ダウリ・モレッタは阪神で通用するのか? “逆スライダー”剛腕の直近成績から占う

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阪神タイガースが、今季パイレーツでプレーした右腕ダウリ・モレッタと来季の契約を正式発表しました。
契約は1年・年俸約100万ドル/背番号99。球団からは「中継ぎとして大事な場面での登板を期待」とコメントされ、新守護神候補の一人としても紹介されています。
一方で、MLB通算防御率は4.17と数字だけ見ると“超一流”ではありません。「スライダー投手」が多いセ・リーグ、しかも投高の甲子園で本当にフィットするのか——。
ここでは、モレッタの経歴と直近のスタッツ、球質の特徴、阪神とセ・リーグとの相性を整理していきます。


プロフィールとこれまでのキャリア

  • 名前:ダウリ・ミッチェル・モレッタ(Dauri Michell Moreta)
  • 生年月日:1996年4月15日(29歳)
  • 出身:ドミニカ共和国・エリアス・ピーニャ州コメンダドル
  • 身長/体重:約188cm/約102kg前後(6’2″・225lbクラスの体格)
  • 投打:右投右打
  • ポジション:リリーフ投手専業(MLB先発1試合のみ)
  • 経歴:レッズ傘下(2015〜2022)→ レッズ(2021〜22)→ パイレーツ(2023・2025)→ 阪神タイガース(2026〜)

2015年にアマチュアFAとしてレッズと契約。マイナーでは抑え・セットアッパーを務めながら、通算243登板・防御率3.29・326回で431奪三振・WHIP1.19という安定した成績を残しています。
2021年にレッズでMLBデビューすると、2022年は一時先発も経験しながら主に救援。オフにはケビン・ニューマンとのトレードでパイレーツへ移籍し、2023年にはブルペンの主力となりました。

特徴的なのは、マウンドを降りる際に見せる「マネー」ポーズ
両手の指をこすり合わせるジェスチャーから、「Big Bank」「Money Moreta」といったニックネームでも知られています。


MLB通算と直近のスタッツ

MLB通算成績

モレッタのMLB通算は以下の通りです。

  • 4シーズン通算:112試合(全てほぼリリーフ)
  • 成績:6勝5敗2セーブ、防御率4.17
  • 投球回:116回2/3
  • 奪三振:138(K/9=約10.6)
  • WHIP:1.15

「平均以上の奪三振能力を持つリリーフだが、防御率はやや高め」というのが、表面上のプロファイルです。

ブレイクした2023年:奪三振マシン化

阪神が最も重視しているであろうのが、2023年パイレーツ時代の成績です。

  • 登板:55試合
  • 成績:5勝2敗1セーブ・5ホールド
  • 投球回:58回
  • 防御率:3.72
  • FIP:2.9前後(2.93とされる記事が多数)
  • 奪三振:76(K/9=約11.8)
  • WHIP:1.09
  • 被打率:.187

表面の防御率こそ「3点台半ば」ですが、FIPや被打率、奪三振能力はかなりエリート寄り
実際に現地の分析記事でも、「パイレーツのブルペンで最も信頼できる1人」「奪三振マシン」といった評価が並びました。

2024年:トミー・ジョン手術で全休

2024年3月、右肘じん帯再建手術(いわゆるトミー・ジョン手術)を受け、そのシーズンは丸々離脱。
以降は2025年シーズン中盤に復帰する形となります。

2025年:復帰後の数字

手術明けとなった2025年の成績は、MLBとマイナーの両方を含めて以下のようなものです。

  • MLB(パイレーツ):18試合、1勝1敗、防御率3.24、16回2/3、19奪三振・7四球、WHIP1.38
  • AAA(インディアナポリス)リハビリ含む:31登板、防御率2.56、WHIP1.26、48奪三振
  • マイナー通算:243登板、防御率3.29、326回で431奪三振・WHIP1.19

