2025年12月11日、巨人がレッドソックス傘下3A右腕ブライアン・マタ投手(26)の獲得調査を進めていると日刊スポーツが報じました。 記事によると、身長190cm・体重101kgから最速160キロの直球を投げ込むパワーアームで、今季は3Aウースターでリリーフとして42試合に登板し、3勝3敗2セーブ、防御率5.08という成績を残しています。
一方で、マタはレッドソックス時代に「101マイル(約162キロ)の速球を投げるトッププロスペクト」として期待された存在でもあり、トミー・ジョン手術や度重なる故障で足踏みしながらも、いまだ球威は健在とされています。 ここでは、巨人が調査する剛腕・ブライアン(ブライアン)・マタの経歴と最新スタッツ、そして巨人の補強ポイントとの噛み合わせを、事実ベースで整理していきます。
プロフィールと基本情報
- 名前:Bryan Eduardo Mata(ブライアン/ブライアン・マタ)
- 生年月日:1999年5月3日(26歳)
- 出身:ベネズエラ・マラカイ
- 身長/体重:約191cm/約101kg(6フィート3インチ、225ポンド級)
- 投打:右投右打
- ポジション:投手(先発 → 近年はリリーフ中心)
- 主な所属:ボストン・レッドソックス傘下(2016〜2025年)
マタは2016年1月、レッドソックスと国際FAとして契約(契約金2万5000ドル)しプロ入り。 ドミニカ夏季リーグ(DSL)からステップアップを続け、10代後半にして米本土のA〜AAまで昇格した、元・球団トップクラスの有望株です。
これまでのキャリアの流れ
若手時代:10代でA級デビュー、トッププロスペクトへ
プロ入り初年度の2016年はDSLで14先発、防御率2.80と好成績を残し、翌2017年にはA級グリーンビルに昇格して防御率3.74。 2018年にはハイA・セイラムでプレーしつつ、オールスター・フューチャーズゲームにも出場するなど、「レッドソックス未来の先発エース候補」と目される存在でした。
2019年はA+とAAをまたぎ、シーズン通算で7勝7敗、防御率3点台前半。この頃のマタは、 ・95〜98マイルのパワーファストボール ・スライダー、チェンジアップ、カーブを織り交ぜる先発型 として、各種プロスペクトランキングでレッドソックス組織内4位前後に名を連ねていました。
2020〜2022年:パンデミックとトミー・ジョン、そして復帰
2020年はマイナーリーグ自体が中止となり、実戦機会を失ったマタ。 その後、2021年春に右肘UCLの部分断裂が判明し、4月にトミー・ジョン手術を受けてシーズン全休となりました。
復帰した2022年はリハビリを経てA〜AAAの4チームで登板し、計19試合(18先発)で防御率2.49、83回で7勝3敗と復活を印象づけます。 この頃には、「最速100マイルを計測した」と報じられるほど球速も戻り、再びメジャー候補として期待されました。
2023〜2024年:制球難と故障に苦しむ
2023年はAAAウースターで主に先発として投げましたが、 9試合(7先発)、防御率6.33、27回で30四球・28奪三振と制球難が顕在化。 右背部(テレス・メジャー)などの故障も重なり、シーズン後半は離脱が続きました。
2024年はさらに不運が続き、ハムストリングや肩、肘の違和感などで長期離脱。開幕からIL(故障者リスト)に入り、シーズン途中に60日ILへ移行しています。{index=12} リハビリ登板としてルーキー級〜AAまで4球団を転々としましたが、合計投球回は20回強にとどまりました。
2025年:完全リリーフ転向とAAAでのフルシーズン
2025年、レッドソックスはマタを本格的にリリーフへコンバート。春先からAAAウースターのブルペン要員として起用しました。 WikipediaやThe Baseball Cubeによれば、42試合すべて救援で登板し、3勝3敗2セーブ、防御率5.08。投球回は67回1/3で、93奪三振・39四球・被本塁打6という内訳です。
指標的には、
- K/9:約12.5(93奪三振 ÷ 67.1回 × 9)
- BB/9:約5.2
- HR/9:0.8
- WHIP:1.66
と、非常に三振は多いが四球も多い「典型的な荒れ球パワーリリーフ」というプロフィールです。
シーズン終了後の2025年11月6日にマタはマイナーFAとなり、レッドソックスを自由契約で離脱。 その後、ベネズエラのマガジャネス(LVBP)でウインターリーグ登板を続けながら、日本球界移籍に向けた動きが報じられている状況です。
161キロ級の剛腕ぶりと投球スタイル
① 100〜101マイルに達する速球
マタはプロスペクト時代から95〜98マイル(152〜158キロ)の速球を常時投げ、短いイニングでは100マイル(約161キロ)超を計測したとレポートされています。{index=19} 日刊スポーツも「最速160キロ」と紹介しており、日本的な表現で言えば“161キロ級の剛腕”と見ていいでしょう。
球種構成としては、
- 四シーム&シンカー系の速球(ミッド〜ハイ90マイル)
- スライダー(87〜90マイル)
- チェンジアップ(85〜90マイル)
