FAして「決まらない」と何が起きる?──2026年“辰己”ケースと、木村昇吾・藤井秀悟に学ぶ「宙ぶらりん」のリアル

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プロ野球のオフシーズン名物になったFA(フリーエージェント)。
一方で毎年必ず出てくるのが、「FA宣言したのに去就が全然決まらない」ケースだ。
SNSでは“何をやってるんだ”と騒がれがちだが、制度と編成の都合をデータでほどくと、実は「決まらないほうが自然」な条件が揃っていることも多い。

この記事では、まず結論として「FAして決まらない場合はどうなるのか」を制度面から整理し、
そのうえで 2026年1月時点で去就未決着の楽天・辰己涼介 を“現在進行形のケース”として俯瞰する。
さらに、過去の代表例として 木村昇吾(2015年FA→テスト入団)藤井秀悟(2009年FA→“実質クビ”から契約) を振り返り、
「FAの宙ぶらりん」が起きる構造をデータ中心にまとめる。


  1. 結論:FAして決まらない場合、選手はどうなる?
    1. ポイントは3つだけ
    2. “決まらない”が危険になるのは、主にここ
  2. なぜFAは「決まらない」のか? 編成と数字で見る3要因
    1. 要因①:補償コストが“実力”ではなく“制度”で跳ねる
    2. 要因②:同ポジションが詰まっていると、成績が良くても動けない
    3. 要因③:直近シーズンの“下振れ”があると、価格と年数で揉めやすい
  3. ケース①:2026年の辰己涼介──「守備の看板」と「打撃の揺れ」で市場が割れる
    1. まず事実:2026年1月10日時点で去就は未決着
    2. 辰己涼介の近年打撃成績(2024→2025で何が変わった?)
    3. それでも辰己が「欲しい球団」が出ておかしくない理由(守備の価値)
    4. 「決まらない」こと自体が示すもの:市場の論点はここ
  4. ケース②:木村昇吾(2015年)──“宣言残留不可”がFAリスクを最大化した
    1. 木村昇吾は「FAしたら戻れない」条件で市場に出た
    2. 木村昇吾のFA前年(2015年)スタッツ
    3. 「テスト入団」という結末が示す、FA市場の冷酷さ
  5. ケース③:藤井秀悟(2009年)──“FA宣言=強気”とは限らない
    1. 2009年の藤井秀悟は、FA前年に数字を残している
    2. 「決まらない」の正体:市場評価と“事情”がズレると、宙に浮く
  6. まとめ:FAが決まらないのは「制度の欠陥」ではなく「編成の計算結果」

結論:FAして決まらない場合、選手はどうなる?

ポイントは3つだけ

  • FA宣言=その瞬間に自動でどこかへ移籍できる制度ではない(契約できなければ“無所属に近い状態”が続く)
  • 交渉が長引いても制度的に「強制終了」されるとは限らない(ただし現実にはキャンプや補償手続きの都合で“タイムリミット圧”が強い)
  • 最後は「残留」「移籍」「独立/海外」「引退」のどれかに落ち着く

“決まらない”が危険になるのは、主にここ

  • 宣言残留を球団が認めないケース:獲得が無ければ“戻れない”ため、リスクが跳ね上がる
  • 人的補償が絡むランク:獲得側も放出側も、編成が固まらない時間が伸びるほど動きづらくなる
  • キャンプ直前まで未契約:新チーム合流が遅れ、調整・役割決定・守備連携など「時間が価値」になる

なぜFAは「決まらない」のか? 編成と数字で見る3要因

要因①:補償コストが“実力”ではなく“制度”で跳ねる

FAは「選手の年俸レンジ(A/B/Cなど)」で補償の重さが変わる。
ここで重要なのは、成績に対して補償が重いと、獲得側の期待値計算が一気に厳しくなること。
特にB帯は「金銭+人的」「金銭のみ」などの選択が絡みやすく、チームは“守る28人”という編成パズルまで背負う。

要因②:同ポジションが詰まっていると、成績が良くても動けない

外野・一塁・中継ぎなどは、各球団にすでに“役割が埋まっている”ことが多い。
FA市場は「選手の強さ」だけでなく、受け皿の空き(ロースターと起用計画)で決まる。

要因③:直近シーズンの“下振れ”があると、価格と年数で揉めやすい

特に野手は、打率・長打率・出塁率などが1年でブレる。
球団は「ピーク(良い年)」ではなく、複数年の平均値+加齢曲線+守備走塁の持続性で値付けする。
ここで “選手側の希望(年数・金額・起用)” と合わないと、交渉は長期化しやすい。


ケース①:2026年の辰己涼介──「守備の看板」と「打撃の揺れ」で市場が割れる

まず事実:2026年1月10日時点で去就は未決着

報道ベースでは、辰己涼介(楽天)が国内FAを行使したものの、2026年1月10日時点で「決まったことがない」とコメントしている。
これは“珍しい=異常”というより、補償や編成の都合で起こりうる「FAの遅延」そのものだ。

辰己涼介の近年打撃成績(2024→2025で何が変わった?)

