ドリュー・バーヘイゲンが日本ハムからKBOへ。優勝争いのキーマンになりきれなかった右腕と、ジョン・ガントとの距離

アカンプロ野球

北海道日本ハムファイターズのドリュー・バーヘイゲン投手が、韓国プロ野球KBOリーグのSSGランダースと1年契約(総額約90万ドル=約1.4億円)を結んだと報じられました。
2025年の日本ハムは83勝57敗3分で2位、ソフトバンクと激しい優勝争いを演じ、クライマックスシリーズでもファイナルステージまで進出しました。 その中で、先発ローテの一角として期待されたバーヘイゲンがなかなか一軍で稼働できなかったのは、ファンからするとやはり「惜しい」の一言です。

この記事では、

  • バーヘイゲンのこれまでのNPB&MLBでの実績
  • 2025年シーズンの成績と役割
  • 過去に「働けなかった助っ人先発」の象徴だったジョン・ガントとの比較

を整理しながら、「優勝を狙うチームにとって、外国人先発ローテのリスクとは何か?」を考えてみます。


KBO・SSGランダースへ移籍したバーヘイゲン

韓国メディアやMLB Trade Rumorsなどの報道によると、バーヘイゲンはSSGランダースと1年契約で合意。かつて同球団のエースとして活躍した右腕ドリュー・アンダーソンがMLB復帰を決めた穴を埋める、パワー系先発として期待されています。

日本ハムでは2024年オフにも再契約し、「先発陣の経験値」として2025年シーズンもローテ入り。しかしシーズン終了後に自由契約となり、そのままKBOへ活躍の場を移すことになりました。


日本ハムでの通算成績と“第1期”の成功

NPB通算成績(日本ハム)

年度登板投球回奪三振防御率
20201886111回2/31153.22
2021205896回1003.84
202492249回413.12
202563326回2/3226.08
通算531819283回1/32783.68

(データ:NPB公式より)

2020〜21年の“第1期”だけを見ると、防御率3点台前半〜後半で二桁近い勝ち星を挙げた、安定した先発投手でした。特に2021年後半は防御率1点台の好投を続け、これが評価されて2022〜23年はカージナルスと2年契約を結び、MLBに復帰しています。

カージナルスでは2023年にリリーフとして60試合に登板し、5勝1敗・防御率3.98・60奪三振と、崩壊していた投手陣の中で貴重なブルペンの一角を担いました。


再来日後の“第2期”:2024〜25年

2024年:ローテに厚みを持たせた1年

2024年に日本ハムへ“出戻り”すると、先発として9試合に登板し、2勝2敗・防御率3.12。球数制限をかけながらの起用でしたが、平均5〜6回をしっかり投げる「イニングイーター」として、若手中心のローテに経験値をもたらしました。

2025年:6登板・防御率6.08に終わった“ちぐはぐな”シーズン

対照的に、優勝を本気で狙った2025年は、バーヘイゲンにとって苦しい一年でした。

  • 一軍登板:6試合(すべて先発)
  • 成績:3勝3敗、防御率6.08、26回2/3、22奪三振
  • K/9:7.43、BB/9:2.03と、三振・四球のバランス自体は悪くない数字

(パ・リーグ公式&成績サイトより)

開幕直後の3月30日・西武戦で初勝利を挙げたものの、4月13日の西武戦で3回5安打3失点と苦戦。その後は二軍落ちとなり、しばらくファームで再調整に回りました。

ファームでは15登板(14先発)で7勝2敗、防御率2.16、79回で69奪三振・被打率.233・WHIP1.03と、むしろ「一軍よりよほど安定している」内容。 7月末に一軍へ再合流しローテ復帰を目指しましたが、最終的にシーズントータルでは6登板どまり。優勝争いを繰り広げた先発ローテーション(達・伊藤・北山・古林ら)に厚みを加える役割を、最後まで果たしきれませんでした。

数字だけを見れば「ただの不振」にも見えますが、一軍では噛み合わず、二軍では結果を出していたというギャップが、余計に惜しさを感じさせるシーズンだったと言えるでしょう。


