体6位)でワシントン・ナショナルズから指名
- MLBデビュー:2013年4月21日 ナショナルズ
ライス大学時代から打撃・守備ともに評価の高い三塁手で、2010年には全米大学最優秀選手賞であるディック・ハウザー賞を受賞した超エリートです。
ナショナルズ時代:攻守に優れた「トータルプレーヤー」
デビュー〜ブレイク
2013年にデビューすると、二塁・三塁を守りながら打線の中軸に定着。
2014年には153試合に出場し、打率.287、21本塁打、83打点を記録。39二塁打・6三塁打を放ち、 シルバースラッガー賞(三塁手部門)、MVP投票5位と一気にスターの仲間入りを果たしました。
ケガからの復活と全盛期
2015年はケガで出遅れましたが、2016年に復活してナ・リーグのカムバック賞を受賞。
2017〜2019年にかけては、3年連続でOPS.900前後を記録し、 「打率3割・出塁率4割近く・長打力もある三塁手」という、リーグ屈指のトータルプレーヤーとなりました。
2019年:世界一の主役級シーズン
レンドンのキャリアで頂点だったのが2019年です。
- 試合:146
- 打率:.319
- 本塁打:34本
- 打点:126(メジャー全体1位)
- 二塁打:44(2年連続リーグトップ)
- OPS:1.010
- fWAR/bWARともにリーグトップ級
ポストシーズンでも大一番で結果を出し、ドジャースとの地区シリーズ、アストロズとのワールドシリーズで 何度も同点・勝ち越し弾を放つなど、ナショナルズ初の世界一のキーマンとなりました。
この時点での通算成績は打率.290前後、OPS.850超、守備指標も高く、三塁手としてはMLBトップクラスの評価でした。
エンゼルスとの7年2億4500万ドル契約の内容
契約の概要
- 契約期間:7年(2020〜2026年)
- 総額:2億4500万ドル
- 平均年俸:3500万ドル
- サインボーナス:400万ドル
- 保証:全額保証
- オプトアウト:なし
- トレード条項:フル・ノートレード条項(本人の同意なくトレード不可)
当時のMLBでは、年平均3500万ドル級の野手契約はマイク・トラウトらごく一部のみで、 レンドンは三塁手として史上最高クラスの年俸水準に達していました。
また、スポーツ全体の長期契約ランキングでも上位に入るほどの巨額ディールで、 エンゼルスにとっては「トラウトの横にもう一人のMVP級打者を置く」勝負の一手でした。
年俸のイメージ
正確な年ごとの金額は多少前後しますが、概ね 「契約前半が年3000万ドル台前半、終盤の2025〜26年は3800万ドル前後」という構成です。
2026年の年俸は約3800万ドルとされ、三塁手としてMLB最高額クラスの年俸になる予定でした。
エンゼルス時代のスタッツ:輝いたのは2020年だけ
2020年:コロナ短縮シーズンで“さすが”の活躍
加入1年目の2020年は新型コロナで60試合制の短縮シーズンでしたが、 レンドンは52試合に出場し、
- 打率:.286
- 本塁打:9本
- 打点:31
- 出塁率:.418
- OPS:.915
と、期待に応える成績を残しました。
この年だけを見ると、「ナショナルズ時代のスターがそのままエンゼルスにやって来た」ような印象で、 契約への不安はほとんどありませんでした。
2021〜2024年:ケガの連鎖と出場試合数の激減
しかし2021年以降は、右股関節、手首、すね、ハムストリング、腹斜筋、背中など、 まさに全身ボロボロと言えるレベルで故障が続発します。
エンゼルス移籍後(2020〜2024年)の通算は次の通りです。
| 年 | 試合 | 打率 | 本塁打 | 打点 | OPS |
|---|---|---|---|---|---|
| 2020 | 52 | .286 | 9 | 31 | .915 |
| 2021 | 58 | .240 | 6 | 34 | .712 |
| 2022 | 47 | .229 | 5 | 24 | .706 |
| 2023 | 43 | .236 | 2 | 22 | .678 |
| 2024 | 57 | .218 | 0 | 14 | .574 |
5シーズン合計でも 257試合出場(本来なら約810試合分の期間)と、3分の1程度しか出場できませんでした。
エンゼルスでの通算成績は 「打率.242/22本塁打/125打点/OPS.717前後」とされており、 移籍前のイメージからするとかなり物足りない数字にとどまっています。
2025年:左股関節手術でシーズン全休
2025年2月、キャンプ前に左股関節の手術を受けることが発表され、2025年シーズンは全休となりました。
エンゼルスGMも「復帰時期は未定」と語り、現役復帰そのものが不透明な状況に。代わりにチームはヨアン・モンカダを獲得し、三塁のレギュラー問題に備える形になりました。
キャリア通算スタッツ:ナショナルズ時代だけを見ると一流の三塁手
2024シーズン終了時点でのMLB通算成績は以下の通りです。
- 試合:1410試合前後
- 打率:.280
- 本塁打:158本
- 打点:671
- 通算OPS:.828〜.829
- 通算WAR:34前後(Baseball-Reference基準)
ナショナルズ時代(2013〜2019年)だけに限れば、 「攻守でオールスター級」「MVP級のピークを持つサード」と評価して良いスタッツです。
実際、2017〜2019年の4シーズンで22.9WARを稼ぎ、 当時のMLBでもトップクラスの野手の一人と見なされていました。
一方、エンゼルス移籍後の5シーズンでは約3.9WARにとどまり、 キャリア全体の価値の大部分はナショナルズ時代に稼いだものと言えます。
巨額契約はなぜ「失敗」と言われるのか?
