やばい変化球列伝⑤:小宮山悟の「シェイク」を振り返る──千葉マリンが生み出した“魔球”とは

変化球

魔球は、投手の手だけで完成しない。
小宮山悟がロッテ復帰後に生み出した“超低速・不規則変化”のオリジナル球種「シェイク」は、その代表例だ。
球速はおよそ80km/h前後。にもかかわらず、強風が吹き荒れる千葉マリン(現ZOZOマリン)では、打者のタイミングと視覚を一気に破壊する「現地限定のやばさ」を発揮した。

本稿は「シェイクとは何か」「なぜ千葉マリンで魔球になったのか」を、成績(NPB公式)球場の風の一次データ(研究)を軸に整理する。


結論:シェイクは“球場が完成させた”変化球

  • 球:超低速(約80km/h)+回転の少ない“揺れ”系
  • 人:緩急・投球術で勝つ小宮山が、衰えを補うために開発
  • 場所:千葉マリン特有の強風+球場構造が、揺れを増幅

シェイクとは?数字でつかむ「遅いのに効く」球

「80km/h台の魔球」:超低速で、ナックルのように揺れる

報道ベースでは、シェイクは球速80km/h前後で、風の影響も受けながら大きく揺れる球として語られている。
遅さそのものが武器で、打者は「待てない」。さらに揺れが乗ると「当てられない」。

遅球の強み(MLBの“遅球理論”と同じ構造)

  • “速球に合わせる”ほど、80km/h台はタイミングが崩れる
  • 打球が弱くなりやすい(当てても前に飛びにくい)
  • 揺れが乗れば、芯に当たる確率がさらに下がる

2005年の小宮山:シェイク誕生期の「役割」とスタッツ

シェイクが「魔球」として語られるのは、2005年のロッテ復帰後。
この年、小宮山は“先発エース”というより、登板機会を選ばず投げるベテランの便利屋としてチームを支えた。

2005年(千葉ロッテ)公式スタッツ

項目数値読み
登板23救援中心で回す“戦力の厚み”
投球回40.1単なるワンポイントではなく複数回も
防御率3.79“球威型”ではない中での現実的ライン
四球 / 奪三振5 / 22破綻しにくい(四球が少ない)
被本塁打5遅球系は“変化しない日”のリスクも抱える

さらに、当時の回顧では小宮山が2005年のチームに貢献したこと、そして“球速80kmの魔球”としてシェイクが語られている。
つまりシェイクは「芸」ではなく、ベテランが生き残るための実戦装備だった。


千葉マリンが魔球を完成させた理由:風が“多い”だけじゃない

① 東京湾からの風が直接入り、強風が頻発する(研究で説明されている)

気象学会系の研究では、千葉マリンで強風が頻発する要因として、東京湾上(粗度が小さい)を渡ってくる風が沿岸部に直接侵入することが挙げられている。
要するに、球場が「風の通り道」に立っている。

② “ドーナツ型”球場の内部で、逆流や乱れが起きる

同研究はさらに、スタジアムのような中空円筒(ドーナツ型)構造の周辺では、内部に逆流が発生し得て、境界や背面側で乱れが大きい領域ができることを示している。
風は「一方向の追い風」じゃない。球場の中で“渦”になる

③ 現場の証言:10m/sが普通、14m/s以上も珍しくない

球団発のコラムでは、ZOZOマリンは「常時10m以上が吹くこともある」「最大17m」など、風が試合の前提として語られている。
さらに球場構造(壁の高さの差など)が、打球や風の挙動を難しくするという説明もある。

ここでシェイクが“化ける”理屈

  • シェイク=回転が少ない(=空気の影響を受けやすい)
  • 千葉マリン=強風+乱流・逆流が起きる(=揺れが増幅しやすい)
  • 結果:同じ投げ方でも“その日・その回・その方向”で挙動が変わる

“魔球”の本質:シェイクは「再現性」より「不確実性」を武器にした

現代の主流は、回転・変化量・ゾーン管理で再現性を高めるピッチデザインだ。
対してシェイクは、むしろ逆。予測しにくさを味方にして、打者の選択(待つ/振る)そのものを壊す。

  • 速球に合わせると、遅球は間に合わない
  • 遅球に合わせると、速球や別球種が怖い
  • しかも揺れると、バットに当てる作業すら難しい

“千葉マリンが生み出した魔球”とは、つまり
「球場環境が、投手の“遅球”を“揺れる遅球”に変えてしまう」という現象そのものだ。


まとめ:シェイクは「球場×投球術」のロマンが詰まっている

小宮山悟のシェイクは、球速でねじ伏せる時代の逆を行く。
衰えを認め、環境を読み、武器を作り直し、それを“強風球場”で最大化した。
この球種がやばいのは、変化量の派手さではなく、球場ごと“武器”にしてしまう発想にある。


参考(リンク集)

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