MLBはついに「空振りの距離」まで見る時代へ。104.5マイルとMiss Distanceが示すデータ野球の次の段階

MLBのデータ野球は、もうだいぶ変なところまで来ています。

少し前までは、打球速度や回転数だけでも十分に未来感がありました。

「この打球は時速何マイル」
「この球は回転数が何回転」
「期待打率はこう」
「OAAではこの守備がプラス」

これだけでも、NPBを見慣れたファンからするとかなり細かい世界です。

ところが最近のMLBは、ついに空振りの距離まで見始めています。

Baseball Savantには「Swing Timing + Miss Distance」というリーダーボードがあり、単に空振りしたかどうかだけでなく、スイングがどれくらいズレていたのかまで可視化しようとしています。

これ、地味にかなりすごいです。

今回は、Miss Distanceという考え方と、104.5マイルを投げたジェイコブ・ミシオロウスキーの例から、MLBデータ野球の次の段階をゆるく考えます。


この記事の結論

結論から言うと、MLBのデータ野球はもう「結果を見る」段階から、打者と投手の動きそのものを分解する段階に入っています。

  • 打球速度、回転数、期待打率だけでなく、スイングのズレも見始めている
  • Miss Distanceは、空振り時にバットとボールがどれくらい離れていたかを見る指標
  • 同じ空振りでも「惜しい空振り」と「完全に壊された空振り」は意味が違う
  • ミシオロウスキーは104.5マイルを投げ、先発投手として投球トラッキング時代最速級の球を記録した
  • 球速だけでなく、打者のスイングをどれだけズラしたかまで評価される時代になっている

昔なら「あの球エグい」で終わっていました。

でも今は、そのエグさを数字にしようとしています。


そもそもMiss Distanceとは何なのか

Miss Distanceは、ものすごく簡単に言えば、空振りした時にバットとボールがどれくらい離れていたかを見る考え方です。

Baseball Savantの説明では、Miss Distanceは、バットの上半分、つまり手元ではなくバレル側とボールの最接近時の距離をインチで表します。バントは除外されます。

これが面白いのは、スコアブック上は同じ空振りでも、中身が全然違うからです。

空振りの種類記録上中身投手目線の意味
バットに少し届かなかった空振りストライクかなり合っている次は捉えられるかもしれない
タイミングが少し遅れた空振りストライク球威に押されている速球が効いている可能性
バットが全然違う場所を通った空振りストライク完全にズレている球種・軌道・タイミングで壊している

全部、記録上は同じストライクです。

でも、内容は全く違います。

ここを数字で見ようとしているのが、今のMLBです。


「惜しい空振り」と「壊された空振り」は違う

野球を見ていると、空振りにもいろいろあります。

ファウルチップになりかけた空振り。
少し下を振った空振り。
完全にタイミングを外されて、バットが遠くを通った空振り。

実況や解説でも、「今のは合っていましたね」「全然合ってませんね」と言うことがあります。

Miss Distanceは、その「合っていた」「合っていなかった」を、より具体的に見ようとする指標です。

投手からすると、これはかなり大事です。

同じ三振でも、打者がかなり近いところまで対応していたなら、次の打席では怖いです。

逆に、バットがまったく違う場所を通っているなら、その球はかなり効いています。

つまり、三振数だけでは見えない空振りの質が見えるようになります。


ミシオロウスキーの104.5マイルが象徴的すぎる

そして、こういうデータ野球の話をしている時に、あまりにも分かりやすい投手が出てきました。

ジェイコブ・ミシオロウスキーです。

MLB.comによると、ミシオロウスキーはフィリーズ戦で104.5マイルの速球を投げ、2008年に投球トラッキングが始まって以降、先発投手として最速の球を記録しました。

しかも、その試合内容もかなりおかしいです。

  • 95球で完封
  • 15奪三振
  • 被安打1
  • 104.5マイルを計測

ゲームの作成選手みたいな数字です。

球速が速い投手は昔からいます。リリーフなら100マイル超えも珍しくなくなっています。

ただ、先発で104.5マイル。しかも完封して15奪三振。

これはかなり話が違います。


球速だけでなく「どれだけ打者をズラしたか」が大事になる

昔なら、ミシオロウスキーのすごさは「104.5マイルを投げた」で終わっていたかもしれません。

もちろん、それだけでも十分すごいです。

ただ、今のMLBではそこからさらに進みます。

  • その球はどのコースに来たのか
  • 打者のバットはどれくらい遅れたのか
  • バットはボールの上を通ったのか、下を通ったのか
  • 空振り時にバットとボールは何インチ離れていたのか
  • 同じ球種でも、どの形の空振りが多いのか