試合打率本塁打打点盗塁出塁率長打率OPS
2024(楽天)143.29475820.353.419.772
2025(楽天)114.24073220.325.341.666

表だけで見えるのはシンプル。
2024は高水準(OPS .772)、2025は落ちた(OPS .666)
本塁打と盗塁が同数でも、出塁と長打が落ちると「総合の得点期待」が下がる。
この“直近の落差”が、FA市場の値付けを難しくする典型だ。

それでも辰己が「欲しい球団」が出ておかしくない理由(守備の価値)

辰己は外野守備で評価が高く、ゴールデン・グラブ賞の受賞歴が積み上がっている。
野手FAの評価は打撃に引っ張られがちだが、センターラインの守備は「毎日失点を減らす」資産でもある。
特に投手力を“守備で支える”設計の球団なら、打撃の下振れがあっても獲得を検討しうる。

「決まらない」こと自体が示すもの:市場の論点はここ

  • 補償込みの総額に対して、2024水準をどれだけ再現できるか
  • 外野の枠が空いているか(レギュラー確約が必要かどうか)
  • 複数年契約を結ぶなら、30歳以降の守備走塁の落ち方をどう見るか

つまり、辰己の去就が長引くのは「人気がない」だけでは説明できない。
強み(守備)と直近の揺れ(打撃)を、各球団がどう価格に落とすかで割れている可能性が高い。


ケース②:木村昇吾(2015年)──“宣言残留不可”がFAリスクを最大化した

木村昇吾は「FAしたら戻れない」条件で市場に出た

2015年オフ、広島の木村昇吾はFA権を行使。
当時の報道では、球団が「宣言残留を認めない」方針で、行使した時点で退団が既定路線になった。
ここが辰己ケースとの最大の違いだ。
「最悪、古巣に戻る」が無いと、交渉が不成立になった瞬間に“無所属リスク”が現実になる。

木村昇吾のFA前年(2015年)スタッツ

試合打率本塁打出塁率長打率
2015(広島)72.2690.297.355

数字だけを見ると、レギュラー級の打撃で市場を動かすタイプではない。
一方で内野全般を守れる“便利屋”はベンチに必要だが、FAで獲るほどの優先度になりにくい。
このギャップが、木村のFAを難しくした。

「テスト入団」という結末が示す、FA市場の冷酷さ

結果的に木村は“入団テスト”という異例のルートに進む。
これは本人の実力云々より、球団側が「枠」と「コスト」を最後まで確定できなかったことの裏返しでもある。
FAは「選手の権利」だが、同時に「球団の編成競争」の場でもあり、情よりもロースターが勝つ


ケース③:藤井秀悟(2009年)──“FA宣言=強気”とは限らない

2009年の藤井秀悟は、FA前年に数字を残している

所属登板勝敗投球回防御率被安打与四球奪三振
2009日本ハム227-5114.23.531204863

“数字だけ”なら、翌年も普通に回れそうに見える。
だが藤井のケースが面白いのは、FA宣言が必ずしも「強気の移籍チャレンジ」ではない点だ。

「決まらない」の正体:市場評価と“事情”がズレると、宙に浮く

藤井本人の証言や後年の報道では、当時は不安が大きく、交渉が進まなければ引退の可能性もあったとされる。
結果として移籍先が決まるまで時間がかかったのは、成績(見える情報)と、球団の評価(見えない情報)が噛み合わない典型例だ。

FA市場は「直近の数字」だけで動くわけではない。
起用法、コンディション、年俸感、編成の優先順位……すべてが合致して初めて契約が落ちる。
この条件が1つでも欠けると、成績が立派でも“決まらない”は普通に起きる。


まとめ:FAが決まらないのは「制度の欠陥」ではなく「編成の計算結果」

  • FA宣言しても、契約がまとまるまで所属は確定しない(=“決まらない期間”は起こりうる)
  • 宣言残留の可否でリスクは激変する(木村昇吾のように“戻れない”と危険度MAX)
  • 人的補償・枠・年数が絡むと、選手の能力だけでは決まらない(辰己ケースはまさにここ)
  • 成績が良くても宙に浮く(藤井秀悟型。数字と評価がズレると時間が伸びる)

2026年の辰己涼介は、守備という強い武器がある一方で、直近の打撃が下振れた。
ここに補償・枠・契約年数の条件が乗ると、市場が割れて「決まらない」は起こりうる。
むしろこの状況こそ、FAが“選手の実力テスト”ではなく、球団の編成数学であることを見せている。


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