WBCで日本やドミニカ、米国と比べるとどうしても露出が少ないオランダ代表(正確には「オランダ王国代表」)。 しかし大会の歴史を振り返ると、2度のベスト4・ドミニカ撃破・NPBゆかりの大砲&エースと、「隠れた強豪」と呼ぶにふさわしい実績を持っています。
ここでは、過去のWBCオランダ代表の歩みと、バレンティン&バンデンハークらNPBファンおなじみの選手たち、 そして2025年時点で報道されている“次回大会の目玉候補”までを、一次情報ベースで整理してみます。
なぜオランダは「隠れた強敵」なのか
ドミニカを2度撃破した2009年大会の“大番狂わせ”
WBCでオランダの名前を一気に世界へ広めたのが、2009年大会・1次ラウンドでのドミニカ共和国撃破です。 サンフアンのプールDで、オランダは3月7日に3−2、3月10日に2−1と、 大会優勝候補のドミニカを2度破って2次ラウンド進出。
当時のドミニカ代表はオルティス、ハンリー・ラミレス、テハダ、ペドロ・マルティネスらスター揃い。 それを「無名に近い投手陣と堅守」で抑え込んだ番狂わせは、MLB公式も「WBC史上最大のアップセット」としてたびたび取り上げています。
2013&2017年は連続ベスト4
2009年のサプライズで終わらず、オランダは2013年大会、2017年大会と連続で準決勝進出。 大会成績を見ると、
- 2013年:ベスト4(4位)
- 2017年:ベスト4(4位)
と、WBC6大会中2大会でベスト4という“常連強豪国”の数字を残しています。 2017年ロサンゼルス準決勝ではプエルトリコと延長11回の死闘を演じ、3−4サヨナラ負けという惜敗でした。
2023年大会でも「5チーム2勝2敗」のカオスを演出
直近の2023年大会では、台湾開催のプールA(キューバ、イタリア、パナマ、チャイニーズタイペイ、オランダ)に参加。 結果的に5チームすべてが2勝2敗となり、「失点/アウト数」で並び順が決まる前代未聞の大混戦となりました。
オランダはキューバ戦の初戦に4−2で勝利し、やはり「キューバキラー」ぶりを発揮しましたが、 最終的な順位は3位となり、惜しくも決勝トーナメント進出を逃しています。
NPBファンにはおなじみ。バレンティン&バンデンハークの存在感
バレンティン:NPB60本塁打&WBC最強クラスの主砲
NPBファンにとってオランダと言えば、やはりウラディミール・バレンティン(Wladimir Balentien)。 ヤクルト時代の2013年に60本塁打で日本記録を更新した右の大砲です。
国際大会でも、バレンティンはオランダの看板打者として君臨。 特に2017年WBCでは、
- 打率.615
- 4本塁打
- 12打点
という圧倒的な成績で大会オールスターチーム(All-World Baseball Classic Team)の外野手に選出されています。 MLB公式も「大会を通じて最も怖い打者」と評し、準決勝・プエルトリコ戦でも先制2ランを放つなど“オランダ打線の象徴”でした。
バンデンハーク:ソフトバンクのエースがオランダ先発陣を支えた
投手では、ソフトバンクのエースとしておなじみだったリック・バンデンハーク(Rick van den Hurk)が代表の顔でした。 NPBでは2015年にソフトバンクで15試合9勝0敗、防御率2.52、WHIP0.97と無敗を記録し、 2015〜16年にかけて14連勝でNPB記録となる快投を見せています。
バンデンハークは2009年・2017年のWBCでオランダ代表として登板。 2017年大会では日本戦を含め3先発し、決して数字自体は良くないものの、 「NPBの大舞台でもまれた先発エース」としてチームの大黒柱を務めました。
2023年大会の顔ぶれ:MLBクラスがズラリ
2023年大会のオランダ代表は、すでにメジャーでもおなじみの内野陣が揃っていました。
- ザンダー・ボガーツ(パドレス)
- アンドレルトン・シモンズ
- ジョナサン・スクープ
- ディディ・グレゴリウス
- ジュリクソン・プロファー
MLB.comのロスター発表では、ボガーツ、シモンズ、スクープは3大会連続出場、 特にシモンズは通算.339/.373/.516の好成績と紹介されています。またクローザーにはケンリー・ヤンセン、ベテランのバレンティンも選ばれるなど、 「欧州代表」というイメージに反して、実態はMLB&NPB経験者だらけの豪華ロースターでした。
2025年時点での最新情報:次回WBCの“目玉候補”は?
