中日の本拠地・バンテリンドームに“ホームランウイング”的テラス席誕生 誰のホームランが一番増える?

野球

中日ドラゴンズの本拠地・バンテリンドームナゴヤに、いよいよ外野テラス席「ホームランウイング(仮称)」が新設されることになりました。いわゆるZOZOマリンの「ホームランラグーン」や、みずほPayPayドームの「ホームランテラス」に近い“ラッキーゾーン的”なエリアが、2026年シーズンから本格稼働する予定です。

投手天国と言われてきたバンテリンドームが“ホームランが出やすい球場”寄りに変わるとしたら、ドラゴンズ打線と投手陣にはどんな影響があるのか。この記事では、球場の仕様変更、他球場の事例、そして実際のシミュレーションデータも踏まえながら、「誰のホームランが増えそうか?」を考えていきます。

ホームランウイングとは? 仕様変更のポイント

球団とナゴヤドーム(バンテリンドーム運営会社)は、2025年8月にホームランウイングおよびアリーナシートの詳細を発表しました。

  • 名称:ホームランウイング(ライト・レフトに1カ所ずつ)
  • 設置位置:外野フェンス前のテラス型観客席
  • 本塁からの距離:右中間・左中間が「116m → 110m」に短縮(最大6m前進)
  • フェンスの高さ:「4.8m → 3.6m」に低下(ソフトラバーフェンス2.6m+ネット1.0m)
  • 両翼100m・中堅122mは変更なし
  • 新設テラス席はライト・レフト合わせて数百席規模の“グラウンドに近い”プレミアム観戦エリア

つまり、数字以上に「右中間・左中間が近く&低くなる」改修です。デイリースポーツなども、右中間・左中間の距離が6m短くなることを強調しており、これまでならフェンス直撃だった打球や、外野手がフェンス際でキャッチしていたフライが、そのままスタンドインするケースが確実に増えると考えられます。

秋季練習では、実際に新フェンス位置を示す白いテープが貼られ、選手たちが「来季の狭さ」を体感。岡林勇希は「東京ドームに近い」と話し、上林誠知も「右中間、左中間がかなり狭く感じる」とコメントしています。

そもそもバンテリンドームはどれくらい“本塁打が出にくい”球場だったのか

バンテリンドームは、もともと「12球団屈指の広さ」と「高いフェンス」で知られる投手有利の球場でした。パークファクター(本塁打PF)を見ると、2025年のバンテリンドームの本塁打PFはおおよそ0.69前後。同じセ・リーグ本拠地の神宮球場(1.64)、東京ドーム(1.23)と比べると、明らかにホームランが出にくい環境です。

同じく本塁打PFが低いのは甲子園球場(0.68前後)で、「バンテリン=甲子園級の本塁打の出にくさ」というのが、ここ数年のデータから見える実態でした。

その結果として、中日打線は長年「本塁打数・長打力でリーグ下位」というシーズンが続いてきました。投手陣にはプラスでも、打線にとってはマイナスに働いていた面は否めません。

他球場の“テラス”導入事例:ソフトバンク&ロッテの場合

バンテリンドームのテラス化を考えるうえで、すでに“先輩格”となっているのが、ソフトバンクとロッテです。

みずほPayPayドームのホームランテラス

  • 2015年、ヤフオクドーム時代にホームランテラスを設置。
  • 右中間・左中間が最大約5m狭くなり、フェンスも約5.8m→4.2mに低くなった。
  • 設置前の2014年はチーム本塁打95本だったが、2015年は本塁打が大幅増。シーズンの得点が44点増える一方、失点増は23点にとどまり、得失点差が大きく改善したと分析されています。

テラス導入以降、ソフトバンクはリーグ1〜2位をキープし続けており、得点力アップがチームの常勝体制を支えた一因とされています。

ZOZOマリンのホームランラグーン

  • 2019年にホームランラグーンを設置。右中間・左中間の膨らみを削り、フェンスを最大約4m前に出す形でテラス席を新設。
  • 導入初年度の2019年、ロッテのチーム本塁打は前年から80本増の158本。得点数もリーグ2位に躍進しました。
  • 一方で、ZOZOマリンでの被本塁打も「55本→74本」と増加。ただし失点数はむしろ減少しており、“打たれやすくなったのに守り切れている”という面白い結果も出ています。

この2球団の例からわかるのは、「テラス導入=ホームランは確実に増える。ただし被本塁打も増える」ということ。そして、打線の強化に成功すれば、総合的な戦績はむしろプラスに振れる可能性が高い、という点です。

シミュレーションから見る:バンテリンドームの本塁打は何本くらい増えそう?