復帰後も「1イニングで1つ以上三振が取れるペース」は維持しており、
Tommy John明けとしてはかなり順調な戻り方をしていたことが数字から伺えます。


代名詞は“逆方向スライダー”という魔球

スライダー偏重のピッチミックス

Statcastのデータでは、モレッタの球種構成はおおむね以下の通りです。

  • スライダー:投球の約55〜60%
  • フォーシーム(4シーム):約40%前後(平均95マイル程度)
  • チェンジアップなど:ごくわずか

つまり、「スライダーが主役で、フォーシームは見せ球兼カウント球」という、かなり割り切ったスタイルです。

“Wrong Way Slider”と42%前後の空振り率

モレッタが注目された最大の理由は、このスライダーの変化の方向と空振り性能にあります。

  • 右投げにもかかわらず、右打者の内側(投手側)に食い込むような「逆方向スライダー」として投げられる
  • アマチュア分析記事では、このスライダーの空振り率が40〜42%に達すると紹介
  • xwOBA(予測長打率込みの出塁指標)も.200前後と、かなり打ちづらい球

投球分析で知られる「Pitching Ninja」にも“Wrong Way Slider”として取り上げられ、
「通常のスライダーと逆方向に動く」「重力に逆らうような球筋」と評されたことでも話題になりました。

指標で見ると「三振は一級品・四球はギリ許容ライン」

Statcastの集計から見た、モレッタの投球内容はざっくり以下のようなイメージです。

  • 通算K%:約28〜29%(MLB平均22%前後を大きく上回る)
  • 通算BB%:約9〜10%(「悪くはないが多め」レベル)
  • xERA(予測防御率):2023年は3点前後と優秀、一方で2025年はやや高め

ざっくり言うと、「三振能力は文句なし、四球と被弾をどう抑えるかが課題」という典型的なパワーリリーフタイプです。


阪神がモレッタに期待する役割

1年100万ドル・背番号99で「新勝ちパ候補」

阪神は2025年12月19日に、モレッタとの来季契約締結を正式発表。
契約は1年・推定100万ドル(約1.5〜1.6億円)で、背番号は「99」。球団はコメントで、

  • 「メジャーでの経験もあり、中継ぎとしての経験は豊富」
  • 「主に中継ぎとして大事な場面で登板することを期待」

と、ハッキリ勝ちパターン要員として獲得したことを明かしています。
一部の報道では、「本命は岩崎だが、新守護神候補の一人」として名前が挙がっており、
起用イメージとしては7〜9回を担うクラスのリリーフと見て良さそうです。

“ブルペン強化”という阪神の補強テーマと合致

阪神はリーグ連覇・日本一奪還へ向けて、今オフは「ブルペン強化」が課題と報じられてきました。
同じく新外国人として、内野手のキャム・ディベイニー、先発左腕イーストン・ルーカスらも補強されており、
「守備力+先発陣」に加えてリリーフの厚みを増やすという方向性が見て取れます。

その中でモレッタは、“三振が取れる中継ぎ”というピースとしてはまる存在です。


スライダー投手はセ・リーグで活躍できるのか?

① 甲子園という投高球場との相性

パークファクターのデータを見ると、甲子園球場は

  • 本塁打PF:0.35 前後
  • 得点PF:0.84 前後

と、セ・リーグでも屈指の「投高・本塁打が出にくい球場」に位置付けられています。
外野が広く、浜風も相まって「フライがスタンドまで届きにくい」環境であることは、データ上も明らかです。

一方モレッタは、MLB通算で見れば被本塁打もゼロではないパワーリリーフですが、
Statcast上では平均をやや上回る空振りと、そこそこのゴロ・フライバランスを持っています。
フライが伸び切らない甲子園で投げる分には、本塁打リスクはかなり軽減されると考えてよいでしょう。

② セ・リーグ打者とスライダー環境

データ系の記事では、近年のセ・リーグの先発・リリーフ陣は

  • 直球+カットボール/スライダー+落ちる球(チェンジアップ・フォーク)
  • 直球を「見せ球」として使い、カットやスライダーで芯を外す

といった配球が主流になっていると指摘されています。
つまり、「スライダー自体」はセの打者にとって見慣れた球種です。

ただしモレッタの場合は、変化の方向が通常のスライダーと逆なのがポイント。
右打者の外へ逃げるスライダーではなく、内側(食い込んでくる方向)に曲がる球で空振りを奪うため、
「見慣れた球種だが、軌道は見慣れていない」という、やや反則気味の武器になります。