次回WBCは2026年3月開催予定で、オランダはプールD(マイアミ)でドミニカ、ベネズエラ、イスラエル、ニカラグアと同組になることが発表されています。2025年現在、正式な登録メンバーはまだ出ていませんが、一次報道ベースでは「確定」「有力」とされる選手像が見えてきました。
まずは指揮官:アンドリュー・ジョーンズが監督就任
2025年5月、元ブレーブスのスター外野手アンドリュー・ジョーンズがオランダ代表監督に就任。 MLBやWBSCのリリースでは、「目標は優勝」「王国のタレントを最大限活かす」と語っています。
カリブ出身(キュラソー・アルバ)の選手を中心に編成されるオランダ代表にとって、 同じくキュラソー出身でMLB殿堂級の実績を持つジョーンズが率いることは、スター選手招集の“営業”効果も大きいと見られています。
【確定】ボガーツ&ラファエラという「センターラインの核」
ザンダー・ボガーツ(パドレス)
2025年7月、複数の米メディアやWBC専門サイトが、ボガーツが2026年WBCでのオランダ代表参加をコミットしたと報道。 ジョーンズ監督自身もインタビューで「ボガーツは出場を約束してくれた」と明言しています。
ショート/サードを守れる4度のオールスター選手が確定しているだけで、 次回大会でもオランダ内野陣の中心はボガーツになる可能性が高いと言えます。
セダンネ・ラファエラ(レッドソックス)
さらに2025年7月には、レッドソックスの中堅手セダンネ・ラファエラが正式にオランダ代表参加を表明。 World Baseball Networkやボストンの地元紙が、ジョーンズ監督との会談で本人が快諾したと伝えています。
ラファエラは2023年にMLBデビューし、2024〜25年はボストンの正中堅として出場。 2025年までの通算成績は.247、33本塁打、143打点で、 守備面でも2025年には中堅手としてゴールドグラブ&Fielding Bible賞を受賞するなど、 「メジャー屈指のセンター守備」と評価される存在です。
センターラインにボガーツ(内野)+ラファエラ(外野)が確定している時点で、 次回大会のオランダはすでに攻守ともに軸が2本立っているチームと見ることができます。
【勧誘中】アクーニャ級ではないが…十分“目玉級”のスター候補たち
ジョーンズ監督は、ボガーツに続く大物として、以下の選手たちを「勧誘中」と公言しています。
- オジー・アルビーズ(ブレーブス/二塁)
- ジュリクソン・プロファー(ユーティリティ)
- ケンリー・ヤンセン(クローザー)
- ディディ・グレゴリウス(内野)
- ジョナサン・スクープ(二塁)
アルビーズはオールスター常連の二塁手、ヤンセンは通算400セーブを超えるクローザー、 プロファーは外野・内野を守れるスイッチヒッターで、いずれも出場すれば一気に“優勝候補クラス”の厚みが出ます。
現時点(2025年12月)では正式な出場確約までは届いていないものの、 ジョーンズ監督が具体的な名前を出して「口説いている」と語っていることから、 本戦までに何人かはロースター入りする可能性が高いと見てよさそうです。
まとめ:日本から見ると“地味”だが、実績と戦力は完全に「強豪クラス」
- オランダ代表は、2009年にドミニカを2度撃破し、2013・2017年には2大会連続ベスト4入りした実績を持つ「隠れた強豪」。
- NPBファンにおなじみのバレンティン(60本塁打&17年WBC最強打者)や、ソフトバンクのエースだったバンデンハークなど、かつては日本球界と縁の深いスターが代表の柱だった。
- 2023年大会でもボガーツ、シモンズ、スクープ、ヤンセンらMLBクラスが揃い、プールAでは5チーム2勝2敗のカオスの一角を演じた。
- 次回大会に向けては、アンドリュー・ジョーンズ監督が就任し、 ボガーツ&ラファエラの出場が確定。アルビーズ、プロファー、ヤンセンらも勧誘中と報じられている。
- もしこれらのスターが揃えば、強打の内野+鉄壁センターライン+実績あるクローザーというバランスの良い布陣となり、 日本や米国、ドミニカから見ても優勝候補の一角に食い込むだけの戦力を秘めている。
表向きは“欧州代表”の一つに過ぎないオランダですが、 実態はカリブの野球大国・キュラソー&アルバのタレントを束ねた、非常にクセの強いチームです。 2009年のドミニカ戦のように、「気付いたら大物を倒している」のがこの国の怖さ。 次回WBCで日本代表が対戦する可能性も十分あるだけに、今のうちからロースター動向を追っておいて損はないと言えるでしょう。
参考文献・出典
- Baseball-Reference「Netherlands national baseball team – World Baseball Classic record」
- MLB.com「Netherlands upsets Dominicans twice in 2009」ほか2009年大会関連記事
- MLB.com / World Baseball Classic公式「Team Netherlands’ World Baseball Classic 2023 roster」
- Wladimir Balentien – Wikipedia / MLB.com「Yadier Molina, Eric Hosmer on All-Classic team」ほか2017年WBC関連
- Rick van den Hurk – Wikipedia / NPB公式選手成績 / WBSC「Global Game: Dutch MLB, KBO, NPB pitcher Rick van den Hurk retires」
- Adler, David.「The wild 5-team tiebreaker, explained.」MLB.com(2023年プールA解説)
- MLB.com / WBSC / ESPN「Andruw Jones to manage Netherlands at 2026 World Baseball Classic」
- Sports Illustrated, Foul Territory ほか「Xander Bogaerts commits to play for Team Netherlands in 2026 WBC」関連記事
- World Baseball Network / NESN / Wikipedia「Ceddanne Rafaela Commits to Kingdom of the Netherlands For 2026 WBC」および成績情報
- Sports Illustrated「Ozzie Albies, Ceddanne Rafaela Being Recruited For Intriguing WBC Roster」ほか、ジョーンズ監督の勧誘発言を扱った記事



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