プロ野球ファンのあいだで今も生き続けるフレーズ、「バッカじゃなかろうかルンバ」。 なんJやX(旧Twitter)では、ひどい走塁ミスがあるたびに「ルンバw」「ルンバ走塁」といった言葉が飛び交います。
このフレーズの元祖はもちろん、名将・野村克也監督(ノムさん)。 ここでは、「バッカじゃなかろうかルンバ」誕生の試合と、その後ネットミームとして定着した“ルンバ走塁”文化を、ざっくり振り返ってみます。
発祥:2008年5月29日 巨人対楽天戦の「謎盗塁」
2点ビハインドでの“セオリー無視”盗塁
元ネタになったのは、2008年5月29日、東京ドームで行われた巨人対楽天の交流戦。スコアは4−2で楽天リード、迎えた9回裏・巨人の攻撃は二死一塁。 ここで巨人は代打の矢野謙次が四球で出塁し、「一発出れば同点」という場面でした。
ところが、ここで巨人ベンチは矢野にスタートを切らせて盗塁を指示。 結果は、タッチプレーになるまでもない完璧な盗塁死でゲームセット。 2点ビハインド・二死一塁という状況での盗塁は「リスクに見合わない」とされる場面で、巨人ファンにとっては強烈にモヤっとする終わり方でした。
ノムさんの「バッカじゃなかろうかルンバ」炸裂
試合後、取材エリアに姿を見せた当時楽天監督の野村克也は、報道陣を前にいきなり鼻歌混じりに、
バッカじゃなかろかルンバ♪
と口ずさみながら登場。 続けて
巨人は面白い野球をするね。野球は意外性のスポーツだよ
勝手に行ったんじゃないの? 普通はあそこでは走らせないよ
などと、巨人ベンチの采配を痛烈に皮肉りました。 このときの「バッカじゃなかろうかルンバ」が、のちにネットでミーム化していきます。
元ネタは実在の歌「バッカジャナカロカ・ルンバ」
実は「バッカじゃなかろうかルンバ」は、ノムさんの完全オリジナルではなく、
1972年に発表された楽曲「バッカジャナカロカ・ルンバ」が元ネタです。
- 原曲:ラテン曲「マイアミ・ビーチ・ルンバ」
- 日本語版:『バッカジャナカロカ・ルンバ』
- 作詞:かも まさる
- 歌唱:中園ナナ
この歌を聞いて育った世代のノムさんが、「バカじゃないの?」という意味のツッコミとしてアレンジして使った、というわけですね。
“ルンバ”がネットスラング化するまで
2ちゃんねる〜なんJで「ルンバ」が定着
2008年当時から、2ちゃんねる野球板や「なんJ」ではノムさんネタが大人気。 この試合後のコメントをきっかけに、「バッカじゃなかろうかルンバ」→「ルンバ」と略され、
- 致命的な盗塁死
- セオリー無視の無謀な走塁指令
- 意味不明な采配による走塁ミス
といったプレーをまとめて「ルンバ」と呼ぶ文化が広まっていきます。
なんJ用語集や各種「元ネタ解説サイト」でも、 「ルンバ=野村監督の『バッカじゃなかろうかルンバ』に由来する、酷い走塁ミス・采配ミスの蔑称」 と説明されるのが定番になりました。
伊原春樹との“ルンバ返し”エピソード
このフレーズには、当時巨人ヘッドコーチだった伊原春樹との因縁も絡んでいます。 もともと野村と伊原には、阪神時代の走塁方針などをめぐる確執がありました。
「バッカじゃなかろうかルンバ」発言に対して、伊原ヘッドは翌日、
年寄りだから仕方ない
などと反撃し、口撃合戦に発展。 さらに翌2009年、巨人が楽天戦4連勝を決めた試合後、伊原は報道陣の前で、
1年間お預かりしたその言葉を、そっくりそのままお返しします。
バッカじゃなかろか…ルンバ!
と「ルンバ返し」を披露し、このエピソードは完全にプロ野球史に残るネタとなりました。
ルンバ走塁・ルンバ采配とは何か
本来の意味:仕掛けること自体がおかしい走塁
元ネタの場面から整理すると、「ルンバ」の本来の意味は、
- 状況を考えれば、そもそも走らせるべきではないのに走らせた盗塁
- 成功してもリターンが小さいのに、失敗したら即ゲームセット級のリスクがあるプレー
- ベンチの指示が明らかにおかしい走塁戦術
といった、采配側の判断ミスが色濃い走塁プレーを指します。
そこから派生して、
- 理解不能な盗塁指令 → ルンバ走塁
- 不可解な采配全般 → ルンバ采配
といった使われ方も広がりました。:
現在の使われ方:ただの走塁ミスにも「ルンバ」
なんJ用語集でも指摘されているように、最近では「普通の盗塁死」や「単純な走塁ミス」に対しても、 とりあえず「ルンバw」と呼んでしまうケースが増えています。
厳密に言えば、
- 作戦としては妥当だが、単純にスタートが遅れた
- 打者とランナーのサインミス
- 暴走気味に走った選手本人の判断ミス
といったプレーは、元ネタ的には「ルンバ」ではなく、 単なる「走塁ミス」の範疇です。 それでもネット上では、“とりあえず言いやすい蔑称”としてのルンバが定着し、 「ルンバ走塁」「ルンバ守備」「ルンバ采配」など、何でもかんでもルンバ呼ばわりされることもしばしばあります。
まとめ:ノムさんの一言が、今も生きる野球ミームに
- 「バッカじゃなかろうかルンバ」は、2008年の巨人対楽天戦での無謀な盗塁を皮肉った野村克也監督のコメントが発祥。
- 元ネタは1972年の楽曲「バッカジャナカロカ・ルンバ」で、ノムさん世代にはおなじみのフレーズだった。
- 以後、ネット上では致命的な走塁ミスや不可解な采配をまとめて「ルンバ」と呼ぶ文化が広まり、「ルンバ走塁」「ルンバ采配」などのスラングが定着。
- 本来は「仕掛けること自体が間違っている走塁」を指していたが、現在では走塁ミス全般に対するツッコミワードとして使われることが多い。
ひと言の皮肉から生まれたフレーズが、15年以上たっても野球ファンの共通言語として残り続けているのは、 ノムさんの言葉の強さと、あの試合のインパクトの大きさを物語っています。 次にどこかのチームで“ルンバ走塁”が出たときには、ぜひ2008年のあの場面と、 鼻歌まじりに登場したノムさんの姿を思い出してみてください。
参考文献・出典
- 新・なんJ用語集wiki「バッカじゃなかろかルンバ」
- タネタン「ルンバの意味・元ネタ」
- Yahoo!知恵袋「野球“ルンバ走塁”の意味を教えて下さい」「野球のルンバとはなんですか?」
- わしせん@wiki「ルンバ」
- 日刊スポーツ/スポニチほか、野村克也監督・伊原春樹ヘッドコーチの“ルンバ返し”関連記事



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