ここまで見ようとしています。

つまり、球速、回転数、変化量だけでなく、打者の反応そのものが評価対象になっています。

これはかなり大きな変化です。


投手評価は「三振数」だけでは足りなくなる

三振は分かりやすい指標です。

奪三振が多い投手は、基本的に強いです。打球を前に飛ばされないので、守備や運に左右されにくいからです。

ただ、これからは三振の中身も見られるようになります。

従来の見方これからの見方
何個三振を取ったかどんな空振りを取ったか
空振り率が高いか空振りのズレが大きいか
速い球を投げているか打者のスイングを壊しているか
変化球で三振を取れるかタイミング・高さ・軌道をどう外しているか

同じ空振りでも、打者がかなり近いところまで対応していたのか、完全に壊されていたのかは違います。

この差が見えると、投手の評価も変わります。

「三振は取れているけど、実はかなり捉えられかけている」投手。
「三振数はそこそこでも、空振りの質がかなり強い」投手。

こういう見方が増えていくはずです。


打者側にもかなり影響がある

このデータは、投手だけでなく打者側にも効きます。

打者は、なぜ空振りしたのかをより細かく分析できます。

  • 単純に振り遅れたのか
  • 球筋を読み違えたのか
  • スイング軌道が合っていないのか
  • バットは上を通ったのか、下を通ったのか
  • そもそも人間が対応しにくい球なのか

今までも映像を見れば、ある程度は分かりました。

でも、それが数字で蓄積されると、練習や対策も変わります。

特定の球種に対して、毎回少し下を振っている。
速球に対して、タイミングは合っているのにバットが下に入っている。
スライダーに対して、バットが横に大きくズレている。

こういうことが可視化されれば、修正ポイントはかなり具体的になります。


NPBにもそのうち入ってくるかもしれない

MLBのデータは、少し遅れてNPBにも入ってくることがあります。

打球速度、回転数、トラックマン、ホークアイ、期待値系の指標。こうした言葉は、少しずつ日本の野球ファンにも浸透してきました。

なので、数年後には日本でも「今の空振り、ミスディスタンス大きかったな」みたいな話が出てくるかもしれません。

もちろん、最初はかなりマニアックです。

ただ、野球ファンは意外とこういう数字に慣れます。

昔はOPSですら一部の人の指標でした。
今では普通に中継や記事で出てきます。

そう考えると、空振りの距離を語る時代が来ても、そこまで不思議ではありません。


まとめ:MLBは「空振りの中身」まで見始めた

MLBのデータ野球は、もう結果だけを見る段階ではなくなっています。

打球速度。
回転数。
期待打率。
守備範囲。
そして、空振りの距離。

どんどん細かくなっています。

Miss Distanceは、同じ空振りでも「惜しい空振り」と「完全に壊された空振り」を分ける考え方です。

そこに、104.5マイルを投げるミシオロウスキーのような投手が出てくる。

速い。
角度がある。
打者のバットがズレる。
そのズレまで数字で見える。

これはもう、野球の見方そのものが変わっています。

ちょっと行きすぎている気もします。

でも、めちゃくちゃ面白いです。


よくある質問

Miss Distanceとは何ですか?

空振りした時に、バットの上半分とボールが最も近づいた瞬間の距離をインチで見る指標です。簡単に言えば、空振りがどれくらいズレていたかを見るものです。

空振りは全部同じストライクではないの?

記録上は同じストライクです。ただし、中身は違います。ギリギリ当たらなかった空振りと、完全にタイミングも軌道も外された空振りでは、投手と打者にとって意味が変わります。

ミシオロウスキーの104.5マイルは何がすごいの?

MLB.comによると、2008年に投球トラッキングが始まって以降、先発投手として最速の球でした。しかもその試合で95球完封、15奪三振、被安打1という内容を残しています。

NPBでもこういう指標は使われるようになる?

可能性はあります。打球速度や回転数のように、MLB発のデータが少しずつ日本の野球記事や中継に入ってきた流れを考えると、空振りの質を示す指標も今後広がるかもしれません。


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参考文献・出典

※MLB関連情報は2026年6月時点のMLB.comおよびBaseball Savant掲載内容をもとにしています。

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