日本ハム伊藤大海ら、NPBでも「スライダーで三振を量産する投手」はいますが、
モレッタの球の動きはその中でもかなり特殊な部類に入り、初見殺し性能は相当高いと考えられます。

③ 課題は四球と「波」の大きさ

一方で、BB%が9〜10%前後と、高めの四球率であることは無視できません。
日本では「1点を守る展開」や「送りバント込みの僅差勝負」が多くなりがちで、
四球→バント→タイムリーというパターンが失点の定番になりやすい環境です。

また、2025年のStatcast指標を見ると、実際の防御率3.24に対して、
予測防御率(xERA)がやや高めに出ている点もあり、「いい時と悪い時の波があるタイプ」であることも示唆されています。

阪神としては、

  • シーズン序盤は7〜8回のセットアッパーとして起用し、状態とNPB球への適応を確認
  • 四球や被弾が抑えられ、スライダーのキレが安定していれば、クローザーも視野
  • 連投やビハインド時の登板管理を含めて、「無理をさせすぎない」運用で波をならす

といった使い方が現実的になりそうです。


総合評価:セ・リーグでも「三振は十分一級品」、制球と健康次第でトップリリーフに

  • MLBでは112登板・K/9約10.6・WHIP1.15と、数字以上に「三振の取れるリリーフ」として評価されてきた。
  • 2023年には3.72ERA・2.9台FIP・58回76奪三振・被打率.187と、指標面では優秀なシーズンを送っている。
  • 代名詞の“逆方向スライダー”は空振り率40%超とされ、打者側にほとんど前例のない軌道。
  • 2024年のトミー・ジョン手術を経て、2025年もMLBとAAA合計で高水準の奪三振能力を維持している。
  • 課題は9〜10%前後の四球率と、調子の波。NPBの1点ゲームではここをどこまで抑えられるかが鍵。

環境面では、本塁打が出にくい甲子園と、強固な内野守備を誇る阪神という土台が、
「三振+フライ+ときどき四球」というモレッタの投球スタイルとかなり噛み合っています。

健康面で大きな問題がなく、NPB球への適応と制球の微調整が進めば、
「K/9二桁・防御率2点台〜3点前半」クラスのセットアッパー〜準守護神を期待しても不思議ではありません。
逆に、四球が増えたりスライダーのキレが落ちるようだと、「良い時は無双だが悪い時は一気に崩れるタイプ」というリスクも抱えています。

いずれにせよ、セ・リーグでも“奪三振”という一点では間違いなく一級品候補
阪神の連覇を左右する、“魔球リリーフ”の日本初登板に注目していきたいところです。


参考文献・出典

  • MLB.com「Dauri Moreta Stats, Bio & Transactions」
  • MiLB.com「Dauri Moreta Minor League Stats」
  • Baseball Savant「Dauri Moreta Statcast Statistics / Pitch Arsenal」
  • Michigan Sports Analytics「Baseball’s Weirdest Pitch: Dauri Moreta’s Gravity-Defying Slider」
  • Federal Baseball「Five under the radar relievers the Washington Nationals should take a look at」
  • Sports Illustrated / MLB.com「Pittsburgh Pirates Reliever Makes Long-Awaited Return」ほかパイレーツ関連記事
  • NPB公式サイト「阪神タイガース 個人投手成績・チーム投手成績」
  • 日刊スポーツ「【阪神】新外国人モレッタは解明不能の“魔球”が武器」
  • スポニチアネックス「阪神 メジャー6勝の右腕ダウリ・モレッタと契約」「阪神 新守護神候補 ダウリ・モレッタ獲得!」
  • デイリースポーツ「阪神 新外国人のモレッタを獲得 球団発表」
  • 各種パークファクター・投球傾向分析記事(baseball-stats.jp、noteなど)

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