“働けなかった先発”ジョン・ガントとの比較

日本ハムファンにとって「期待の外国人先発が稼働できなかった」と聞いて、真っ先に思い出すのがジョン・ガントです。

ジョン・ガントとはどんな投手だったか

  • メジャー通算:24勝26敗、防御率3.89(カージナルスなどで先発・リリーフとして活躍)
  • 2022年オフ、日本ハムと推定年俸2億4000万円の大型契約で入団。先発の柱として期待される。
  • しかし右肘の故障で来日1年目は一軍登板ゼロ。
  • 2023年も肘の状態が戻らず、ファームで3試合登板(0勝2敗、防御率6.52)のみ。最終的に一軍登板ゼロのまま退団となった。

成績だけ見れば、ガントは「2年在籍して一軍登板ゼロ」という、近年まれに見る“大誤算”の助っ人でした。

バーヘイゲンとガントの共通点・相違点

共通点

  • ともにメジャー実績十分の長身右腕(MLB通算勝ち越し・防御率4点前後)
  • 「新庄ハム」の先発ローテを支える柱として、比較的高額な条件で契約された
  • チームが順位を上げたいタイミングで、ローテ計算に入れていたが、シーズンを通しては想定ほど稼働できなかった

違う点

  • バーヘイゲンは2020〜21年に既にNPBで実績を残しており、「成功した助っ人の出戻り」だった。
  • ガントはNPB未経験でいきなり大型契約 → 右肘故障で一軍登板ゼロと、完全に“計算外”だった。
  • バーヘイゲンは2024年にはローテをこなし、2025年もファームでは好成績。「戦力としては存在していたが、一軍にハマりきらなかった」タイプ。
  • ガントはそもそも実戦復帰がままならず、「戦力化する前に終わった」タイプ。

つまり、2人とも結果としては「優勝を狙うローテーションに最後まで乗り切れなかった助っ人先発」ですが、内訳はかなり違います。
ガントが“失敗例の象徴”だとすれば、バーヘイゲンは「成功経験があっただけに惜しい・もったいないタイプの別れ方」と言えるでしょう。


バーヘイゲン不在が、2025年日本ハムの優勝争いに与えたもの

2025年の日本ハムは、達孝太・伊藤大海・北山亘基・古林睿揚らを中心に、先発投手を登板ごとに登録抹消しながら、間隔を空けて長いイニングを投げさせる“新時代ローテ”を構築しました。チーム完投数はリーグ断トツの23。

ここに「経験豊富な先発バーヘイゲン」がシーズン通して乗っていれば、 ・若手にさらに休養を与えられた ・CSファイナルでの継投の幅が広がった といった“if”を考えたくなるのは自然です。

実際には、その役割の多くを国内投手陣が埋め、その結果として2年連続2位&CSファイナル進出という成績を残しました。 バーヘイゲンは「構想上のキーマン」ではあったものの、最終形のローテーションは彼抜きで完成した――というのが2025年の結末でした。


KBOでの再起と、日本ハムにとっての“学び”

SSGランダースは、平均150km前後の速球とカーブ、ツーシームを武器にするバーヘイゲンを、先発ローテーションの一角として期待しています。 NPBでの通算防御率3.68や、MLBでの2023年の安定した救援成績を見れば、まだまだ「一からローテを支える力」は十分にあると言っていいでしょう。

一方、日本ハム側から見れば、

  • 外国人先発は「実績がある=計算できる」わけではない
  • 怪我や適応に備えて、国内先発陣の層を厚くしておくことが、優勝争いの前提条件

という教訓を、ジョン・ガント、そしてバーヘイゲンのケースから改めて確認する形になりました。

「本当に必要なときにローテにいない」 ――そのリスクを最小化するために、今後もドラフトや育成、トレードでどれだけ先発陣を積み増せるか。 バーヘイゲンのKBOでの再起を見守りつつ、日本ハムの編成戦略にも注目していきたいところです。


参考文献・出典

  • NPB公式「VerHagen, Drew 個人年度別成績」「Gant, John 個人年度別成績」
  • パ・リーグ.com「ドリュー・バーヘイゲン選手名鑑」ほか
  • Full-Count「日本ハム退団後にカージナルスへ…復帰2年間はいまひとつの結果」「バーヘイゲンが韓国・SSGと契約」ほか
  • MLB Trade Rumors「KBO League’s SSG Landers Sign Drew VerHagen」
  • Wikipedia英語版「Drew VerHagen」「John Gant」
  • 日刊スポーツ・各種ウェブ記事「『右肩上がり』のバーヘイゲンが1軍合流」「ガントと契約延長で合意」ほか
  • NPB公式・ウィキペディア「2025年の北海道日本ハムファイターズ」「2025パーソル クライマックスシリーズ パ展望」ほか

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