ドラゴンズファンの間では早くから「もし今季、すでにテラスがあったら何本ホームランが増えていたか?」という検証が行われています。noteなどで公開された詳細なデータ検証では、2025年シーズンの打球データから「仮想ホームランウイング」を想定してカウントした結果、

  • 中日打線のホームラン増加:+33本前後
  • 中日投手陣の被ホームラン増加:+19本前後
  • 合計で約+50本強の本塁打がバンテリンドームで新たに生まれる

という試算が紹介されています(個人による分析ではあるものの、複数メディアに引用されている数字)。

同じ検証では、2022〜2024年の仮定シミュレーションも行われており、毎年20〜30本程度、中日の本塁打が増える傾向が見られたとされています。つまり、テラス導入後のドラゴンズは「年間本塁打+20〜30本」がひとつの目安になりそうです。

もちろんこれは「もし2025年の打球が、そのままテラス付き球場で飛んだら」という仮定の話で、選手の意識や打撃フォームの変化までは織り込んでいません。それでも、方向性としては「かなりのインパクトがある」と言ってよい数字です。

誰が得する? ホームランが増えそうなドラゴンズ打者

1)細川成也:真っ先に“テラスの恩恵”を受ける右の主砲候補

打球速度・飛距離ともにチームトップクラスの細川成也は、最もわかりやすくテラスの恩恵を受けるタイプです。右打者としてレフト方向への強いフライ・ライナーが多く、これまでバンテリンでは「フェンス直撃」「外野手の背走キャッチ」になっていた当たりが、そのままレフト側ホームランウイングへ飛び込むイメージが湧きます。

前述のシミュレーションでは、2025年の細川に+7本前後のホームランが上乗せされるという結果も紹介されました。 テラス導入後は、シーズン20本台半ば〜30本前後が現実的なターゲットラインになってもおかしくありません。

2)ボスラー:フェンス直撃弾がそのままスタンドインに

左中間・右中間への大飛球が持ち味の新外国人ボスラー(2025年時点)は、テラスとの相性が非常に良い打者です。データ分析によると、2025年のボスラーは「テラスあり想定」で+9本前後のホームラン増という試算も出ています。

実際の試合を見ていても、「あと数十センチでスタンド」という打球が少なくなく、右中間・左中間の6m短縮とフェンス低下の影響をモロに受けるタイプ。テラス導入後は、チーム内でも屈指の“ホームランウイング職人”になる可能性があります。

3)上林誠知:テラス経験者の強み+ライト方向の大飛球

上林誠知は、ソフトバンク時代にホームランテラスを経験しており、「打者としては力まなくなるので間違いなくプラス」と語っています。 ライト方向への鋭いフライが多い左打者で、バンテリンドームでもライトスタンドへ“あと一歩”という打球が何度もありました。

シミュレーションでは、テラスがあればシーズン20本塁打に届くペースだったという分析も紹介されており、「ラグーン型の球場でこそ輝くタイプ」と言えそうです。

4)石川昂弥:将来的に“テラス込みで30本”も視野

石川昂弥は、まだ故障の影響などもありフルシーズンの数字はこれからですが、高校時代から「飛距離はドラフト級」と言われてきた右の大砲候補です。バンテリンドームの広さに苦しみつつも、伸びのある打球で左中間スタンドまで運ぶシーンが徐々に増えてきました。

SNS上で共有されたシミュレーションでは、2025年だけでも+2本前後、2022〜2025年の4年間トータルでは15本近く上乗せされる、という試算もあります。 テラス導入が本格化するタイミングと、石川のピークが重なれば、「30本級サード」というロマンも現実味を帯びてきます。