- カーブ(78〜81マイル、現在は使用頻度低め)
と多彩で、本来は先発型のレパートリーをそのままブルペンに持ち込んでいる形です。
② 三振は取れるが、制球にはリスク
2025年AAAのK/9=約12.5という数字が示すように、空振りを奪う能力は依然としてハイレベルです。一方で、BB/9=5前後・WHIP1.6超という数字からわかるように、四球の多さとランナーをためがちな点が最大の課題でもあります。
SoxProspectsのスカウティングレポートでも、
- 「クイックな腕の振りだが、下半身の使い方が一定せず、リリースポイントがブレやすい」
- 「特に腕側(インコース)への制球が安定せず、オーバースロー気味に“引っ張って”しまう」
といった指摘があり、メカニクス由来の制球難は長年のテーマになっています。
③ 故障歴の多さというリスク
2010年代後半から一貫して有望株だった一方で、マタは
- 2021年:トミー・ジョン手術(右肘UCL)
- 2023年:右肩〜背部の筋損傷
- 2024年:ハムストリング・肩・肘の複合的な故障で60日IL
と、近年はほぼ毎年故障で長期離脱しています。「球威は一級品だが、健康と制球が揃うかは未知数」というのが、現時点での客観的な評価と言えます。
巨人の補強ポイントとマタのフィット感
① 先発陣の層の薄さと「ロング要員」候補
2025年の巨人は、チーム防御率こそ2.95でリーグ3位と健闘しましたが、 先発ではヤマサキ(山﨑伊織)やグリフィンらに依存する形で、ローテの駒不足がシーズンを通して課題になっていました。 マタはマイナー通算150試合中101試合が先発で、「先発経験のあるリリーフ」=ロングリリーフ要員として起用できる点は、巨人にとって魅力です。
② ブルペン強化:三振でねじ伏せる“パワー系助っ人”
巨人の救援陣は2025年も防御率2点台前半〜中盤と安定していましたが、 ポストシーズンや優勝争いを見据えると、「1イニングを完全に支配できるパワー系助っ人」は依然として欲しいピースです。
マタは制球にムラがある一方で、K/9二桁が当たり前の奪三振能力を持っており、 もし日本のゾーンやボールへの適応で四球が多少減れば、8〜9回のセットアッパー/クローザー候補になり得る素材です。
③ リスクとリターン:典型的な「ハイリスク・ハイリターン枠」
一方で、
- 直近数年の故障歴が多いこと
- AAAでの防御率5点台・WHIP1.6超という数字
- メジャー登板経験がゼロであること
を踏まえると、「即戦力」というよりは、当たり外れの大きいギャンブル的補強なのも事実です。球団としては契約条件を抑えつつ、メディカルチェックやフォーム修正の余地を見極める必要があるでしょう。
まとめ:161キロ級の球威と高いK/9、課題は健康と制球
- マタは元レッドソックスのトッププロスペクトで、101マイル(約162キロ)に達する直球を武器とする右腕。
- 2025年はAAAウースターで42試合登板、67回1/3で93奪三振・39四球、防御率5.08と、奪三振能力の高さと制球難が数字にそのまま表れている。
- トミー・ジョン手術や複数の筋肉系トラブルなど、故障歴が多く“健康リスク”は大きい。
- 一方で、マイナー通算では先発101試合の経験を持ち、ロングリリーフ〜先発転向まで含めた柔軟な起用が可能なタイプでもある。
- 巨人にとっては、先発の駒不足とブルペンの「もう一段上のパワー」に同時にアプローチできるハイリスク・ハイリターン補強候補と言える。
現在報じられているのはあくまで「獲得調査段階」であり、契約合意や入団発表が行われたわけではありません(2025年12月11日時点)。 それでも、161キロ級の真っすぐと高い奪三振率を持つ26歳の右腕が東京ドームのマウンドに立つ可能性は、ファンとして想像するだけでもワクワクする素材です。
参考文献・出典
- 日刊スポーツ「〖巨人〗最速160キロ!レッドソックス傘下3Aの右腕ブライアン・マタを獲得調査」(2025年12月11日)
- Wikipedia英語版「Bryan Mata」項目(最終更新:2025年11月29日)
- The Baseball Cube「Bryan Mata – Minor League Baseball Statistics」(2025年シーズン成績・通算成績)
- SoxProspects.com「Bryan Mata | SoxProspects.com」(スカウティングレポート・故障歴)
- MLB.com「Bryan Mata Stats, Age, Position, Height, Weight, Fantasy & Transactions」(トランザクション/FA情報)
- Newsweek「Red Sox Make Decision on 101 MPH Former Top Pitching Hope」(2025年10月30日)
- NPB.jp/Yakult公式メディアガイド「2025年度 セ・リーグ チーム別投手成績」ほか(巨人チーム防御率)



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