① 出場試合の少なさとコストパフォーマンス
7年245Mドルのうち、2020〜2024年の5年で支払われた金額は200Mドル超と言われますが、 その間の出場はわずか257試合。
1シーズン換算で51試合程度であり、 「試合数あたりの年俸」で見るとMLB史上でも突出した高コストになってしまいました。
さらに2025年は年俸を受け取りながら1試合も出場しておらず、 メディアからは「史上最悪クラスのFA契約」と辛辣に評されています。
② 成績の落ち込みと“本職サード”の確保に失敗
トラウトとレンドンを軸に打線を組み立てる構想だったエンゼルスですが、 実際にはレンドン不在の年が続き、三塁には控え級や外様の選手を次々と起用せざるを得ませんでした。
チームとしてもポストシーズン進出は叶わず、 「大型契約で戦力の柱を取ったはずが、むしろ編成を硬直させてしまった」という見方が強い状況です。
③ レンドン本人の“熱量の低さ”も話題に
近年のインタビューでは、レンドン自身が 「ベースボールはあくまで仕事で、信仰と家族が優先」「シーズンは長すぎる」などとコメントし、 引退をほのめかす発言もしてきました。
ケガだけでなく、メンタル面でも“野球への情熱が薄れているのではないか”と指摘されることが多く、 ファンとの関係も悪化していました。
現在:バイアウトと引退へ向かうキャリアの終着点
2025年11月現在、エンゼルスとレンドンは2026年の最終年(約3800万ドル)を買い取るバイアウト交渉を行っていると報じられています。
報道各社によれば、一定額を分割・繰り延べする形で支払う代わりに、 レンドンはそのまま引退する見込みとされています。
契約全体だけを見れば、球団側の「大失敗」と評されても仕方のない結果です。
しかしナショナルズ時代のレンドンが、一流の三塁手としてリーグを代表するプレーヤーだったのも事実。 2019年の世界一と、その年の圧倒的なシーズンは、今後も多くのファンの記憶に残り続けるでしょう。
まとめ:ピークは短くても、頂点はまぎれもなく“本物”だった
- レンドンはライス大学時代から超エリートと言われ、ナショナルズでは攻守に優れた三塁手として2010年代後半の中心選手だった。
- 2019年には打率.319・34本塁打・126打点で世界一に貢献し、その実力が2億4500万ドル契約につながった。
- エンゼルス移籍後はケガに苦しみ、5年間で257試合・OPS.7割前後と低調。契約額とのギャップから「史上最悪クラスの契約」と批判されている。
- 2025年の股関節手術でシーズン全休となり、2026年の最終年を前にバイアウト交渉中。合意すればそのまま引退する見込み。
- それでもキャリア通算では打率.280、通算WAR30台半ばと、ピーク時はMVP級の実力を持った三塁手だった。
巨額契約が裏目に出たエンゼルス時代ばかりが注目されがちですが、 「2010年代ナ・リーグを代表する三塁手の一人」であったことも忘れてはいけません。
もし今後正式に引退が発表されれば、ナショナルズ・ファンにとっては、 2019年のあの“神がかった1年”を改めて思い出す機会になるはずです。
参考文献・出典
- MLB.com「Angels agree to seven-year deal with Anthony Rendon」 (2019年12月16日) – エンゼルスとの7年2億4500万ドル契約の公表内容 (契約総額・期間・ノートレード条項など)。 リンク
- ESPN「Anthony Rendon agrees to 7-year, $245M deal with Angels」 (2019年12月11日) – 契約詳細(フル・ノートレード権、オプトアウトなし等)の確認に使用。 リンク
- Baseball-Reference「Anthony Rendon Stats」 – 通算打撃成績、WAR、ナショナルズ/エンゼルス別の成績確認に使用。 リンク
- StatMuse「Anthony Rendon 2019」 – 2019年シーズンの打率.319、34本塁打、126打点、OPS1.010などの詳細スタッツ確認に使用。 リンク
- MLB.com「Rendon to undergo left hip surgery in latest setback」 (2025年2月12日) – 左股関節手術と2025年シーズン全休見込みについて。 リンク
- ESPN「Source: Angels in talks to buy out final year of Anthony Rendon deal」 (2025年11月) – 2026年最終年のバイアウト交渉と、合意後に引退が見込まれているという報道。 リンク



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