5)その他の“恩恵組”と、そこまで変わらなさそうなタイプ

  • 鵜飼航丞:プルヒッター寄りの右の長距離砲。レフトへの高いフライが多く、テラスとの相性は良好。
  • 村松開人・岡林勇希:ラインドライブ型・広角ヒッターのため、純粋な本塁打増よりも「二塁打→ホームラン」「外野手の守備位置が前になった分のヒット増」といった形で恩恵を受ける可能性が高い。
  • 完全なアベレージヒッター&ゴロヒッター:打球角度が低く、そもそも外野フェンスまで飛ばないタイプは、ホームラン数自体は大きく変わらないと見られます。

投手陣にはどんな影響? 「ゴロピッチャー」が価値を増す

当然ながら、「打者にとってプラス」はそのまま「投手にとってマイナス」にもなります。2025年のシミュレーションでは、中日投手陣の被本塁打が+20本弱増えるという結果も出ており、フライボールピッチャーは特に影響を受けます。

実際、ファンサイトの分析では、バンテリンドームでフライアウトが多いタイプの投手(例:金丸夢斗や一部中継ぎ投手)は、テラス導入後に被本塁打が増えるリスクが指摘されています。一方で、ゴロ率の高い柳裕也、高橋宏斗らは、もともとビジター成績も良く、「テラスが付いても十分にやっていける」と見る声も少なくありません。

とはいえ、ロッテの事例では「被本塁打は増えたが失点はむしろ減った」というシーズンもありました。配球の組み立てや守備シフト、ゴロを打たせる投手の重要度が増していけば、「投手陣が崩壊する球場」にはならない可能性も十分あります。

ドラゴンズ野球はどう変わる? “守り勝つ”から“長打で試合を動かす”へ

ここ数年のドラゴンズは、「守備と投手力でロースコアを拾う」スタイルを余儀なくされてきました。しかし、ホームランウイングの導入で、

  • 同じ1本の長打でも、「二塁打」ではなく「ホームラン」になるケースが増える
  • 終盤ビハインドでも“1発でひっくり返せる”試合展開が増える
  • 観客にとっても「一発の期待感」が常にある球場になる

といった変化が見込まれます。

上林が語るように、「フェンスが近くなったと感じることで力まずに振れる」打者が増えれば、単純なテラス効果以上に長打力が伸びる可能性もあります。

一方で、被本塁打増というリスクは確実に存在します。ロッテやソフトバンクの事例から逆算すると、

  • ドラフトや補強では、ゴロ率の高い投手・三振の取れる投手を優先する
  • 守備では、外野手のフェンス際の処理・壁際のフライ処理の練度を高める
  • 打線は「テラス向きの長距離砲」と「出塁力の高い打者」を明確に並べる

といった“テラス仕様の編成・采配”が求められてくるはずです。

まとめ:誰が一番得をする?

  • バンテリンドームは本塁打PF0.7前後の超・投手有利球場だったが、ホームランウイング導入で“テラス球場”に近づく。
  • 他球場の例(ソフトバンク・ロッテ)から見ると、ホームラン増はほぼ確実で、同時に被本塁打も増える傾向。
  • 2025年のシミュレーションでは「中日の本塁打+30本強、被本塁打+20本弱」という試算もあり、テラス効果はかなり大きいと考えられる。
  • 細川成也・ボスラー・上林誠知・石川昂弥ら、右中間・左中間へ大飛球を打てる中長距離砲が最大の受益者になりそう。
  • 投手陣はフライボール投手がやや不利に。ゴロピッチャーや三振型投手の価値が相対的に上がる。

バンテリンドームが“ホームランラグーン的”な球場に生まれ変わる2026年、ドラゴンズは「守り勝つチーム」から「長打で試合を動かせるチーム」へと変貌できるのか。テラスの恩恵を最大限に生かせるかどうかが、今後数年のチーム編成と戦い方の大きなテーマになっていきそうです。

参考文献・出典

コメント

タイトルとURLをコピーしました